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医療崩壊「たらい回し」 [医療制度/行政]

河北新報 4病院たらい回し 事故で救急搬送の女性死亡 福島

 福島市仁井田の県道で11日に無職女性(79)が乗用車にはねられた事故で、女性を収容した救急車が福島市内の四病院で8回にわたり救急搬送の受け入れを拒否されていたことが14日、分かった。同市内では通常、15分程度で搬送できるが、今回はほぼ1時間を要し、女性は事故から約6時間後に死亡した。

 福島市消防本部によると、通報を受けた福島消防署の救急車は、事故発生から約7分後の午後8時23分に現場に到着した。全身を打って意識もうろうの状態の女性を見た救急隊員は、設備が整っている病院への搬送が必要と判断。同8時半、福島県立医大病院に受け入れを要請したが、11ある救急患者用のベッドがふさがっていると断られた。

 その後、大原医療センター、福島赤十字病院、あづま脳神経外科病院にも順次、要請。計8回受け入れを求めたが、いずれも「空きベッドがない」「医師が手を離せない」「受け入れても十分な治療ができない」などの理由で拒否された。

 救急車はこの間、病院間を移動。ようやく午後9時25分、市内の福島第一病院に女性を搬送した。市消防本部は「スムーズに搬送できていれば女性が助かったかどうかは分からない」と話している。

 県立医大病院は来年1月、救急救命センターを開設し、救急患者の受け入れ体制を拡充する予定。同病院は「同じ悲劇が二度と起こらないようにしたい」と話している。

もう何度も同じようなニュース記事を取り上げ、何度も同じような記事を書いて来たような気がします。
しかし、新聞の論調が変わらない限り、私も沈黙せずにいたいと考えています。

河北新報も医療バッシング派新聞でしょうか。こうした記事に「たらい回し」という表現を用いるのは、医療機関に対する非難がこめられていると思います。

これこそ医療崩壊の現れの一つの事件であり、医療機関を攻撃して済む問題ではありません。
脳神経外科は休日夜間の救急にも対応し、緊急手術で少しでも患者の中枢神経機能保護を図って手術をしたり、さらに全身管理を行います。重症の場合は暫くの間人工呼吸器による呼吸管理が必要になることも多くあります。

同科医はこのためにかなり献身的な努力を行い、長時間の超過勤務をこなし、ICUで患者管理に身を削っています。しかし経過の良くなかった患者の家族が容赦なく彼らを訴えます。救急受診から手術に到るまで、全てがベストコースでなかったら、それは「過失」である。賠償金を払え。
裁判所も「『過失』」がなければ『治癒』」または『生存』できた相当程度の蓋然性がある」などと認めて、原告勝訴の判決を出してしまいます。

これが現場の脳外科医を立ち去らせ、また研修医の脳外科志望を減らして、新聞の言う「たらい回し」事態となっているのです。
今のところ「たらい回し」のかどで病院を訴える動きはありませんが、もし万が一そんな訴訟が始まったら、全ての医療崩壊は最終段階を迎えます。もはや国民が頭部外傷を被っても、脳出血・脳梗塞に罹患しても、受診できる医療機関は一軒もなくなるでしょう。

これ以上自らの頸を絞める行為はやめて欲しいと願っています。


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majubijou

おはようございます!

どこかの番組でも言ってました
医師が足りないので、
内科での受診を午前か午後だけに
したと
そういう事も増えている世の中なので、
メディア風のたらいまわしはこれからも
消えないでしょうね
もっと医師も病院も患者も
仕事がしやすい、受診しやすい
世の中になるといいですけどね。
by majubijou (2008-02-07 06:52) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

医師不足の原因は、小松秀樹氏の言う「立ち去り型サボタージュ」による連鎖悪循環ですね。給与等の待遇はともかく、患者のためにリスクの伴う医療を施す、しかし思うような結果にならないと、結果責任主義をかざして訴えられる。
もうやっていられるか、と医師は病院を去る訳です。

どうやったら良好な医師・患者関係が構築できるかが課題ですね。うまく行った場合は良いけれど、そうでない時もその関係を維持できるよう努力することが大切なのだと思います。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2008-02-07 20:59) 

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