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どうせ最終責任は医師にある [診療]

東京新聞 吸入ステロイド薬 ぜんそくに効果

清水宏保.jpg ぜんそくは気道が狭くなり、息苦しくなる慢性の病気。ひどいせきなどの発作が突然出て社会生活に支障をきたす場合もある。しかし最近、発作を抑える吸入ステロイド薬が徐々に普及、発作の不安から解放される人が多くなっている。この薬でぜんそくを制御し、長野冬季五輪男子スピードスケート五百メートルで金メダルを獲得した清水宏保選手(34)が七月に名古屋市で講演した際に話を聞き、薬の普及の現状を考えた。 (佐橋大)

 清水選手は幼稚園のころ、ぜんそくと診断された。発作でたびたび入院。せきで眠れない夜が続き、スケートもできないほどに。しかし学生時代、医師の紹介で吸入ステロイド薬と出会った。症状が出にくくなり、オリンピックの金メダリストになった。

アドエア.jpg 朝晩に粉状の薬を吸い込むだけ。「一年前から吸入ステロイド薬に長時間気管支を広げる薬が配合された薬を使っている。今の薬を使ってからは、発作や息苦しさといった日常の症状もほとんどない」と話す。

 以前は、発作が起きた時点で気道を広げ、症状を鎮める薬がぜんそく治療の中心だった。しかし最近では、ぜんそく患者には慢性的な気道の炎症があり、炎症を抑えれば発作が出にくくなることが解明された。炎症の抑制に効果のある吸入ステロイド薬が治療の中心になっている。

 日本アレルギー学会が作った診療ガイドラインでは、呼吸がヒューヒュー、ゼーゼーするなどの症状が週一回以上出る人の基本治療薬に、吸入ステロイド薬が位置付けられている。

 しかし、この治療法は十分に普及していない。呼吸器アレルギーの専門医グループが二〇〇五年に全国のぜんそく患者に電話でした調査では、吸入ステロイド薬を使っていたのは大人で18%、子どもでは8%にすぎなかった。普及を妨げている理由について、多くの専門家は「全身性の副作用はほとんどないのに、誤解がある」と指摘する。

榊原博樹.jpg 一方、藤田保健衛生大の榊原博樹教授(呼吸器内科・アレルギー科)は「適切な薬物治療に加え、ダニ、ほこりなど、ぜんそくを引き起こす要因を見つけて避けることが大切」とも指摘。薬で消えなかった発作が、原因を見つけて対応した結果、出なくなったケースもある。

 「ぜんそくはコントロールできる病気。『ぜんそくだから』と、やりたいことをあきらめないで」。清水選手はそう呼び掛ける。


フルタイド.jpgこの薬剤のメーカーはよく医療機関を訪問し、この製品を紹介しているので、多くの医師はこのニュース記事を読んだだけで製品名がすぐ浮かぶと思います。

ニュース記事通り、これらの薬剤のおかげで喘息重責発作も減り、喘息死や発作による入院がかなり減っているものと思われます。

しかし安易にこうした記事を、処方する医師側でなく一般読者向けに書いて欲しくないと思います。
このニュース記事にすっぽり抜け落ちているのが副作用です。「全身性の副作用はほとんどない‥」と簡単に触れられていますが、やはり抵抗力が落ちている人が気管支などに感染がある場合、それを重篤にする危険もあります。
また、一部の地域で実施されている喉頭がん検診で、ステロイド吸入薬を使っている人の喉頭にカビが生えているのが発見されることもあります。

もちろんメーカーから医師むけの能書(薬の説明書)には事細かくこうした副作用が記載されています。メーカーから医師への情報提供にはぬかりはない、という訳です。一方患者さんは不測の副作用が発生した場合、インフォームド・コンセントがなされていない、と医師を訴えることができます。
要するに何か問題が発生した時、当然患者さんは悪くない、メーカーは考え得る副作用は医師に伝達してある、ということになります。悪いのはちゃんと説明をしなかった医師だ、そういうことになります。

これらのことを考えて医師一人ひとりが、この薬剤(他の薬剤もですが)の処方を考えます。これを医師の裁量範囲と言います。
これを無視して一方的にこの薬剤について、処方しない方がおかしい、と言わんばかりの記事を一般紙面に載せるのには疑問を持たざるを得ません。まして、もしこの薬剤のメーカーが新聞社に持ちかけたものだったりしたら、その商業主義優先の姿勢は許せません。

一面的な見方のニュース記事を書かないで頂きたいと思います。
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コメント 2

Quri

こんにちは。毎日のように現れてスミマセン。
 この点に関してはおそらくほとんどの医師が感じているのではないでしょうか。医療に関する報道は一般人々の啓蒙に資する場合もあり、時には専門家に対しても情報源になる事すらあります。しかし現状ではこれらのメリットより無責任、無知、結果に無配慮な報道での害がずっと大きいように思います。ほんの少しTVで流れただけで次の日には同じ説明が何度も必要になります。TVでは一部をニュースにしてもフォローする方はその疾患の全体像から説明しなければならないので大変です。“A drowning man will catch at a straw”といいますが、軽い下調べでトピックス的に報じているつもりでも、その疾病に悩む方には全てが福音に聞こえることをお忘れなく、と言いたいですね。また逆に“Suspicion begets idle fears”を呼ぶ報道で困るケースもあり、いずれにしても配慮のある報道が切望されます。


by Quri (2008-12-04 17:37) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

フルタイドもさることながら、最近は「ジェネリックを下さい」が増えています。厚労省に洗脳された人が増えて来ているようです。

私は外来でいつも、信用できる会社の後発品はもう使っているよ、という話と、大腸ファイバーで腸壁に貼り付いた後発品錠剤の話をして患者さんに理解してもらうようにしています。

いずれにせよ現場の医療者の頭越しのCMや記事は勘弁して欲しいものだと思います。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2008-12-04 20:13) 

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