SSブログ

CT画像に殺意は写るか [診療]

毎日新聞 <裁判員制度>傷の状況、CT画像で示す…殺人未遂事件公判

腹部CT.jpg 同居男性を包丁で刺して大けがをさせたとして、殺人未遂罪に問われた女の初公判が16日、東京地裁であり、検察側は傷の状況を撮影したコンピューター断層撮影(CT)による立体画像をスクリーンで示した。来年5月に始まる裁判員制度を見据え、被告の殺意を効果的に立証するのが狙い。

 女は東京都北区、風俗店従業員、中村あゆみ被告(23)。起訴状によると、今年6月、マンション自室で同居の男性(19)を刺し、全治約70日間のけがをさせた。中村被告はこの日の公判で殺意を否認した。

 検察側は「うつぶせで寝ていた男性を突然刺しており、殺意はあった」と指摘。さらに傷の状況をCTで撮影した立体画像をプロジェクターで映し、約13.6センチと深い傷で、腎臓に達していることを示した。

 東京地検によると、殺人未遂事件は殺人事件と異なり、被害者の解剖が行えないため、これまで傷の深さを正確に測ることができなかった。同地検幹部は「CTの活用は殺意の立証に効果的ととらえており、今後も活用していく」としている。【伊藤一郎】


東京地裁.JPG個人的にはまた大きな疑問符が灯っています。
そもそも被告人(加害者)しかわからない殺意の有無を、少しでも量刑を重くしようとする検察と、少しでも軽くしようとする弁護側で争うのが法廷の場ということになります。
真実は被告人の心の中にのみあります。場合によっては咄嗟の犯行で、本人自身も被害者を殺したかったのか、傷つけても殺す意志まではなかったのか、振り返ってもわからない、ということもあるかも知れません。

こうした殺意の存否を決めるのに、先端医療機器(でもないですが)のCTが大活躍、というナゾの記事です。包丁の刺入長が13.6cmだと殺人未遂で、もし9.8cmだったら傷害ということになるのでしょうか。CTを持ち出したところで、わかることは包丁の刺入長だけです。

包丁の先端が腎臓に届いたかどうか、犯行に及んでいる加害者が解剖学に精通した医師でもあれば、どのように刺すと致死的な外傷を与えられるかなどと考えるかも知れません。一方医療関係者でもない限り、包丁の先がどんな臓器を傷つけるかなど、想像もつかないことです。結果的にCT像で、それが腎臓に達して、例えば腎摘出の憂き目にあった、などということだと、それが殺害の意志の証明になるというのならおかしな話です。

何やら裁判員の前にこうした画像を示して、少しでも検察側有利に裁判を運ぼうというのなら、やめて頂きたいと思います。そこにいる裁判員の思考回路が多少簡素であると、そうかそうか、殺人未遂だ、厳罰だ、などということになってしまいそうです。そしてそれを検察が期待しているとしたら、被告人に不利に過ぎるし、考えようによっては裁判員に大変失礼な話です。

しかしいずれにしても、そもそも本当は誰にもわからない殺意の有無などを決めるのに、裁判員を入れたところで仕方のないことと思います。単に検察が有罪や厳罰を勝ち取るための手段と考えているとしか思えません。

私は裁判員制度、そして被害者参加制度そのものに反対です。
nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 2

kame

私も裁判員制度に反対です。法律のプロでも論理的な判断力を有しているか疑わしいのに、素人が何人集まっても駄目に決まってます。もちろん、 「CTの活用は殺意の立証に効果的ととらえて」いるような地検幹部のお世話にもなりたくありません。

そもそも、判決というのは、確実な証拠に基づいて論理的に考えた結果、その判決しかありえないという事例以外は、推定無罪とならなければならないと思います。そこに被害者感情が入り込む余地はありません。
by kame (2009-01-30 17:01) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

ご指摘のように、論理的に判断すべき問題が、感情論やいい加減な論法による「証明」で検察の都合のよいように進められてしまう危険があり、さらにそれを促進するのが素人集団の裁判員と思います。

被害者感情を判決に取り込ませようとする風潮、検察に私も絶対反対を唱えています。

心強いコメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-01-30 17:13) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。