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こわい毒キノコと医師攻撃 [診療]

毎日新聞 久慈病院訴訟:毒キノコ中毒死 「医師に過失なし」 遺族の請求棄却--判決 /岩手

岩手県立久慈病院.jpg 05年10月に毒キノコを食べて中毒死した洋野町の女性(当時67歳)の夫(72)ら遺族4人が「医師が適切な治療を怠ったのが死亡原因」として、県立久慈病院を管理する県に慰謝料など約4630万円の賠償を求めた訴訟の判決で、盛岡地裁は28日、遺族の請求を棄却した。田中寿生裁判長は「原告の主張に理由はなく、医師の診断や治療に過失はない」とした。  判決によると、女性は採取したドクツルタケをツルタケと思って食事。その後嘔吐(おうと)などをしたため同病院で受診したが、容体が悪化して転院先の病院で死亡した。田中裁判長は、医師は初診で食あたりと診断したが、カルテにドクツルタケの摂取を疑う記述をしており、措置に不自然な点はない▽ドクツルタケの写真を見せて否定されたことなどから、確実に毒キノコを食べたと認識できず、それを前提に過失があるとはいえない--などとし、医師らに過失はないと判断した。【山中章子】


盛岡地裁.jpg色々な意味で怖い事件です。
まず毒キノコ。医学部で毒キノコについて詳しく教わっているとは限りません。おそらく卒後勤務した病院で、その地域によって、こうした中毒患者を診ながら指導医から聞いて学んで行くものだと思われます。少なくとも私はこうした毒キノコについて個別の性質や治療法などを見ていません。

ドクツルタケについて。有毒成分であるアマニチンは細胞毒で、特に肝臓・腎臓を強力に傷害するとされているようです。一本新鮮なドクツルタケを食べただけで致死量に達するとされます。
治療は催吐・胃洗浄、活性炭投与、胆汁吸引除去、強制利尿、そして全身管理とあります。

仮にドクツルタケを食べたと考えて最大限の治療をしたところで救命できたとは限りません。
遺族が家族を亡くした悲しみはわかりますが、なぜ医師を訴えようなどと考えるのでしょうか。誤って毒キノコを食してしまったことが死因であり、診療を行った医師を責めてどうしようというのでしょう。

ドクツルタケ.jpgツルタケ.jpgそしてこわいのが判決理由にもある、医師側の対応です。もしドクツルタケを食べたことを疑う記載をカルテにしていなかったら‥。そして患者本人がそれを否定していなかったら‥。いずれの場合でも医師は有責とされ、患者を救命できなかった責任を問われてしまうのでしょうか。

久慈地域だけなのか、それとも一般論として、毒キノコ中毒を常に疑って患者に問診しないと医師は有責だとしたら大変です。アマニタトキシン群と言われる、タマゴテングタケ、ドクツルタケ、シロタマゴテングタケなどの写真を常に診察机の引き出しに入れておいて、どれか食べやしなかったかね、と問診しないといけないということになってしまうでしょうか。

患者がもし食べたかも知れない、と話したら、早速ICUに収容し、上記のような治療を開始しなければならないことになります。受診した病院がそれだけの設備のあるところであればまだしも、もし初診医が街のクリニックだったりしたら、搬送でまた困難を極める事態も予想されます。

食用キノコ・毒キノコを自信を持って鑑別できる人以外は、食べるべきではありません。そして不幸な事態になったからと言って医療者に責任を押しつけるのは勘弁して頂きたいと思います。

ちなみに写真左がツルタケ、右がドクツルタケだそうです。
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コメント 2

医師求人

正直難しい問題ですよね。
by 医師求人 (2009-03-18 21:06) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

もし私がこの病院に勤めていたら、と思うとぞっとしてしまいます。不幸な転帰を辿った患者さんも不幸ですが、殆ど巻き添えのように遺族から訴えられて、民事有責や業過致死罪容疑で刑事訴追されたら、と思うと暗くなります。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-03-18 23:52) 

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