中心静脈カテーテルと「過誤」 [医療事故]
読売新聞 カテーテル手術で大量出血死、琉球大病院で医療過誤か
琉球大医学部付属病院(沖縄県西原町)は18日、60歳代の女性患者が血管内にカテーテル(細い管)を挿入する手術後、体内に大量出血して死亡した、と発表した。
手術で血管を傷付けるミスがあった可能性もあり、病院は調査委員会を設置して死因を調べている。
須加原(すがはら)一博院長らの説明によると、女性は1月下旬、慢性腎不全で入院。人工透析をするため、血液の出し入れ口となるカテーテルを首の静脈に挿入して固定する手術を受けた。翌日、透析を行ったところ、女性は胸部に大量出血し、その翌日に死亡したという。
病院は、女性の病理解剖を進めており、県警などに報告した。
また医療“過誤”報道です。まずは“ミス”を疑うようです。
何か医療において不幸な結果が発生した時に、まず何をおいても医療者の「ミス」「過誤」を考え、犯人捜しを開始するというこうした記事は、医療崩壊が現実のものとなっている今、もう書かれることがなくなっているように思っていました。ここまで医療者に悪意を持って書かれた記事タイトルには不快感を覚えます。
色々な目的で中心静脈カテーテルが留置されます。今回はこのカテを使用して透析が開始されたあと出血してしまったということです。
留置カテーテルの先端が血管壁を貫いて血管外に出てしまっていたとすれば、留置の時に既に胸腔内出血を来していた可能性が高いと思います。
もともとカテーテルの先に眼がついている訳でもなく、静脈穿刺後は血管に沿ってカテーテルの先端を送っていくしかありません。カテーテルが血管壁を傷つけた結果を全て医療“過誤”として医療者の責任を問うのであれば、現在日常診療で広く行われている中心静脈カテ挿入行為は出来なくなってしまいます。
こうしたことを何も考えず、病理解剖の結果も発表される前から医療“過誤”と決めつけるような記事を書いて欲しくありません。
琉球大医学部付属病院(沖縄県西原町)は18日、60歳代の女性患者が血管内にカテーテル(細い管)を挿入する手術後、体内に大量出血して死亡した、と発表した。
手術で血管を傷付けるミスがあった可能性もあり、病院は調査委員会を設置して死因を調べている。
須加原(すがはら)一博院長らの説明によると、女性は1月下旬、慢性腎不全で入院。人工透析をするため、血液の出し入れ口となるカテーテルを首の静脈に挿入して固定する手術を受けた。翌日、透析を行ったところ、女性は胸部に大量出血し、その翌日に死亡したという。
病院は、女性の病理解剖を進めており、県警などに報告した。
また医療“過誤”報道です。まずは“ミス”を疑うようです。
何か医療において不幸な結果が発生した時に、まず何をおいても医療者の「ミス」「過誤」を考え、犯人捜しを開始するというこうした記事は、医療崩壊が現実のものとなっている今、もう書かれることがなくなっているように思っていました。ここまで医療者に悪意を持って書かれた記事タイトルには不快感を覚えます。
色々な目的で中心静脈カテーテルが留置されます。今回はこのカテを使用して透析が開始されたあと出血してしまったということです。
留置カテーテルの先端が血管壁を貫いて血管外に出てしまっていたとすれば、留置の時に既に胸腔内出血を来していた可能性が高いと思います。
もともとカテーテルの先に眼がついている訳でもなく、静脈穿刺後は血管に沿ってカテーテルの先端を送っていくしかありません。カテーテルが血管壁を傷つけた結果を全て医療“過誤”として医療者の責任を問うのであれば、現在日常診療で広く行われている中心静脈カテ挿入行為は出来なくなってしまいます。
こうしたことを何も考えず、病理解剖の結果も発表される前から医療“過誤”と決めつけるような記事を書いて欲しくありません。
頸から中心静脈へのカテーテルの挿入は長い針を用いて胸部方向に穿刺すると動脈を刺すことがあり、全身麻酔後に中心静脈カテを留置するときに麻酔科の先生が良く動脈を刺して胸腔内に血腫を作っているのが術中見つかったりすることが昔大学にいた頃、30年近く前、良くありました。基本的な技術は今も変わりないはずなので、胸部の手術を前提としない場合に頸から胸部方向へ穿刺するのは非常に危険です。もしやるなら一方の手で経動脈を触れながらそのやや外側を真下(背部方向)に穿刺すべきです。当院でも鎖骨下穿刺、頸部よりの穿刺とも怖がって誰もやらなくなり全て僕のところにやってくれという状態です。
by 私立病院外科医 (2009-05-28 17:44)
ご訪問ありがとうございます。
私は病院を離れて久しいのですが、病院では怖い者知らず?でよく鎖骨下静脈を穿刺していました。頸部はあまりやったことがありません。
循環器的適応で穿刺したのではなく、全身皮静脈がもう使えず、それでも血管確保が必要な症例にもよくやっていました。
先生のお話やニュース記事を読むと、今からだったら怖いですね。
記事の事案では、医療「過誤」(=ミス)があったとお考えでしょうか、それともある一定確率で起きてしまう「事故」とお考えでしょうか。よろしかったら教えて下さい。
コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-05-28 18:52)
動脈を穿刺してしまうことや、肺を刺してしまうことは時々ありますが、動脈を刺したときは圧迫止血(5分以上)、肺を刺してしまい気胸になったときは必要なら胸腔ドレナージを行っています。どちらの場合も経時的にCT,XPを撮るようにしています。刺してしまったことがミスなのではなく(刺してしまうことはある一定の確率で起こる合併症なので)その後の対処が問題なのだと思います。
ただ、穿刺はちょっと前に腹腔穿刺でWeb上で話題になったように確実に巧く行くという方法はなく、うまくいかなかった時には行為と結果の因果関係がわかりやすく、(胸腔穿刺でなくなり新聞で叩かれた症例もありました。)これからはどんどん廃れていくと思います。「僕はやりません、やったことも無く自信ありません、」と言ってしまえばよいのですから、
by 私立病院外科医 (2009-05-29 18:15)
再度のご訪問ありがとうございます。
そうすると、穿刺自体による合併症は事故であっても過誤とは言えないですよね。ご紹介頂いたような後のfollowの処置をしっかり行えば、過誤ではないと考えたいと思います。
「僕はやりません」というのが良いのか、今度はそれを「適切な処置をすべきところを怠った」と糾弾されてはかないませんが‥。
コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-05-29 20:31)