海難審判と刑事裁判 [医療事故]
毎日新聞 あたご事故 交代前の当直も責任 月内にも2士官在宅起訴
海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で適切な見張りをせず漁船の2人を死亡させたとして、横浜地検は2日までに、衝突時の当直士官、長岩友久・前水雷長(35)と交代前の当直士官、後潟桂太郎・前航海長(36)の両3佐を業務上過失致死罪などで在宅起訴する方針を固めた模様だ。海難審判は後潟3佐の行為を「事故原因とならない」と結論付けたが、地検は刑事責任を問えると判断したとみられる。月内にも起訴する。
後潟3佐の交代後に衝突しており、事故時に操船していない乗組員の起訴は極めて異例だ。地検は、見張り不十分など2人のミスが重なり、事故を招いたと判断し、両船の航法については、横浜地方海難審判所裁決(1月、確定)と同様、漁船を右に見るあたご側が回避義務を負う「横切り船航法」で、あたご側に事故の主因を認めたとみられる。
第3管区海上保安本部(横浜市)の調べなどによると、両船は昨年2月19日午前4時7分ごろに衝突。後潟3佐は直前の午前3時50~55分ごろ、長岩3佐に当直を引き継いだ。この際、清徳丸と僚船の動静監視が不十分だったため、航行中の漁船群を「操業中」と誤解し「衝突の危険なし」と伝えた。海難審判でも「早計だった」とミスを認めていた。
引き継いだ長岩3佐も見張り不十分なまま、寸前まで自動操舵(そうだ)で直進を続け衝突。沈没した清徳丸の吉清(きちせい)治夫船長(当時58歳)と長男哲大(てつひろ)さん(同23歳)が亡くなった。
両3佐は昨年6月、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで地検へ書類送検された。裁決は「長岩3佐が見張りを十分にしていれば、避航動作を取る余裕があった」として、個人では長岩3佐の行為だけを事故原因と指摘。後潟3佐の引き継ぎなどは原因と認定しなかったが、地検は裁決後も関係者への聴取を重ねていた。
海難審判の位置づけについてあまりはっきり知りませんでした。これらの記事や解説などからすると、刑事処分を決定するのが裁判であり、海難審判は最終敵に行政処分を下すことを目的とするようです。
しかし、海難審判は、海上の事故を詳細に検討し、事故の原因を明らかにして、結果事故再発防止に資することのできる、事故調としての意味合いもあるようです。
行政処分という見方からすると、当事者の言い分にあまり耳も貸さず、一方的に運転免許取消しや停止処分を決定し押しつける、自動車運転免許における警察よりも、開かれたシステムと言えるでしょう。この点では自動車事故や違反などについて、海難審判を見習ったもっと開かれたシステムを期待したいものです。
一方で、すぐ連想されるのが医療事故調です。未だに医療事故調が発足しないのは、医療事故の原因を明らかにして、これも再発防止に役立てようというシステムであるにもかかわらず、結局医療者個人の責任を問おうとする刑事裁判に全て情報を提供しようという動きを封じることができずにいます。
海難審判でも医療事故調でも、最終敵に個人の責任追及を目的とする刑事裁判に情報を全てそのまま流す状態では、真実の解明にブレーキをかけることになってしまうのは、以前から書いて来た通りです。
このあたりで日本人お得意の応報感情・仇討ち刑法を遠ざけることを考えて良いのではないでしょうか。
海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で適切な見張りをせず漁船の2人を死亡させたとして、横浜地検は2日までに、衝突時の当直士官、長岩友久・前水雷長(35)と交代前の当直士官、後潟桂太郎・前航海長(36)の両3佐を業務上過失致死罪などで在宅起訴する方針を固めた模様だ。海難審判は後潟3佐の行為を「事故原因とならない」と結論付けたが、地検は刑事責任を問えると判断したとみられる。月内にも起訴する。
後潟3佐の交代後に衝突しており、事故時に操船していない乗組員の起訴は極めて異例だ。地検は、見張り不十分など2人のミスが重なり、事故を招いたと判断し、両船の航法については、横浜地方海難審判所裁決(1月、確定)と同様、漁船を右に見るあたご側が回避義務を負う「横切り船航法」で、あたご側に事故の主因を認めたとみられる。
第3管区海上保安本部(横浜市)の調べなどによると、両船は昨年2月19日午前4時7分ごろに衝突。後潟3佐は直前の午前3時50~55分ごろ、長岩3佐に当直を引き継いだ。この際、清徳丸と僚船の動静監視が不十分だったため、航行中の漁船群を「操業中」と誤解し「衝突の危険なし」と伝えた。海難審判でも「早計だった」とミスを認めていた。
引き継いだ長岩3佐も見張り不十分なまま、寸前まで自動操舵(そうだ)で直進を続け衝突。沈没した清徳丸の吉清(きちせい)治夫船長(当時58歳)と長男哲大(てつひろ)さん(同23歳)が亡くなった。
両3佐は昨年6月、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで地検へ書類送検された。裁決は「長岩3佐が見張りを十分にしていれば、避航動作を取る余裕があった」として、個人では長岩3佐の行為だけを事故原因と指摘。後潟3佐の引き継ぎなどは原因と認定しなかったが、地検は裁決後も関係者への聴取を重ねていた。
海難審判の位置づけについてあまりはっきり知りませんでした。これらの記事や解説などからすると、刑事処分を決定するのが裁判であり、海難審判は最終敵に行政処分を下すことを目的とするようです。
しかし、海難審判は、海上の事故を詳細に検討し、事故の原因を明らかにして、結果事故再発防止に資することのできる、事故調としての意味合いもあるようです。
行政処分という見方からすると、当事者の言い分にあまり耳も貸さず、一方的に運転免許取消しや停止処分を決定し押しつける、自動車運転免許における警察よりも、開かれたシステムと言えるでしょう。この点では自動車事故や違反などについて、海難審判を見習ったもっと開かれたシステムを期待したいものです。
一方で、すぐ連想されるのが医療事故調です。未だに医療事故調が発足しないのは、医療事故の原因を明らかにして、これも再発防止に役立てようというシステムであるにもかかわらず、結局医療者個人の責任を問おうとする刑事裁判に全て情報を提供しようという動きを封じることができずにいます。
海難審判でも医療事故調でも、最終敵に個人の責任追及を目的とする刑事裁判に情報を全てそのまま流す状態では、真実の解明にブレーキをかけることになってしまうのは、以前から書いて来た通りです。
このあたりで日本人お得意の応報感情・仇討ち刑法を遠ざけることを考えて良いのではないでしょうか。
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