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つまらぬサプリを買うよりも [診療]

産経新聞 「コンドロイチン」サプリメント 基準なく不適切商品も

 ■少ない含有量、異なる原材料… コンドロイチンサメヒレ.jpg 軟骨を形成する成分の一種「コンドロイチン」を含むサプリメントは、関節痛などの改善を期待する人に人気が高い。ところが、国民生活センターが調査したところ、含有比率が極めて低かったり、原材料が表示のものと異なったりする商品があることがわかった。背景には、健康食品サプリメントに表示などの統一基準がないこともある。(日野稚子)

 「年齢とともに減少してしまう」「中高年におすすめ」。サメ軟骨抽出物を原料にした「コンドロイチン硫酸」を含むサプリメントに、よくあるうたい文句だ。

 サメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸は元来、医薬品の原材料として使われていたが、昭和50年代後半に健康食品の原料に使われるようになった。エビなど甲殻類に多く含まれるアミノ酸の一種「グルコサミン」を加えた商品が登場したことで「リピーターも多く息の長い商品」(健康食品メーカー)になったという。

 しかし、国民生活センターと全国の消費生活センターには、平成15年4月からの約5年間で約1200件の苦情相談が寄せられた。「本当にサメ由来なのか」「本当に関節にいいのか」など品質・機能に対する苦情が約4分の1の329件を占める。「サプリメントは医薬品と同じ成分が入っていても自己責任で使うのが基本。そのため不安を感じる人も多い」と同センター商品テスト部調査役の宗林さおりさんは指摘する。

コンドロイチンぐる故フレックス.jpg このためセンターは、コンドロイチン硫酸を含むサメ軟骨成分の含有量が、一般医薬品の1日摂取目安量(最大900ミリグラム)を超えた18製品を調べた。

 サメ軟骨成分に含まれるコンドロイチン硫酸の比率を調べたところ、15~25%程度のものが多く、最大でも約35%、最少は約0・4%しかなかった。

 さらに、コンドロイチン硫酸の化学組成を分析したところ、「サメ軟骨由来」とだけ表示しながら、鶏や豚など哺乳(ほにゅう)動物由来のコンドロイチンが含まれる疑いがあるものが、わかっただけで3社の3商品あった。「JAS法違反の可能性が高い」と宗林さん。3社は、原材料メーカーを調査したり、再検査などを行ったりしているという。

 主原料をサメ軟骨成分ではなく「コンドロイチン硫酸」と表示しながら、実際は含有率が低く「景品表示法上問題がある」と指摘された商品も複数ある。このうち、店頭から回収を始めたメーカーは「原材料はコンドロイチン20%含有のサメ軟骨抽出物で、記載を誤った。表示を改めて再発売したい」としている。

 センターが問題視するのは、原材料名とコンドロイチン硫酸量の表示の関係だ。サメ軟骨成分を主原料と表記する15商品には、いずれもコンドロイチン硫酸含有量の記載はない。

コンドロイチン60.jpg 日本健康・栄養食品協会の林祐造理事長は「例えば“サメ軟骨抽出物”という表示の方が、医薬品と思われる心配がないというメーカー心理があったのではないか」と話す。しかし、センター側は「“サメ軟骨抽出物1000ミリグラム”と表示しても、コンドロイチン硫酸の含有量は示していない商品が多い。消費者が誤認するような表示はよくない。コンドロイチン硫酸の含有量をきちっと表示しているメーカーもあるのだから、業界として足並みをそろえるべきだ」(宗林さん)強調する。

 あるサプリメントがブームになった際、自社の実験数値を他社に無断使用された経験がある健康食品会社の幹部は「消費者のためには、国が定める保健機能食品ではない健康食品としてのサプリメントも、成分や表示に基準があるべきだ。その方がメーカーのためにもなる」と話す。

 厚生労働省の検討会が先月まとめた報告書では、原材料や製造工程の安全性確保のため、健康食品に第三者認証制度の導入を提言している。今回のセンターの調査結果は、新たな基準作りを後押しするきっかけになる可能性もありそうだ。


コンドロイチン4サルフェート.JPGコンドロイチン硫酸は軟骨の材料として使われると言われる一方、経口吸収も悪く、また服用による効果が殆どないとされる研究結果もあります。これはそもそもサプリのような食品の場合、医薬と違ってきちんとした検証が行われていないからでしょう。

経口摂取では効果が期待されず、どうしても使ってみようと言う場合には当然関節腔内に直接注入することが望まれます。
その場合には、やはり注射で皮膚などを貫いて注入するしかない訳で、口から飲むと何やら関節の軟骨が再生され、関節痛などに効果があると思い込んでしまうのでしょうか。

市販のコンドロイチン成分含有サプリに、どれだけの含有量があるとかないとか以前に、こんなものを口から飲んでもほとんど意味のないことに気付いて欲しいと思うのです。他のサプリにも同様のものがあるかも知れませんが、口に入ると高率に都合良く目的の関節の中に向かって行ってそこに納まる、というのは幻想です。

変形性膝関節症等の場合は、こんな商品に手を出していないで、整形外科を受診しましょう。痛い関節に主治医からヒアルロン酸を注入してもらうと、確実に入る訳で、効果が得られる可能性が高いと考えられます。

愚にも付かぬサプリを買い求めて散財するより、医療機関に行きましょう。関節痛は整形外科です。
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脳脊髄液減少症 [診療]

時事通信 交通事故で脳脊髄液減少症=因果関係認めた判決が初確定

脳脊髄液減少症ガイドライン.jpg 交通事故と脳脊髄(せきずい)液減少症との因果関係が争われた訴訟で、因果関係を認めた先月31日の東京高裁判決に対し敗訴した加害者側が最高裁への上告を断念、19日確定した。同様の判決は地裁で4件あるが、確定したのは初めて。
 脳脊髄液減少症は、事故の衝撃などで髄液を包む硬膜にすき間ができ、髄液が漏れることによって起きるとされるが、確立した診断基準はなく、専門家の間で異論もある。
 事故は2004年2月、横浜市内の交差点で発生。自営業の男性(46)が車を運転中、乗用車に衝突されて負傷した。最初は「頭部挫傷」と診断されたが、頭痛が強くなり、05年5月に減少症の診断を受けた。少量の自分の血で髄液の漏れる部分をふさぐ「ブラッドパッチ」という治療を受けて治癒した。
 東京高裁判決は、事故直後から症状が続いていたことや、「起立性頭痛」という減少症に典型的な症状があること、発症前後に他に原因となるような出来事がないことなどから、事故との因果関係を認めた一審横浜地裁判決を支持、加害者側の控訴を棄却した。
 NPO法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会の中井宏代表理事は「高裁が認めた意味は大きい。多くの患者が苦しんでいる中、大きな希望の光となる」と話している。


脳脊髄液減少症.jpg

8月のニュース記事です。
本来であれば、脳脊髄液減少症と交通事故外傷との因果関係と言った性質のものは、司法ではなく、医学の世界の中で結論を出して欲しかったと思います。

医療崩壊の問題で、不確実である医療の中に、法学的な判断を持ち込むことが不適切であり、その結果医学の進歩も副作用報告もストップしてしまうという点が指摘されています。

これと同様、交通事故と脳脊髄液減少症の因果関係はあくまでも主治医や研究者の間で議論の上、「因果関係が否定できない」という結論を、交通事故加害者=実際には保険会社に突きつけ、損賠をするよう働きかけ、それに保険会社が動かされた、という形が理想だったと思います。
もちろん保険会社が徹底拒否の姿勢を見せた時には、その段階で裁判というステップが必要になるのでしょうけれど。

そしてさらに、この脳脊髄液減少症はまだ保険診療が認められていません。実際に患者が存在し、画像診断上も脊髄液の漏出が認められている訳ですから、速やかに保険診療の対象とすべきでしょう。全ての症例が自動車事故のように他保険から治療費を支払われるというのなら良いのですが、そうでないケースもあるはずです。

こういうところに医療費抑制の力学が働いているのなら、許し難いことであるとさえ言えると思います。
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くも膜下出血の正診率 [診療]

毎日新聞 <くも膜下出血>初診6.7%見落とす 学会調査

 くも膜下出血の患者のうち、脳神経外科医以外が初診した6.7%が風邪などと診断され、事実上、病気を見落とされていたことが7日、日本脳神経外科学会の調査で分かった。患者が軽い頭痛しか訴えなかったことなどから、くも膜下出血を発見できるCT(コンピューター断層撮影)を実施していなかった。同学会は「軽い頭痛の患者全員にCTを行うわけにはいかない。現代医療の限界とも言える」としている。

嘉山孝正.jpg 同学会学術委員会の嘉山孝正・山形大教授らが、宮城県と山形県の2病院で、脳神経外科のカルテ全491例を調査した。

 宮城県は07年1月~08年5月が対象。198例中37例が脳神経外科医以外で初診を受け、うち10例(5.1%)が風邪、高血圧、片頭痛などと診断されてCTを受けず見落とされた。10例すべてが再発し2例が死亡した。

 山形県は96~05年が対象。専門医以外の初診は293例中48例で、23例(7.8%)が見落とされ、すべてが再発し2例が死亡した。

 見落とし計33例のうち17例は、くも膜下出血の常識に反して発症時に軽い頭痛しか起きておらず、委員会は「専門医以外では他の頭痛と区別できない」と指摘。他の16例も「診断が難しい例がある」とした。山形県では脳神経外科医でも見落とした軽度頭痛の患者が1例あった。

 米国では5~12%の見落とし率という報告がある。嘉山教授は「くも膜下出血の診断は難しく、完ぺきな診断はできない。現代の医療でも見落としは不可避という現実を周知し、脳ドックの普及など社会全体で対策を考えるべきだと思う」と話している。【奥野敦史】


くも膜下出血.JPG医療崩壊‥医療訴訟の増多で、副作用報告でさえ控えめになったという報道もありました。そうした中である意味勇気のある報告です。

この記事を捉えて、実際にくも膜下出血の診断に到らず死亡した患者さんの遺族の方が、「CT撮影を怠った」として主治医を訴えるケースが出てくる可能性がないとは言えません。

このニュース記事を見ると、医療資源の問題や、医療費削減指向などがくも膜下出血の診断率を抑えてしまう現状が見えてきます。即ち、全ての頭痛患者の頭部CTを撮影する訳には行かない。CTが不足してしまう。また、これらの診療の保険請求に対して査定が行われ、保険診療としてのCT撮影が拒否されるケースが続出する。そうした事態が考えられます。

嘉山教授は脳ドックなど、という発言をされていますが、これが自費の脳ドックでなく、医療保険または何らかの公費で行われるのが理想的な医療環境と思われます。自費の脳ドックの推進のみでは、「貧乏人はくも膜下出血で死んでも諦めろ」という宣告に等しいものになるからです。

そして現状では、こうした医療資源下で、くも膜下出血の診断に到らなかった医療者を訴えようとは思わないでほしいと思うのです。
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小児救急 [診療]

東京新聞 子どもが病気 親の対応は 家でもケア学ぶ

セシオン杉並.jpg 小児医療の基礎を学び親の不安と、医師の負担を減らしたい-。子育て中の母親らでつくる「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達の会」(東京)が七月六日、発足一周年を記念し杉並区梅里のセシオン杉並で、小児科医四人による基礎講座と個別相談会を開く。 (西田義洋)

 同会代表の阿真京子さん(33)は新宿区に住む二児の母。四年前、九カ月だった長男が重度のけいれんで病院に救急搬送された。「胸がつぶれそう」なほど長男が気になる一方で、待合室のほかの親たちが長い待ち時間にいらだっているのが分かった。

 その後、友人の小児科医から、二十四時間や三十六時間の連続勤務で疲れきった医師が子どもを診るのが当たり前だという実態を教えられた。「親として何かできないか」と昨年四月に同会を発足。十月から小さな講座を七回開いた。近く埼玉や山口で講座を実施、神奈川や茨城などでも準備を進めている。

 阿真さんは「どんなときに病院へ連れていけばいいか、どんなときは家でみていても大丈夫か。医師から直接聞けば、パパやママの安心につながるのではないか」と話している。

 当日は第一部として、午前十時から一時間、小児科医四人が別の部屋で講演する。

 済生会栗橋病院(埼玉県栗橋町)の白髪宏司副院長は「知ろう!予防できる子どもの病気 守ろう!ワクチンで」、山王病院(港区)の小林真澄医師は「けいれんの対処法」、カナダ・トロント小児病院の本間靖啓医師は「日本に子どものICUが少ないってほんと?」、まつしま病院(江戸川区)の佐山圭子医師は「子どもに多い症状とおうちでできるケア」がテーマ。

 第二部は午前十一時十分-十二時十分で、白髪医師が「救急のかかり方」を講演。事前予約で小林、佐山両医師が個別相談(一人十五分)も受ける。参加費千円。参加申し込みが必要。問い合わせは、ファクス=03(3360)1124=か、電子メール=iryo_info@yahoo.co.jp=で。


済生会栗橋病院.jpg6月のニュース記事です。
小児科医療をよく見て来た訳ではありませんが、夜間等救急で一番多いのは発熱のようです。かかりつけの医院も、どこの小児科も、通常の時間帯の外来はもう終了している。親としては心配にかられる。いきおい救急病院につめかけることになります。

小児の症状で救急診療を要するものは限られていると思います。例えば脱水などで口から水分が摂れない、加えて嘔吐・下痢までしている、となれば、生命の危険もあります。
こうした緊急性の高い患児が救急医療を要する一方で、そうでない親子が外来におしかけている現状はやはり改善の必要があるでしょう。

そして何よりコンビニ受診‥昼は両親ともに仕事が忙しいので、この時間しか受診できない。そういう身勝手な受診は控えてほしいものです。体温が37.5度を超えて保育園等から呼び出しがあったら、心配であればすぐその足でかかりつけ医に見せるべきです。

医療崩壊の真の原因は他にも多々ありますが、少しでもその崩壊を止める方向に患者さん側の理解を頂きたいと思います。
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葉酸 [診療]

産経新聞 

葉酸パン.jpg ビタミンBの一種「葉酸」の十分な摂取が高齢者の脳卒中や認知症の予防に役立つことが、海外の取り組みで明らかになってきた。米国では10年前に穀物に葉酸添加を義務付けたことで、脳卒中の死亡率が激減するなどさまざまな効果が報告されている。一方、日本では他の栄養素と同じ扱いで、必要量を摂取できていない人も少なくない。特に高齢になると葉酸を吸収しにくくなるので、意識的に摂取した方がよさそうだ。(平沢裕子)

 葉酸はホウレンソウなどの緑黄色野菜や豆類に含まれる水溶性のビタミンB群の一種。「造血のビタミン」ともいわれ、主に赤血球をつくる働きがあるほか、胎児の中枢神経系など新しく細胞をつくるときに必要な栄養素としても知られる。

 米国では1998年、日本の厚生労働省にあたる米食品医薬品局(FDA)が主食となる穀類への葉酸添加を義務付けた。この結果、新生児の二分脊椎(せきつい)などの「神経管欠損障害」が約2割減少したことが2001年に報告されている。穀物への葉酸添加は現在、カナダやオーストラリア、ニュージーランドなどで行われており、これらの国でも神経管欠損障害の発生頻度を減らす効果を上げている。

 一方、葉酸の十分な摂取が、新生児だけでなく高齢者にも恩恵をもたらしていることも分かってきた。米国で1998年を境に、脳卒中の死亡率が10万人中180人から150人へと減少したのだ。また、同年以降、米国民の血中の「ホモシステイン」が減ったことも判明。ホモシステインはアミノ酸の一種で、この値が高いと動脈硬化や認知症のリスクが高くなる。つまり、穀物への葉酸添加で、動脈硬化や認知症が予防できた可能性があるのだ。

葉酸カレー.JPG 日本では厚労省が平成12年、妊娠を計画する女性に1日0・4ミリグラムの葉酸を摂取するよう呼びかけた。しかし、周知されているとはいえない状況で、神経管欠損障害の出生率は日本では逆に増えている。また、成人の必要摂取量は0・24ミリグラムと海外の約半分。ホモシステインを減らし動脈硬化や認知症の予防効果があるのは0・4ミリグラム以上とされており、日本の基準では足りないとの指摘もある。

 国としての取り組みが進まない中、埼玉県坂戸市は2年前から脳卒中などを減らすことを目的に「葉酸プロジェクト」を実施、1日0・4ミリグラムの葉酸摂取を呼びかけている。成人式でのパンフレット配布や講習会で葉酸の必要性を周知する一方、企業と協力して葉酸添加のパンやカレーの開発を行ってきた。

 市健康づくり政策室の国枝寛室長は「葉酸摂取が脳卒中や認知症の予防につながるというのは海外では常識で、市民の健康のために行政での対策が必要と考えた。長い目でみて医療費削減にもつながれば」と期待する。

 女子栄養大の香川靖雄副学長は「日本人の寝たきりの上位3疾患である脳血管疾患、骨粗しょう症、認知症は、葉酸で予防が進むことが明らかになっている。すべての男女に葉酸の必要量摂取を呼びかける必要があるが、特に高齢者は葉酸の吸収が悪いので意識してとるようにした方がいい」と話している。


香川靖雄.jpgニュース記事の内容にウソはないでしょう。大袈裟もないでしょう。しかし、こうした記事が出て来ると、またしても多くの会社がこぞってサプリのラインアップを増やすことでしょう。

ビタミンB群は野菜を意識して摂取していれば十分摂れるはずで、高い金を出してまた新しいサプリに手を出すのはどうかと思います。

葉酸欠乏は今までもB12欠乏と同様、巨赤芽球性貧血の原因として知られて来ました。動脈硬化・認知症予防効果が本当であれば、やはり食事できちんと摂取すべきでしょう。

これらのデータにサプリメーカーからのバイアスがかかっていないことを望むばかりです。国や地方自治体挙げてのあるある大辞典にならないことを祈ります。
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頬部を殴るのはやめましょう [診療]

時事通信 平手で生徒殴り、鼓膜に穴=県立高教諭を減給-鳥取

 鳥取県立米子西高校(同県米子市)で5月、ソフトテニス部顧問の男性教諭(25)が生徒10人に体罰を加え、うち1人が右耳の鼓膜に穴が開くけがをしていたことが27日、分かった。県教育委員会は同日、教諭を減給3カ月とした。教諭は「指導が未熟だった。迷惑を掛けて申し訳ない」と話しているという。
 県教委によると、教諭は5月25日夕、県高校総体に向け体育館で行われた壮行会中、男子部員らがふざけているのに立腹。終了後、10人を別の体育館に呼び、全員のほおを平手で殴った。

この話題も以前、本ブログの前身かつポータルにしている、 So-net blog  で取り上げたことがあります。

さすがに高校での指導で、「お前らケツを出せ」と命じて並べ、そこを叩くというシーンは難しいのかも知れません。しかしやはり叩くのなら殿部にまさる場所はないと思います。

子供向けのエジソンの伝記を読んだ時、うろ覚えですが、トーマス・エジソン少年は記者の中でいたずらをしたか、化学実験をしていたのを車掌に咎められ、殴られたことが原因でその耳が難聴になったと言う記載をみた覚えがあります。
もしこれが事実であれば、頬部殴打のために穿孔した鼓膜にさらに感染が加わり慢性中耳炎となってしまったことが想像されます。

こうした外傷性鼓膜穿孔は早く耳鼻咽喉科を受診し、適切な処置を受けると、比較的高い確率で手術もせずに閉鎖することが多いと思われます。もし頬部を打たれてその後に難聴が出現したらすぐ耳鼻科にかかって頂きたいと思います。

しかしそもそも決して頬部を殴ってはいけません。


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色覚障碍 [診療]

中日新聞 色覚障害を擬似体験 県が眼鏡型機器を導入 /三重


 県は、色覚障害の視覚を疑似体験できる眼鏡型の「バリアントール」を全部局・県民センターの24カ所に導入した。色弱の人が見分けやすいように配慮する「カラーユニバーサルデザイン」の取り組みの一環。県が作製、配布するパンフレットなどを事前に点検する際に使い、配色や製図の方法を工夫する。

 バリアントールは、光学部品メーカーの「伊藤光学工業」(愛知県蒲郡市)が今春、豊橋技術科学大などと共同開発。世界で初めて、色の見分けにくさを体験できるようにした。

 県地域福祉室によると、色弱の人は、男性で20人に1人、女性で500人に1人いると推定される。赤や緑色の区別が付きにくいため、色分けした災害マップなどの地図やグラフが分かりにくい場合があるという。

 県は、誰もが分かりやすい情報提供を目指す「県ユニバーサルデザインのまちづくり推計計画」を7月にまとめている。7月から10月にかけて約200人を対象に職員研修セミナーを開き、バリアントールを使って見え方の違いを学んだ。

 各部局は今後、制作したパンフレットやポスターの校正が印刷会社から上がってきた時点で、バリアントールを掛けて見分けやすさを確認。色の組み合わせを工夫したり、作図に文字や境目を入れたりする。
 (奥田哲平)


色覚障碍を体験したり、見づらい表示を改めるのに有用な器械と思います。地下鉄路線図でも丸ノ内線と千代田線のカラーがわかりづらい可能性があります。

もう一つ気になったのが、以前にも取り上げたことば狩りに関する問題です。国立遺伝学研究所のHPに記載があるのですが、そこでは敢えて「色盲」という言葉を用いたいと述べています。
「盲」という言葉は状態を表す言葉で価値判断を含まない。むしろ色覚「障害」とか「異常」という方が差別的であるとします。確かに遺伝によって発生する色盲は異常ではなく、遺伝子のタイプであるという説明は非常に説得力があります。

少数派の遺伝子タイプの人を多数派が思いやる社会が望まれるのだと思います。意味もなく言葉を言い換えて済む問題ではありません。

耳鼻咽喉科でも先天性耳瘻孔や湿った耳垢の人を「異常」などとは呼びません。


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まだ進む医療崩壊~無理な説明責任 [診療]

毎日新聞 国に880万円支払い命令 説明義務違反認める 防衛医大病院医療過誤訴訟

防衛医大病院医療過誤訴訟:国に880万円支払い命令 説明義務違反認める

 ◇差し戻し審

 防衛医科大病院(埼玉県所沢市)で脳動脈瘤(りゅう)破裂を防ぐ手術を受け死亡した男性大学教授(当時61歳)の遺族が、手術法の説明が不十分だったとして国に約9600万円の賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審で、東京高裁は18日、880万円の支払いを命じた。太田幸夫裁判長は担当医師に説明義務違反があったと認めたが、死亡との因果関係は否定した。

 判決は「手術の問題点について分かりやすい説明があったとは認められない。教授は30-40分の説明を受けただけで、熟慮の機会を与えられなかった」と述べた。一方、説明を尽くせば教授が手術に同意しなかったとまでは言えないとした。

 教授は96年2月に手術を受けた後、脳梗塞(こうそく)で死亡。東京地裁は、医師が説明を尽くしていれば手術を受けなかった可能性が高いとして約6640万円の賠償を命じたが、東京高裁は説明義務違反を認めず遺族側逆転敗訴とした。最高裁は06年10月、審理を差し戻していた。【北村和巳】


少々わかりにくいのですが、手術の結果死亡したこの事案について、1審東京地裁判決は、説明義務違反と死亡との因果関係を認めました。即ち十分に説明を尽くせばこの患者さんは手術を受けないと言う選択を行い、死亡には至らなかったであろうという考え方です。
東京高裁は請求を棄却し、医師を無責としたようです。
最高裁は昨年10月、「説明義務を果たしたとはいえない」として、審理を差し戻し、今回の東京高裁の判決に至ったものです。

この最高裁判断と東京高裁の判決は、現在の医療の現状を理解していないものと思います。現実に30~40分の説明では、インフォームド・コンセントは成立していない、という判断です。

今回も少し長いのですが、小松秀樹氏「医療の限界」(新潮新書) 第一章 死生観と医療の不確実性 より引用します。

 十時間を超える説明
 医療現場を落ち着いたものにするためには、医療の不確実性についての認識を、患者と医師で共有しなければならないと思います。読売新聞・本田麻由美記者の文章にその難しさが書かれています。

「『医療は万能ではなく、不確実なものだ』--。間もなく4年になる乳がんの闘病生活を通じて、この言葉の意味がわかるようになった」
「『医療の限界』を実感したのは、患者になってからだ。きっかけは最初の手術から半年で見つかった局所再発だった」
「彼らは、乳房全摘でもすべてのがん細胞を取り切れない場合もあること、がん細胞が増殖して大きくならないと検査でも発見できないこと。標準治療がすべての人に効くかどうかは分からないこと--など、人間の身体の複雑さや医療の難しさを、とことん説明してくれた」
「延べ10時間は超える対話を通して、『現代医療も不完全で分からないことだらけ』ということを認識できた」
「知人の小松秀樹・虎の門病院医師は、『医療の不確実性と限界を理解してもらうことが、医師と患者の不毛な対立を防ぐのに役立つ』と言う」
「その通りだとは思うが、患者には、『不確実性』についての説明を受ける機会が少ない。そこに『不信』の根がある」
   「がんと私」(本田麻由美 読売新聞2006年6月16日付朝刊より)

 私自身、1980年代半ばには、医療について、医師と患者に大きな齟齬があり、対立の原因となっていることを実感していました。しかし、多くの医師は、本田記者が指摘しているように、つい最近までこのことに気付いていませんでした。
 虎の門病院の泌尿器科では、医療の不確実性については、かなり説明をしているつもりです。しかし、患者に納得してもらうために、10時間以上の説明が必要だとすると、医療現場にこの責任を押しつけるのは無理があると思うのです。
 本田記者は闘病生活に苦しんできました。大きな不安の中で検査結果を待ったり、あるいは、検査結果に喜んだりしてきました。さらに重要なことですが、本田記者はこれに正面から取り組み、考え続けてきました。本田記者には多くの愛読者がいます。彼女に、医療の不確実性についての意見を新聞に書いてもらうのは非常にありがたいことです。医師がいくら説明しても伝えられないものを、彼女は伝える能力を持っています。私は本田記者に絶賛のメールを送りました。
 しかし、10時間以上の説明が受けられたのも、彼女が世界最大の新聞社の有名な医療記者だったからではないでしょうか。すべての患者がこうしたていねいな説明を受けるのは、現在の医療体制ではとても無理です。
 人間はいつか必ず死ぬということ、医療が不確実であるということは、本来社会の共通認識であるべきだと思います。しかし現実には、ほとんどのメディアが不確実性を受け入れようとせず、一方的に患者と医師の対立を煽ってきたところがあります。

手術を受けるすべての患者さんに10時間を超える説明を行い、同意を得ないと、医師の説明義務違反を問うつもりでしょうか。もし本気でそんなことを考えているのなら、病院の外来は受診制限を行い、手術を必要とする患者さんが多数待たされ、その間に命を落とすことさえ考えられます。より一層医療崩壊を促進してしまいます。今回の最高裁・高裁の判断は、現場を知らない判決としか思えません。

ここで世の中の常識を取り入れようと裁判員制度に期待しても、その裁判員も判事以上にこうした現実を知らず、もっとひどい判決を要求するものと思われます。

今一番求められていることは、小松先生の訴える「医療の不確実性」を広く国民に認識してもらうことであり、このためにはメディアにもっと啓蒙してもらわなければなりません。医療者が刑事立件されたり、民事敗訴した事件を、魔女狩りのように報道していたら、事態はもっと深刻になると考えます。


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医師の事務作業軽減を [診療]

静岡新聞 県、医師確保策を拡充 長期の研修補助

 医師不足が深刻化する中、県は医師確保に向けたインセンティブ(誘導策)を拡充する。県内の公的病院に勤務する医師の国内外への長期研修費用を最大400万円補助する制度をスタートさせるほか、産婦人科の医師には雑用をこなす「秘書」の人件費を補助する制度も導入する。既に募集を始めた奨学金制度との3点セットで、県は「県内の現場で働く医師を何とか確保したい」(厚生部)と期待を寄せる。
 研修費用の補助は、勤務医確保と既に勤務している医師の資質向上が目的。対象は市町立や済生会、日赤、厚生連の県内33病院。病院が派遣する医師の研修期間の人件費、研修地への往復旅費、語学研修費などの2分の1を補助する。研修場所は国内外の医療機関などで、研修期間は3カ月以上1年以内。9月にも募集を始める。
 産婦人科医の秘書(医療事務補助員)雇用へは、病院に対象経費の2分の1を上限137万5000円まで補助する。対象は国立、県立を除く周産期医療システムの2次医療機関。秘書は他医療機関からの受け入れ準備をはじめカルテの整理、学会や会議資料の作成、電話応対などを受け持ち、産婦人科医の負担を軽減させる。
 奨学金(医学修学資金)は、県内公的医療機関に一定期間勤務すれば、年額240万円(最長6年)が返還免除となる制度。募集開始1カ月で5人の枠に対し28人から問い合わせが入り、県は枠拡大も検討している。
 ただ、こうしたインセンティブに対しては、「子供には自由に勤務地を決めさせたい。お金でしばるのはいかがなものか」(医大生を持つ静岡市内の団体職員)との意見も聞かれる。医療現場の環境改善に向けた抜本策を求める声も強い。

こうしたインセンティブ政策の是非はまだ検討の余地があるかも知れませんが、取り敢えず現実的には必要な措置として仕方ないかも知れません。

それより私がこのニュース記事で注目したのは、この「秘書」です。産婦人科に限りませんが、インフォームド・コンセントもきちんと得なければならないこのご時世に、患者に懇切に説明をし、それをカルテに記事として残し、患者に署名を求め、日々の診療を記録する。本当の医療行為に割くべき時間が圧迫されています。

こうした医師の負担を軽減するのに、この秘書は極めて有用と思われます。電話応対も良いけれど、外来・病棟で医師の陪席を勤め、記録・伝票作成などを引き受けてくれるとありがたいと思います。

開業医は自分でこうした事務を雇用し、日々の外来の負担を軽減している人も多いと思います。特に処置内容や処方の記載、処方せんの作成は全て口頭で行い、事務がそれを実際に書き取ると言う形式です。

これを、もっと多忙になって来た病院に大いに広げるべきだと思います。


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リタリン依存症と製造販売元 [診療]

毎日新聞 <薬物依存症>「リタリン」で急増 医師の安易処方が原因か

 向精神薬「リタリン」を乱用し、依存症などの副作用で入・通院したケースが06年度、精神科病床を持つ全国の医療施設で15例に上り、2年前の約2倍に急増していることが国立精神・神経センター(東京都小平市)の調査で分かった。全国にある薬物依存症の民間リハビリ施設「ダルク」を対象にした毎日新聞のアンケートでも、利用者の1割を超える166人にリタリンの使用歴があることが判明した。精神医療関係者は「適応症でない場合に安易に医師が処方し、依存症を増やしている」と指摘している。
 センターは2年に1度、薬物依存の実態調査を実施。今回は06年9月~07年3月、全国1653施設にアンケート用紙を送り、937施設(56.7%)から回答があった。それによると、主にリタリンを乱用し依存症などで入・通院したのは15例で、前回の04年度(8例)から倍増。また、覚せい剤やシンナーなど他の薬物との併用による入・通院も30例あり、前回(19例)から5割以上増えた。
 使った理由は▽疲労感や抑うつ気分の軽減▽覚せい効果を求める▽やせるため――など。15例のうち、自傷行為や自殺(未遂を含む)が6例あった。入手方法は、11例が「医師からの処方」と答えた。
 一方、毎日新聞は全国のダルク31施設(利用者約1000人)にアンケートを実施し、27施設が回答した。今年8月末現在、13施設で計32人がリタリンの乱用による依存症で入・通所していた。過去に使用したことのある入所者も134人いた。「医者の処方だから安全という間違った認識を持ち、依存する人が目立つ」(大阪ダルク)などの意見があった。
 調査した同センターの和田清・薬物依存研究部長は「リタリンは、幻覚・妄想などの強い副作用が覚せい剤のように高い頻度では出ないため、なかなか実態が表面化しにくい。入・通院者が1~2人増えただけでも依存者のすそ野は相当に広がっており、事態は深刻だ」と話している。【精神医療取材班】
 【リタリン】 塩酸メチルフェニデートの商品名。難治性うつ病や睡眠障害の「ナルコレプシー」などの治療に使われる。しかし、爽快(そうかい)感や多幸感が得られたり、食欲抑制作用があるため、若者を中心に乱用されやすい。1958年に販売開始され、当初は軽いうつに使われていたが、旧厚生省が98年、抗うつ薬で効果が不十分な難治性・遷延性うつ病に適応症を限定した。世界60カ国以上で販売されているが、うつ病に使用しているのは日本だけとされる。

リタリン依存症の問題については今年8月5日に日本テレビ系列の「NNNドキュメント『オーバードーズ』」で紹介されていたのをたまたま視聴しました。

日本での処方は安易に過ぎるとか、テレビでの取り上げ方のように、職場の人間関係や過労のためについオーバードーズ、即ち過量服用に走ってしまう人たちが増えて来たようです。複数の医療機関からリタリンを大量に処方してもらったり、裏のルートから入手したりしている様子が紹介されていました。

安易に処方してしまった医師の責任もありますが、もう一点指摘しておきたい問題があります。
このリタリンを販売しているのはノバルティス・ファーマという会社です。今この会社は癌領域の他は、事実上看板とも言える降圧剤を売り込むのに必死です。同系統の降圧剤が市場にひしめき、その中でのシェアを上げることに血眼になっています。

先に武田薬品について取り上げたことがありましたが、このノバルティスも同様に売らんかなの姿勢が明白で、この降圧剤だけを医師に処方してもらうべくMR(医薬情報伝達者)が走り回っています。他の薬もたくさんあるのですが、それに関する情報提供は殆どしていないと聞きます。

こうしたリタリンの問題が発生したら、安易な処方は避けるよう、一般医家にも周知させるようMRが「情報提供」すべきですが、どうもそういうことはしていないようです。最大の看板商品さえ売れれば、リタリンが処方されようがされまいが、知ったことではないようです。あくまでも処方した医師の責任、そういうスタンスなのでしょう。

確かに医師はこうした薬の副作用や問題を把握の上処方する義務がありますが、法的に義務がなかったとしても、製造販売会社はそうした情報を医師に伝達する責任があるのではないでしょうか。

今日も、抗癌剤担当者以外は、ノバルティス社のMRは内科のみを執拗に訪問し、降圧剤処方依頼を繰り返しているようです。

※ この記事を書き終わった後、「リタリン不適切処方で立ち入り=新宿のクリニックに-東京都」などのニュース記事が配信されました。もちろん不適切処方をする医師にも責任があるのは事実ですが、やはり私は製造販売元の責任も考えて欲しいと思っています。


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