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何が何でも個人を糾弾 [医療事故]

毎日新聞 千曲の医療事故:3人を業過致死容疑で書類送検 /長野

長野赤十字病院上山田診療所.jpg 千曲市の長野赤十字上山田病院(現長野赤十字病院付属上山田診療所)で05年に、液体酸素タンクの供給不足のために人工呼吸器を付けた患者が死亡した事故で、千曲署は4日までに、業務上過失致死容疑で、同病院の当時の事務部長(56)と会計課長(59)、同課主事(29)の3人を長野地検に書類送検した。

 会計課長と同課主事の容疑は05年10月、重症肺炎の男性患者(当時73歳)の人工呼吸器用の液体酸素タンクの管理と確認を怠り、酸素不足で死なせた疑い。事務部長は2人の監督指導を怠ったとしている。【大平明日香】


またか、と思わせるようなニュース記事です。警察は、というより日本の刑法は誰か個人を罰せずにはいられない、罰せずにはおかない、という構造がよく見えます。
かねてから書いているように、これは日本人の仇討ち的応報感情から発生したものと想像しますが、このニュース記事を見るとそれさえ逸脱して、何でも良いから誰かを有罪に、というきわめて不毛な図式に見えます。

液体酸素タンク.jpg医療事故の教科書に出てくる「信頼の法則」に基づき、医師が業過致死罪に問われていないのは納得できることです。医師は患者に投与すべき酸素が、タンク内の酸素が不足する事態まで想定して注意義務を問われない、というもので、さあ、それでは酸素の確認をしなかった事務方でも処罰しようか、ということですね。

この事務方3人を罰金刑だか懲役刑に処して前科者の烙印を押すと、いったいどういういいことがあるのでしょうか。
なぜ民事解決だけではいけませんか。
なぜ誰か個人の責任を追及することにばかり汲々としているのでしょうか。

医療者自体が責任を問われた事件ではありませんが、読んでいてきわめて不愉快になる記事ではありました。
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海難審判と刑事裁判 [医療事故]

毎日新聞 あたご事故 交代前の当直も責任 月内にも2士官在宅起訴

あたご清特丸.jpg 海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で適切な見張りをせず漁船の2人を死亡させたとして、横浜地検は2日までに、衝突時の当直士官、長岩友久・前水雷長(35)と交代前の当直士官、後潟桂太郎・前航海長(36)の両3佐を業務上過失致死罪などで在宅起訴する方針を固めた模様だ。海難審判は後潟3佐の行為を「事故原因とならない」と結論付けたが、地検は刑事責任を問えると判断したとみられる。月内にも起訴する。

 後潟3佐の交代後に衝突しており、事故時に操船していない乗組員の起訴は極めて異例だ。地検は、見張り不十分など2人のミスが重なり、事故を招いたと判断し、両船の航法については、横浜地方海難審判所裁決(1月、確定)と同様、漁船を右に見るあたご側が回避義務を負う「横切り船航法」で、あたご側に事故の主因を認めたとみられる。

 第3管区海上保安本部(横浜市)の調べなどによると、両船は昨年2月19日午前4時7分ごろに衝突。後潟3佐は直前の午前3時50~55分ごろ、長岩3佐に当直を引き継いだ。この際、清徳丸と僚船の動静監視が不十分だったため、航行中の漁船群を「操業中」と誤解し「衝突の危険なし」と伝えた。海難審判でも「早計だった」とミスを認めていた。

 引き継いだ長岩3佐も見張り不十分なまま、寸前まで自動操舵(そうだ)で直進を続け衝突。沈没した清徳丸の吉清(きちせい)治夫船長(当時58歳)と長男哲大(てつひろ)さん(同23歳)が亡くなった。

あたご海難審判裁決.jpg 両3佐は昨年6月、業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで地検へ書類送検された。裁決は「長岩3佐が見張りを十分にしていれば、避航動作を取る余裕があった」として、個人では長岩3佐の行為だけを事故原因と指摘。後潟3佐の引き継ぎなどは原因と認定しなかったが、地検は裁決後も関係者への聴取を重ねていた。


海難審判の位置づけについてあまりはっきり知りませんでした。これらの記事や解説などからすると、刑事処分を決定するのが裁判であり、海難審判は最終敵に行政処分を下すことを目的とするようです。
しかし、海難審判は、海上の事故を詳細に検討し、事故の原因を明らかにして、結果事故再発防止に資することのできる、事故調としての意味合いもあるようです。

行政処分という見方からすると、当事者の言い分にあまり耳も貸さず、一方的に運転免許取消しや停止処分を決定し押しつける、自動車運転免許における警察よりも、開かれたシステムと言えるでしょう。この点では自動車事故や違反などについて、海難審判を見習ったもっと開かれたシステムを期待したいものです。

海難審判刑事裁判.jpg一方で、すぐ連想されるのが医療事故調です。未だに医療事故調が発足しないのは、医療事故の原因を明らかにして、これも再発防止に役立てようというシステムであるにもかかわらず、結局医療者個人の責任を問おうとする刑事裁判に全て情報を提供しようという動きを封じることができずにいます。

海難審判でも医療事故調でも、最終敵に個人の責任追及を目的とする刑事裁判に情報を全てそのまま流す状態では、真実の解明にブレーキをかけることになってしまうのは、以前から書いて来た通りです。
このあたりで日本人お得意の応報感情・仇討ち刑法を遠ざけることを考えて良いのではないでしょうか。
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カテーテル事故、警察と報道を斬る [医療事故]

毎日新聞 <医療ミス>群馬大病院の女性医師を書類送検

群大病院.jpg 群馬大医学部付属病院(前橋市)で07年4月、群馬県桐生市に住む60代の女性が栄養管理のため体内にカテーテルを挿入する処置を受けた後に死亡した事故は、同病院の30代の女性医師が処置を誤り動脈を傷つけたことが原因として、県警は2日までに、女性医師を業務上過失致死容疑で前橋地検へ書類送検した。

 容疑は、07年4月27日、入院中の女性に摂食障害や意識障害が生じ、栄養管理のため首の静脈にカテーテルを挿入する際、誤って動脈を傷つけて死亡させたとしている。

 同病院によると、女性の遺族とは昨年、示談が成立したという。

asahi.com 挿管ミス、群馬大医師を書類送検 業務上過失致死容疑

 群馬大学医学部付属病院(前橋市)で07年4月、60代の女性患者が首にカテーテルを挿入された際、大量に出血して死亡した事故があり、群馬県警は、挿入時に動脈を傷つけたことが死亡の原因だったとして、処置をした30代の女性医師を業務上過失致死容疑で前橋地検に書類送検した。

群馬県警本部.JPG 県警や同大によると、患者は07年4月に入院。食事がとれない状態になったため、同月27日に栄養補給のためのカテーテル(直径約2ミリ)を右頸部(けいぶ)の静脈に挿入したところ、肺から大量に出血し、約7時間半後に死亡した。

 同病院では、06年6月にもカテーテル絡みの手術ミスがあり、心臓手術を受けていた男性患者(当時70)が大量出血で亡くなっている。


群馬県警の対応と、報道に抗議したいと思います。

群馬県警はなぜ書類送検などしたのでしょうか。100歩譲って、自らには捜査能力も医学知識もないので、とりあえず検察に下駄を預けた、ということなら、ただの無能な組織と言うことで抗議するのではなく、蔑むだけにします。
検察もこれを受けて起訴するような愚行には走らないで欲しいと思います。

群馬県警.jpg静脈を穿刺するという医療行為には、動脈を傷つけてしまうというリスクを伴います。私自身も鎖骨下静脈を狙って穿刺する時に、動脈を穿刺してしまい、圧迫止血をして事なきを得た経験もあります。
皮膚を大きく切開して動静脈を露出して穿刺するのではありません。この辺りに静脈があるはずだ、という方向に、手順を踏んでではありますが、針を進めます。この時に動脈を刺してしまうリスクをゼロにすることはできません。これを送検するのなら、その前に以前から主張している、違反容疑車両を追跡したらその車両が他を巻き込んで事故を起こしてしまったケースで、追跡していた警察官を送検しなさい。


次に朝日新聞の報道に対してです。

従来、医療事故に関しては毎日新聞や産経新聞より常識をわきまえた報道姿勢であるかと思って来ました。しかるにこの記事はどうしたことでしょう。
なぜ2006年の事件をわざわざ持ち出すのでしょうか。群大病院=カテーテル事故病院、という図式でも読者に刷り込みたいのでしょうか。そうだとしたら悪意に満ちています。

そして産経新聞も書いた、医学常識の欠如表題です。血管にカテーテルを挿入することは「挿管」とは決して言いません。挿管とは、気道確保の目的でチューブを気管に挿入する処置を言います。昨今救急救命士にも許された医療行為であって、紙面にも載せたはずの語句です。

医療用語とは言え、産経新聞や朝日新聞のこの誤用はそろそろ恥ずべき時でしょう。
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とりあえず医療者が悪い [医療事故]

毎日新聞 順大静岡病院の医療過誤損賠訴訟:順天堂に7100万円支払い命令 /静岡

順大静岡病院.jpg ◇過失認め順天堂に--地裁沼津支部判決
 順天堂大静岡病院(伊豆の国市長岡)で函南町の女性(当時34歳)が死亡したのは、病院側が手術後の注意義務を怠ったためとして、女性の遺族らが同病院を経営する学校法人順天堂(東京都文京区)に約1億円の損害賠償を求めていた訴訟の判決が25日、地裁沼津支部であった。千徳輝夫裁判長は同病院の過失を認め、約7100万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性は鼻血が止まらず、06年2月に同病院に入院。同年3月、出血を抑えるために右足の付け根からカテーテルを挿入して血管をふさぐ物質を注入する血管塞栓(そくせん)術を受けた。術後、止血のため右足のつけ根を重しで圧迫されてベッドで寝かされ、翌朝に歩いたところで倒れ、3日後に肺梗塞(こうそく)で亡くなった。

 裁判では、原告側が「重しで長時間圧迫したため、血の塊ができて肺に詰まった」と主張。病院側は「1~2時間程度しか重しを置いていない」と反論していた。

 判決では「長時間重しを乗せた状態にして、血の塊ができないようにする処置を怠った」として、病院側のミスを認定した。【山田毅】


エコノミークラス症候群.jpg不幸な結果があればそれは全て医療側の責任‥そういう考え方に貫かれた判決がまた出てしまいました。

この鼻出血の患者さんに対しては、受けた病院は何をやっても損倍を払うことになったでしょう。もちろん鼻出血を放置して失血の末不幸な転記をとっても当然、カテーテルによる血管塞栓術を行ったあと、カテ刺入部の鼠径部の圧迫を「怠れば」、刺入部からの出血に対しても訴えられ、それを避けるために止血処置を行ったら、それとの因果関係を無理矢理認定された肺梗塞は医療者の責任になってしまいました。

すなわち、この患者さんが病院に一歩足を踏み入れた時に、病院の損賠支払いは決定してしまったことになるようです。

そもそも肺梗塞はエコノミー症候群で知られるようになったように、起きてしまうときにはなかなか避けられるものではありません。それが飛行機の座席の上だったとしても航空会社は訴えられませんが、病院のベッドの上だったが最後、なぜか医療者の責任にされてしまいます。

医療崩壊、まだまだ続きます。
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中心静脈カテーテルと「過誤」 [医療事故]

読売新聞 カテーテル手術で大量出血死、琉球大病院で医療過誤か

琉球大医学部附属病院.jpg 琉球大医学部付属病院(沖縄県西原町)は18日、60歳代の女性患者が血管内にカテーテル(細い管)を挿入する手術後、体内に大量出血して死亡した、と発表した。

 手術で血管を傷付けるミスがあった可能性もあり、病院は調査委員会を設置して死因を調べている。

 須加原(すがはら)一博院長らの説明によると、女性は1月下旬、慢性腎不全で入院。人工透析をするため、血液の出し入れ口となるカテーテルを首の静脈に挿入して固定する手術を受けた。翌日、透析を行ったところ、女性は胸部に大量出血し、その翌日に死亡したという。

 病院は、女性の病理解剖を進めており、県警などに報告した。


また医療“過誤”報道です。まずは“ミス”を疑うようです。
何か医療において不幸な結果が発生した時に、まず何をおいても医療者の「ミス」「過誤」を考え、犯人捜しを開始するというこうした記事は、医療崩壊が現実のものとなっている今、もう書かれることがなくなっているように思っていました。ここまで医療者に悪意を持って書かれた記事タイトルには不快感を覚えます。

中心静脈カテーテル.jpg色々な目的で中心静脈カテーテルが留置されます。今回はこのカテを使用して透析が開始されたあと出血してしまったということです。
留置カテーテルの先端が血管壁を貫いて血管外に出てしまっていたとすれば、留置の時に既に胸腔内出血を来していた可能性が高いと思います。

もともとカテーテルの先に眼がついている訳でもなく、静脈穿刺後は血管に沿ってカテーテルの先端を送っていくしかありません。カテーテルが血管壁を傷つけた結果を全て医療“過誤”として医療者の責任を問うのであれば、現在日常診療で広く行われている中心静脈カテ挿入行為は出来なくなってしまいます。

こうしたことを何も考えず、病理解剖の結果も発表される前から医療“過誤”と決めつけるような記事を書いて欲しくありません。
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学校プールの事故と、教諭吊し上げ [医療事故]

時事通信 プールで飛び込み生徒死亡=レスリング部顧問を書類送検-福島県警

福島県立大沼高校プール.jpg 福島県会津美里町の県立大沼高校で昨年6月、レスリング部員の1年の男子生徒=当時(16)=がプールに飛び込み、底に頭を強打して死亡する事故があり、県警会津美里署は6日、指導監督が不十分だったとして、業務上過失致死容疑で、同部顧問の男性教諭(39)を福島地検会津若松支部に書類送検した。
 調べによると、教諭は昨年6月10日午後5時20分ごろ、男子生徒がプール(水深1.2~1.3メートル)のスタート台から飛び込んだ際、十分な安全指導や対策を怠り、底に頭を打ち付け、脊髄(せきずい)の一部を損傷させるなどして、6日後に死なせた疑い。
 当時、部員10人が練習に参加。クールダウンでプールを使用していた。教諭は1人で監督に当たっていた。


これも、またか、という記事です。プールで不幸な事故が起きた。生徒が頚髄損傷を引き起こし、死亡してしまった。どうすればこういう事故を今後引き起こさないようにできるか。しかしその前に誰かが悪いはずだ、そうだ部活顧問の教諭を刑事訴追しよう、そう見えます。

福島県警会津美里警察署.jpg高飛び込みではありません。普通のスタート台から飛び込んで、プール底に頭を打つことを誰が予想したでしょうか。
同じようなプールは全国至る所にあるはずです。同じような事故が起きる可能性もあります。

この高校の、しかもレスリング部の顧問教諭だけをつるし上げて何も解決しません。学校のプール、公営プール、競技場のプール、全てのプールにおいて、広く全国的に、飛び込む時はどのようにするのか、飛び込みを指導するにはどのように行うか、その他どんな注意が必要か、周知する必要があります。
この犠牲となった高校生の死を、本当に無駄にしないためには、そうした運動が必要なのであって、この教諭を業過致死罪で立件、吊し上げることに何の意味があるのか、甚だ疑問があります。

やはり不毛だと思います。
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弘南鉄道事故-再発防止よりまず刑事訴追 [医療事故]

河北新報 駅員らを書類送検 弘南鉄道脱線事故

弘南平賀事故.jpg 青森県平川市の弘南鉄道弘南線平賀駅構内で2007年6月に起きた列車脱線事故で、黒石署は5日までに、業務上過失往来危険の疑いで、いずれも当時の駅員男性(35)=青森県大鰐町=と営業課長男性(60)=黒石市=を書類送検した。

 調べでは、駅員は07年6月12日午前8時35分ごろ、平賀駅に進入してきた黒石発弘前行き普通列車(2両編成)の進路確認を怠り、誤ってポイントを切り替えて脱線させ、列車の台車などを損壊した疑い。営業課長は駅員に必要な教育訓練をしなかった疑い。

 列車には当時、運転士1人と乗客30人が乗っていたが、けが人はいなかった。

 弘南鉄道の下山敏則総務部長は「社員の書類送検を重く受け止め、引き続き安全対策に万全を期す」と語った。


黒石警察署.jpgニュース記事を見て、またか、という思いです。ひとたび事故が起きた時に、どうしても個人の責任追及をしなければ気が済まないのは日本人の気質なのか、またそれを刑法上定めてしまったからか。

業/運過致死傷罪の他に、業務上過失往来危険などという罪が刑法で定められているのは、このニュース記事を見るまで知りませんでした。司法関連の方、詳しい方には常識だったのかも知れませんが、私は初めてこれを知り、そしてやはり違和感を覚えました。

(過失往来危険)
第129条 過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、30万円以下の罰金に処する。
2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。


業過致死傷罪の方は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」となっていますから、それよりは軽いように見えますが、業務上過失往来危険(129条2項)の方は、ひとりも死傷者がいなくても適用される罪ですから、逆に厳しいと言えるかも知れません。

いずれにせよ、かつての東武線踏切事故同様、個人を罰しても事故の再発に資することもなく、システムエラーとして事故を捉え再発防止策を講じるべきところ、不毛な送検と思います。
またニュース記事の「当時の」駅員男性・営業課長男性を書類送検、というのが気になります。既に会社として彼らを懲戒解雇してしまったりしていないでしょうか。

ミスを犯したものを単純に切り捨て、以て会社としてはみそぎが済んだ、というポーズを取ったとしたら、それは卑劣です。そうした処分が行われていないことを望みます。

事故が起きた時、日本では応報主義が再発防止に優先するように見えます。きわめて情けない社会だと思います。
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医療事故?警察の暴走 [医療事故]

共同通信 眼科医を書類送検 福井・敦賀の男性死亡

敦賀市立敦賀病院.jpg 福井県警は23日までに、2004年に同県敦賀市の市立敦賀病院に搬送された男性患者に適切な治療をせず、この患者が死亡したとして、業務上過失致死容疑で病院の当直だった眼科の男性医師(35)を書類送検した。

 調べでは04年6月5日、敦賀市内の暴行事件で負傷した無職石橋勉(いしばし・つとむ)さん=当時(61)=が病院に運ばれた際、骨折した肋骨(ろっこつ)が肺に突き刺さっていたにもかかわらず、男性医師は、エックス線撮影で確認できず、適切な治療をしなかった疑い。石橋さんは2日後に肺挫傷で死亡した。

 敦賀病院によると、医師は04年4月から05年6月まで眼科医として勤務。現在は金沢市内の病院に移ったという。


信じがたいニュース記事です。
そもそもなぜ眼科医が胸部の外傷を診る羽目になったのかよくわかりません。ただ、都内の病院でもあるのですが、第二外科とか混合系などという当直系列を作り、その中に眼科・耳鼻科・皮膚科・形成外科・泌尿器科・放射線科などのいわゆるマイナー科が参加していることがあります。
肋骨骨折.jpg原則として自分の科の領域の救急患者を診るのですが、とりあえず診てくれ、ということで専門外の患者を診ることになるケースもない訳ではないのかも知れません。

そして眼科医が胸部X線上の肋骨骨折を診断できず、その後患者が不幸な転帰をたどってしまったと言うことです。結果責任を問うのであれば、誤診による業過致死罪の容疑ということになるのでしょう。
しかし警察には常識というものがないのでしょうか。おそらく専門外でも可能な限り、担ぎ込まれた急患に対応してやろうと考えた眼科医を書類送検、です。福島県立大野病院事件以後、こうした警察の態度がいかに医療崩壊を促進して来たか、未だに反省がないようです。

まさかとは思いますが、検察がこの眼科医を起訴するような愚行に走らぬことを祈るばかりです。
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国公立病院の医師を守れ [医療事故]

河北新報 裁判官の賠償二審も認めず 裁判期日遅延訴訟

福島地裁相馬支部.jpg 福島地裁相馬支部に民事訴訟を起こした南相馬市の男性と代理人の広田次男弁護士(いわき市)が、約8カ月間も期日を指定されず損害が生じたとして、支部長の森脇江津子裁判官に計約330万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は23日、「公務員個人は職務に関する賠償責任を負わない」とした福島地裁判決を支持、男性らの控訴を棄却した。

 男性らは「公務員に故意や重過失がある場合は個人責任を認めるべきだ」と主張。小野貞夫裁判長は「個人責任を認めると、相手に不法行為を主張された場合、直ちに公務員個人が訴訟の矢面に立たされ、公務の適正執行に対する抑制となりかねない」として退けた。

 判決によると、男性と広田弁護士は相馬支部に求償権請求訴訟と不動産仮差し押さえの申し立てを起こし、いずれも2007年9月、支部に係属した。その後、森脇裁判官は広田弁護士からの再三の期日指定要請などに応じなかった。


福島県立大野病院.jpg確かに裁判官個人としての責任追及を認めてしまうと、判決を出すのにかなり支障を来すことも考えられます。上級審で判決が覆されたり、再審請求でも同様に判断が変わったりした時に、原審の判事に責任追及がなされたりすると、今度は司法崩壊が始まってしまいます。

しかしその判事の個人責任を認めないという根拠として「相手に不法行為を主張された場合、直ちに公務員個人が訴訟の矢面に立たされ、公務の適正執行に対する抑制となりかねない」という判断を打ち出したことに大いに注目します。

具体例や判例をなかなか把握していませんが、国公立病院で医療事故が発生し、医療側が有責とされた場合、国や自治体のみならず、医師個人に民法に則って賠償責任を認めることができる、と聞きました。
そもそも民間病院に比べたら低い給与体系で、よりハードな勤務をこなしている公務員医師に、賠償責任を求めるのはあまりに酷です。もちろん医賠責保険に加入する医師が多いとは思いますが、その保険料は医師個人が自腹を切っている訳です。

国公立病院の医師だって公務員です。今回の仙台高裁の判断を全ての公務員に広げて欲しいと思います。「裁判官に限る」というのであれば、あまりに手前味噌な判決でしょう。
医療事故に、医療者側の明らかな過失があった、賠償の必要が発生した、そういう時は必ず経営主体である国や自治体に負担してもらいたいものです。

実際には賠償額を国家や自治体の予算から捻出する、というのではなく、雇用した医師一人ひとりについて、国や自治体が保険に加入して保険料を支払うだけの歳出で済むのではないでしょうか。
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日本人の性格と社会 [医療事故]

スポーツ報知 中3女子2人がお嬢様狩り「幸せそうな子はむかつく」

八王子駅ビルナウ.jpg 「幸せそうな子はむかつく」-。警視庁少年事件課などは21日までに、小学生の女児らを殴り、けがをさせたとして、傷害の疑いで東京都八王子市の市立中学校に通う14歳と15歳の中3女子生徒2人を逮捕した。

 2人は「自分たちは家庭環境に恵まれていないので、金持ちそうな子や幸せそうな子を見るとむかついた」と供述。同課では、2人がブランド品の洋服や私立中学の制服を着ている「お嬢様」をターゲットにしていたとみて、調べを進めている。

 同課は、ほかにも事件にかかわったとして、女子中学生3人についても児童相談所に送致・通告する方針。5人は同じグループで、JR八王子駅周辺を“縄張り”にしていたという。

 調べによると、2人は昨年11月23日午後3時頃、八王子市の市立小学校の校庭で、品川区居住の小学6年の女児(12)に殴る、蹴るなどの暴行を加え、全治約10日の軽傷を負わせた疑い。

 これとは別に12月11日午後8時頃、JR八王子駅の駅ビルに、私立中学1年の女子生徒(13)を3階のトイレに連れ込み、頭や顔を殴るなどの暴行を加え、全治3週間の重傷を負わせた疑いも持たれている。被害者が警察に届けを出し、事件が発覚した。

 2人は調べに対し、「小ぎれいな服を着ている子を見ると、親に愛されている気がした」などと家庭環境を犯行の理由に挙げているという。

 八王子市教育委員会によると、逮捕後に学校側は家庭訪問や保護者と話し合いをするなどして「積極的にコミュニケーションを図ってきた」というが、今後の対応については「警察の対応が終わってから協議したい」としている。また、被害者に対し、女子生徒らが謝罪したかについては「分からない」とし、学校への出席状況については「来たり来なかったりしていた」と説明した。


八王子児童相談所.jpgこの事件の中3女子を擁護するつもりはありません。しかし一方で、彼女らをあるまじき異端児として片付け、他人事のように少年審判に付して相応の罰でも受けさせて、と考えるだけでは少し安易ではないかと考え、取り上げました。

彼女らの述べた動機「自分たちは家庭環境に恵まれていないので、金持ちそうな子や幸せそうな子を見るとむかついた」というのは、実は日本人みなにあるものではないかと考えました。

小松秀樹氏の「医療崩壊」等の著書にもありましたが、医療訴訟の増多の一因として、パターナリズム=医師と患者は対等というより、医師が患者に医学的な事項を説明し、治療に従わせるという構図=や、「先生」と呼ばれて来た、ある種特権階級的存在として見られてきたことと関係があると言うものです。
上位の立場にいる者が失脚し落ちていくことを日本人はこの上なく好む、というもので、良い例とは言えませんが、北町奉行・遠山左衛門尉の裁きで、奉行より上級職の武士の悪事が明るみに出ると、金さんは彼を白砂に突き落とし、「追って沙汰があろう」と宣告します。通常の桜吹雪お裁きのみより溜飲の下がるシーンかも知れません。

もっと現実の例で見れば、繰り返し取り上げて来た、飲酒運転者に対する職場の処分など、過剰・不要と思われる措置がよく見られます。女性問題で政治家を落選させます。それぞれの不祥事はもちろんほめたものではありませんが、本質的な処分や対応、当事者のスキルに対する評価に大きく影響させるべきものとは限らないように思います。

自分より上位にいる者に対する強いねたみ・そねみを持つ国民性が、こうした社会の歪みを生んでいることにも目を向けるべきではないかと考えています。
最初に取り上げた女子中学生はこうした日本人の性格がたまたまわかりやすい形で現れた事例に過ぎない、とも思うのです。
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