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警察・刑務所は密室 [生活/くらし]

神戸新聞 入所手続き後、40代男性死亡 姫路拘置支所

姫路拘置支所.jpg 姫路少年刑務所は七日、管轄する姫路拘置支所に入所したばかりの四十歳代の男性被告が死亡した、と発表した。

 同刑務所によると、被告は六日午前、入所手続き中に胃痛と吐き気を訴えた。個室で休ませたが、職員が午後になって見にいくと意識を失っており、搬送先の病院で死亡が確認されたという。

 同刑務所は「体調不良を訴えた時点では緊急性はなく、対応に問題はなかった」としている。

 姫路署によると、被告は覚せい剤取締法違反罪で神戸地裁姫路支部に起訴されていたという。


こういう事件を取り上げるたびに警察への不信がつのり、不安が増します。無謬を主張したがる警察を監視する組織が存在しないために、このニュース記事の被害者のように泣き寝入りどころか、死人に口なし状態の人が増えているのではないかと思われます。

刑務所側の「‥緊急性はなく、対応に問題はなかった」というコメントを以てこの事件は終了、でしょうか。とんでもない話です。
病気だった場合、腹痛が発症した時点で当然医療機関にかからせるべきであり、これを怠った刑務所側の責任がないと主張して、それを咎めるすべがないとしたら恐ろしいことです。以前にも書きましたが病院の中であったら、たちどころに迅速な対応を怠ったとして医療者が業過致死罪に問われ、高額の損賠を要求されることになったでしょう。なぜ警察や刑務所だとお咎めなしなのでしょうか。

姫路警察署.jpgこうした一方的なコメント発表の報道ばかりが為され、誰にも真実の追究ができない密室となってしまっています。警察や刑務所の中は公開もされず、他の機関が全く監視できません。密室で何が起きたかは永遠に封印されてしまう可能性があります。

そういう状況にあっては、実は病気ではなく、被告男性に対して刑務官などにより暴力がふるわれ、その結果腹部外傷で死亡した可能性も考えてしまいます。本来刑務所側に説明責任があるはずです。

さて、もしこの死亡した男性被告に対して司法解剖が行われたとしても、これまたその結果は捜査上の秘密という大義名分のもと、明らかにされることはありません。警察の無謬性はこうして二重・三重の隠蔽システムによって保護されていると言わざるを得ません。

これで良いのでしょうか。検察審査会などより、「警察監視委員会」のような組織の方がずっと必要と思います。

ドライバー以外の責任を認めた民事裁判 [生活/くらし]

時事通信 公園の樹木放置、町に責任=見通し悪く死亡事故、賠償命令-名古屋地裁

美和町役場.jpg 愛知県美和町の公園近くで2005年9月、小学2年の男児=当時(7つ)=が車にひかれ死亡したのは、公園の樹木で見通しが悪かったためなどとして、遺族が管理者の同町と車を運転していた女性(37)らを相手に、約6600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が6日、名古屋地裁であった。尾崎康裁判官は町の管理責任を認め、女性らとともに約5600万円を支払うよう命じた。
 尾崎裁判官は、公園入り口付近を含め、公園と道路の境目には当時高さ約3~5メートルの樹木がすき間なく生え、見通しが悪かったのに町は放置したと指摘。児童らが飛び出す危険性が高かったのに、注意を促す看板なども設置せず、管理に瑕疵(かし)があったと結論付けた。動揺してブレーキを踏まなかった女性の過失も重大とした。
 判決によると、男児は自転車に乗って公園から道路に出た際、車にひかれ死亡した。
 男児の母(36)は閉廷後会見し「公園などの管理を見直すきっかけになれば。町は責任を認めてほしい」と話した。
 美和町建設課の話 判決を重く受け止め、改善を図りたい。控訴するかは内容を検討し決めたい。


美和町リバーサイドガーデン.jpg今までの交通事故爾後処理に比べたら進歩と思います。ひとたび交通事故が起きると、それは全て加害ドライバーの責任であり、民事賠償責任以外に刑事処分・行政処分を科す。剰えバカの一つ覚えの厳罰化で運過致死傷剤なる法まで作られてしまいました。

交通事故の起きた状況を一切考慮せず全てドライバーに責任を追わせてきた経緯を考えれば、こうして周囲状況にも考慮する動きは評価すべきと思っています。

ただ懸念される事態は色々あり、この民事裁判がドライバーの刑事・行政処分を軽減させることがあるのだろうかということ。この事故の責任の一部は交通環境にあったと認定されたのですから、本来それをドライバーの処罰軽減に反映させるべきであろうと考えます。

そして何が何でも個人の責任追及をしなければ気が済まない検察・刑法体系からすると、警察または検察が美和町役場職員の吊し上げに走るのではないかという心配もあります。公園を管轄する部署の職員や上司を業過致死罪で立件、などということになるのであれば、不毛の一言に尽きます。

どこまでも個人責任追及システムの歪みがついて来てしまいます。やはり過失と罰に関する法体系を一度見直すべきではないでしょうか。

反省しない警察 [生活/くらし]

書き置いた古い記事ですが、これもブログのCMよけにアップします。

時事通信 パトカー急発進、2人軽傷=警官「誤ってアクセル」-佐賀県警

佐賀県警パト.jpg 7日午前2時10分ごろ、佐賀市駅前中央の県道で、県警佐賀署のパトカーが急発進し、近くの縁石に座っていた福岡県大川市の建設作業員の男性(22)に接触した。男性は腰を打って軽傷。よけた際にこの男性がぶつかった同県柳川市の建設作業員の男性(22)も軽傷を負った。パトカーに乗り込もうとした同署交通課の巡査部長(49)は「誤ってアクセルを踏んだ」と説明しているといい、同署は業務上過失傷害などの疑いがあるとみて調べている。
 同署によると、当時現場には暴走族を見物しようと集まっていた人などが百数十人おり、巡査部長ら同署員2人が解散を促していた。巡査部長は、パトカーに設置されているマイクを使うため車に乗り込もうとした際に、右足でアクセルペダルを踏んだと話しているという。
佐賀駅.jpg パトカーはワンボックスのオートマチック車。エンジンをかけギアをドライブに入れた状態で、サイドブレーキを引いて停車させていたという。

毎日新聞 <ワゴン車事故>コンビニに突っ込み1人重体 静岡

 3日午後4時半ごろ、静岡市葵区新間のコンビニエンスストア「サークルK静岡新間店」にワゴン車が突っ込み、レジ付近にいた買い物客ら4人がはねられた。このうち、同市駿河区青木、無職、太田隆二さん(74)が全身打撲で意識不明の重体、妻ふみ子さん(66)が足に重傷を負い、客と店員各1人が軽傷。

 静岡県警静岡中央署は、車を運転していた焼津市吉永、無職、伊藤光雅容疑者(48)を自動車運転過失傷害の疑いで現行犯逮捕した。調べに対し「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と供述しているという。

サークルK静岡.jpg 同署によると、車は駐車場の車止めを乗り越え、前部から店内へ突っ込み、5メートルほど入ってレジカウンターにぶつかり止まった。【山田毅】


また2つのニュース記事を並べてみました。そして書くことは繰り返しになってしまいますが、警察は本当に自分達に対しては甘い組織だと思います。
警察官が車の操作を誤って人にケガをさせると、「業務上過失傷害などの疑いがあるとみて調べている」とし、身内の身柄は拘束しないのでしょう。一般人が事故を起こすと即刻「現行犯逮捕」なのと大変対照的です。

サークルK航空写真.JPGそしてこの警察が他ならぬ佐賀県警であるのが気になります。以前自転車乗車中の障碍者を捕まえて、押さえつけたために死亡させてしまった事件で、関与した警察官たちの過失を一切認めなかった警察です。身内の不祥事は何が何でも認めようとしない体質が日本一なのかも知れません。

自らの無謬を主張しようとすればするほど、その信頼が失墜していくことがまだわからないのでしょうか。こういう警察が冤罪を発生させ、そして最後まで非を認めないのでしょう。

応報感情の急性期・慢性期 [生活/くらし]

毎日新聞 正義のかたち:死刑・日米家族の選択/4 許し、慰問する被害者の母

 ◇憎しみの人生に疑問

 <敬愛する ミッキーさま

 12年前、私には美しい娘がいました。あなたに命を奪われた子です。あなたが罰せられることを夢見てきましたが今、あなたを許せることに自分自身、驚いています。

 キャサリーンの母より>

ゲイル・キャサリン.jpg 米西部オレゴン州シルバートンに住むアバ・ゲイルさん(72)は92年4月、カリフォルニア州サンクエンティン刑務所のダグラス・ミッキー死刑囚(60)に手紙を書いた。数週間後、感謝するとの返信を受けたゲイルさんは同年8月、刑務所を訪ねる。

 案内されたのは死刑囚ばかりの棟。「怪物」ばかりだと思っていたが、死刑囚は誰も物静かで礼儀正しかった。待つ間、緊張で心臓の鼓動が高まった。約45分後、目の前に現れたのは「ごく普通の男性」だった。

 2人は3時間以上、語り合った。ミッキー死刑囚が16歳の時、母を自殺で亡くしたことも知る。「2人はキャサリーンについて話し、一緒に泣きました。私が娘を奪われた夜、ダグ(死刑囚)も未来を失ったのです」

    ◇

 事件は80年9月に起きた。ゲイルさんの次女、キャサリーンさん(当時19歳)は、カリフォルニア州のアパートに音楽家(当時30歳)と同棲(どうせい)していた。薬物を巡るトラブルからミッキー死刑囚は知人の音楽家を刺殺、キャサリーンさんも殺害した。日本に逃走したが、81年に逮捕され83年9月、刑が確定した。

 数年間、ゲイルさんは「泣いてばかりでバケツ何杯もの涙を流した」。その後、悲しみよりも、犯人を憎む気持ちが強まる。死刑執行に立ち会い、苦しむ姿を見ようと誓った。

 しかし、事件から8年がたち、憎しみで終わる人生に疑問を持った。教会などを訪ね、怒りの感情が、平和や愛を求める気持ちに変わった。事件から12年、ゲイルさんは不思議な「心の声」を聞く。「許し、それを相手に伝えなさい」。その直後に手紙を書いた。

    ◇

 ゲイルさんが犯人を許すまでにかかった時間は12年。一方、米東部ニュージャージー州で8年前、強盗の男に両親を殺害されたシャロン・ハザードジョンソンさん(52)は、07年暮れに州が死刑を廃止したため、犯人の死刑を墓前に伝える機会を失う。「私の心は壊れたままだ」

 州議会で死刑の是非が議論されている間、死刑維持を主張し続けた。「犯人を許すことも、復讐(ふくしゅう)することもできず、正義に期待するしかなかった。両親は、正義に値する人だった」

 死刑の維持や執行の停止が州によって異なる米国。死刑を望んでもかなえられないハザードジョンソンさんのような遺族は少なくないとみられる。それでも、ゲイルさんは言う。「死刑は遺族を増やすだけです」。ゲイルさんは今、死刑廃止を訴え全米を講演。ミッキー死刑囚を「友人」と呼び、定期的に慰問する。「キャサリーンの声が聞こえるんです。『ママは間違っていないわよ』って」【シルバートン(米西部オレゴン州)で小倉孝保】=つづく

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 ■ことば

 ◇米国の死刑制度
 米連邦最高裁が1972年、死刑を違憲と判断し各州が中止したが、76年の合憲判断で復活が相次いだ。現在、全米50州のうち死刑を規定しているのはカリフォルニアやテキサスなど36州。執行停止の州も多い。死刑復活から08年末までの執行は全米で計1136件。ほとんどが南部。執行は薬物注射で、家族や被害者遺族、ジャーナリストの立ち会いを認める州も少なくない。

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サン・クエンティン刑務所.jpg死刑制度の是非に関する問題提起として大変興味ある事例であるとともに、振り返って日本における刑事裁判との比較において、感じることがあり、取り上げました。

殺人事件被害者の遺族が、このゲイルさん同様に加害者を許せる境地に達せるか、また達するべきかというとそうは思えません。宗教の問題もあります。ただ、それにしても対極にある日本人の応報主義に嘆息せずにはおられません。
すぐに想起されたのが、被害者参加制度導入後の、過失事件です。大半の刑事裁判で、被害者や遺族が被告人に対して少しでも重い量刑を、厳罰を、と訴えます。ある意味当然のことです。事故が起きたあとのショックや悲しみが何ら癒えていない時点で、被告人に憎しみの感情を抱くな、という方が無理な話です。
だからこそ、そういう怒りの頂点にいる被害者・遺族を法廷に入れることには大いに疑問を持ちます。応報感情のピークにあるエネルギーが判決を重い方にシフトさせてしまうようでは、公正な裁判は望むべくもありません。

過失ではない故意である殺人でさえ、本ニュース記事のように遺族が加害者を許すということもあり得る訳です。以前にも書きましたが、まして過失致死・致傷であれば、時間の経過により被害者や遺族が、加害者に対して持つ感情が変わってくるのは想像に難くありません。事故からあまり時間の経過していない法廷では量刑そのものを少しでも重く、執行猶予が確実な場合でもその年数を少しでも長く、という主張が報道されます。こうした主張は感情的には理解できるものの、一方でいやな気分になります。

さて、死刑廃止については私も賛成です。「死刑は遺族を増やすだけです」という言葉、重く受け止めるべきではないかと思っています。

そして、故意による殺人でも、過失致死事件でも、遺族の急性期の応報感情を法廷に入れることは、決して正しくないと思います。他の視点から異論のコメントも頂戴していますが、この点から被害者参加制度の廃止を望んでいます。

レジ袋と環境問題 [生活/くらし]

毎日新聞 レジ袋有料化:川口のサミット、中止へ 客足が減少で /埼玉

川口市役所.jpg 川口市と協定を結び、地球温暖化対策としてレジ袋有料化に取り組んできたスーパーのサミット(東京都)は17日、「サミットストア川口赤井店」での有料化を中止し、3月3日から無料配布を再開すると発表した。
 同市は県のモデル事業として、市内の12業者19店舗と協定を結び、昨年11月からレジ袋有料化をスタート。サミットは無料配布再開の理由について、「有料化後、月平均6%程度の売り上げ減少が続いている。来店客の理解や支持が得られないと判断した」と語る。
 川口市廃棄物対策課は「今回の中止は残念だが、今後も他の店舗に参加を呼びかけレジ袋削減に取り組む」とコメント。県資源循環推進課は「各事業者の協力がないと推進できない取り組みなので大変残念。有料化をドラッグストアに広げる計画も進んでおり、市と協力しながら推進していきたい」と話した。【鴇沢哲雄、山崎征克】


サミットストア.jpgレジ袋問題については以前にも取り上げました。自治体が先頭に立ってレジ袋有料化を促進しようとする動きに疑問を感じています。

環境問題からレジ袋の削減を、という考え方を否定するものではありませんが、これまた自治体によってはわざわざ有料ゴミ袋を作ってレジ袋によるゴミ出しを認めないというケースも聞きます。ゴミ収集費用徴収が最優先で、肝心の環境問題からすれば本末転倒です。

また小売店と消費者という経済取引にあって、レジ袋を断った人に値引きするか、レジ袋をもらう人に課金する=レジ袋を有料化するか、あるいは何もしないか、は小売店が消費者の動向を見ながら決定すべきことであり、自治体などが後者を強要すべきことではありません。
不景気下、生活が苦しい国民も多い状況下で、後者を強制することは正しい方向とは思えません。

レジ袋が必要以上に目の敵にされているような印象を持ちます。ゴミ袋としての再利用や、牛乳パック・ペットボトルのようなリサイクルを検討しても良いはずです。

他人に厳しく、自らに甘く [生活/くらし]

下野新聞 わいせつ警察官の立件見送り 「厳しい捜査の結果」

栃木県警.jpg 県警の男性巡査部長(54)が少女にみだらな行為をしたとされる問題で、県警は刑事事件としての立件を見送った。児童買春・ポルノ禁止法違反などの構成要件に該当しなかったという。「身内に甘いのでは」と非難される恐れもあるが、県警監察課は「厳しく捜査した結果」と弁明した。

 同法違反や県青少年健全育成条例違反で立件するためには、「(被害者が)十八歳未満だと知っていた」という認識の有無が問題となる。

 同課によると、被害少女(16)が出会い系サイトに「十八歳」と書き込んだ上、出会った際も十八歳と説明。また、少女の服装や携帯品、態度などが大人びていたという。

 県警は立件の有無を検察庁とも協議、巡査部長が少女を十八歳未満だったと認識し得たかどうか「客観的に立証できない」と判断した。

 立件は見送ったものの「警官としての倫理観を持たなければいけない。出会い系サイトの利用も含め、あるまじき行為」と結論付け、懲戒処分としたという

産経新聞 16歳少女をデリヘルで働かす 経営者ら逮捕 静岡

 16歳の少女に売春をさせたとして藤枝署などは14日、児童福祉法違反の疑いで、静岡市駿河区泉町のデリバリーヘルス店「甘えっ娘」の経営者、長田友幸容疑者(32)=同区中原=と女性従業員2人の計3人を逮捕した。いずれも「18歳未満とは知らなかった」と否認している。調べでは、長田容疑者らは昨年8月下旬、県中部居住の少女を同市内のホテルに派遣、男性客にわいせつな行為をさせるなどした疑い。


静岡県警藤枝署.JPGあまりに馬鹿馬鹿しくてコメントする気にもなれませんが、取り上げました。

ともかくも取り上げて、他人に厳しく、自らに甘い警察組織の姿は繰り返し問題視しておきたいと思います。
違う県警だから、というのも言い訳にならないし、栃木県警は何をどう「厳しく」捜査したのか、信用に足る発言とは思えません。

一番よく取り上げているのが、交通課や交通機動隊による、違反容疑車両の追跡と、その車両が引き起こした事故ですが、これも一切自らの責任を認めようとしていません。

権力を持った人間・組織については、常に監視の目を光らせておくことが大切だろうと考えます。

被害者参加制度のもう一面 [生活/くらし]

産経新聞 被害者参加制度…被告暴言で女性泣き出す 二次被害の懸念浮き彫り

全国犯罪被害者の会.jpg 「おまえたちは呪(のろ)われるぞ。茶番、エセ裁判だ」-。被害者が法廷で直接質問できる「被害者参加制度」が適用された事件の初公判が9日、東京地裁(藤井俊郎裁判長)で開かれた。傷害罪に問われた無職の男(43)が公判中に大声で暴言を吐いて、被害女性が泣き出す一幕があった。被害者が法廷で二次被害に合う可能性が指摘される同制度の懸念が浮き彫りになった格好だ。

 起訴状などによると、男は昨年11月、東京都世田谷区内の路上で、占いをしていた30代の女性の肩をつかんで引っ張り、顔などを殴り、約1週間のけがを負わせたとされる。男は起訴事実を大筋で認めた。

 証人尋問で女性が出廷。男と顔を合わせないよう間仕切りが設置されるなか、「(事件は)ものすごく腹立たしい」と述べると、男が大声で騒ぎ出し、法廷が一時中断した。

 次回公判では、女性による男への質問が予定されていたが、女性の弁護士は「今日の進行(トラブル)もあるので」とし、実施するかどうか明言を避けた。

 公判を傍聴した「全国犯罪被害者の会(あすの会)」代表幹事の岡村勲弁護士は、「(同様のトラブルが起きた場合でも)被害者は言いたいことを言ったほうが良い。被告の人間性が分かる効果もあるのでは」と話した。

 女性は初公判に先立ち、慰謝料など約60万円の賠償を求めて損害賠償命令制度を申し立てている。


東京地裁.jpgこの被告人を庇うつもりは毛頭ありません。ただ、逆にこの記事から、刑事裁判の被害者参加制度についての別の一面がクローズアップされたのではないかと考えています。ニュース記事で「懸念が浮き彫りになった」という表現は、被害者・遺族側からの視点のみであり、一方的です。

そもそも被害者参加制度で、被害者が直接被告人を追求、糾弾、より重い量刑を求める場としてだけ捉えられていないでしょうか。実際にいくつか行われた例でも、少しでも重い刑を、執行猶予つき確実な例では少しでも猶予期間の延長を訴えている例の記事を目にして来ました。
すなわち被害者参加制度は、被害者や遺族の応報感情のはけ口であり、検察もそれを利用して少しでも量刑を重く、という意図が見えます。

そういうつもりで被害者や遺族が法廷に臨んでいるのなら、この例のようなリスク(と呼ぶべきでしょう)を甘んじて受けるべきです。本例では被告人のこの発言は結果的に量刑を重くする方向に働くだけだろうと思われますが、事件によっては被害者・遺族はもっと不愉快な思いをするケースがあると思います。
あまり実例に思いを馳せたくないのですが、例えば婦女暴行などで、被告人が被害者の耳を覆わしむるような発言をすることは当然考えられます。

そもそも被害者参加制度には繰り返し反対を唱えていますが、出来てしまったこの制度を利用しようと言う場合には、それ相応の覚悟を持って法廷に臨んで欲しいと思います。

被害者参加制度廃止を [生活/くらし]

asahi.com 遺族「償いの意味は」 被害者参加裁判

札幌被害者参加男.jpg■被害者参加裁判 道内初
■乗船者死亡 誠意感じず実刑望む

 犯罪被害者や遺族が法廷で被告人に質問などができる「刑事裁判への被害者参加制度」が30日、道内で初めて札幌地裁(石井伸興裁判官)で実現した。プレジャーボートに乗った3人が死傷した事件で、当時27歳だった息子を失った父親(59)と兄が出廷。父親は「一生償うと言った言葉の意味を知りたい」と被告に尋ね、検察官の禁固2年の求刑について「実刑を望みます」と意見を述べた。

   ◇

 遺族が参加したのは、神奈川県平塚市の相模川河口付近で07年4月、波の状況を確認せずにプレジャーボートを出して運転し、知人1人を死亡、2人にけがをさせたとして業務上過失致死傷の罪に問われた男性(42)=札幌市=の初公判。

 法廷で、父親と兄は検察官の横に座り、「間違いありません」と起訴事実を認める被告人を真っすぐ見つめた。検察官と弁護人が被告に質問した後、父親が「今までと重複するところもありますが、親として質問させて頂きます」と切り出した。

 「一生償うと言いながら、何の連絡もない。どう償うつもりなんですか」「葬儀費用500万円を払うと約束したが、どう弁済して下さるのですか」と、落ち着いた声で被告人に問いかけた。

 被告は、左側に座った父親の方を時折向きながら、「家族の方に満足してもらえるよう償っていこうと、本当に思っている」「今は無職だが裁判が終わってから働く予定です」と答えた。2人のやりとりは約7分だった。

 公判は即日結審した。検察官は「現場は事故が多発する場所でありながら、海釣りがしたいとの思いで、海の様子を確認しないまま出航したのは身勝手だ」と指摘し、被告に禁固2年を求刑した。

 続いて、証言台に立った父親は量刑について、「償うという被告の言葉はその場限り。態度に誠意が感じられない。言葉の持つ重みを真剣に考えてもらうため、刑務所で反省することを望みます」と述べた。

 札幌地検によると、今回の事故は神奈川県で起き、父親も同県に住むが、被告が札幌に住んでいるため、札幌地裁で公判が開かれた。判決は2月10日に言い渡される予定。

   ◇

■「質問機会に感謝」 遠方裁判で不便も

 父親は公判後に札幌市で記者会見し、「被告に直接質問する機会を設けて頂いたことは非常にありがたかった」と被害者が裁判に参加した意義を語った。被告は事件後に引っ越して連絡がとれない状態が続いていたといい、父親は「私個人の力では被告の居場所を見つけ、事件のことを質問することはできなかった」と話した。

 父親はこの日午前5時10分に起きて飛行機で札幌まで来た。「神奈川で起きた事故なのに、こうして裁判所に来るのは大変だった。検察官との打ち合わせも、遠方だと不便だった」との感想も述べた。

 札幌地検の米村俊郎次席検事は公判後、「参加した父親と兄の2人は、気持ちを裁判所に伝えることができたのではないか。今後も被害参加人と意思疎通をはかり、制度の趣旨に従って、その権利を行使できるよう努力したい」と話した。

 一方、傍聴した刑事弁護センター運営委員会副委員長の見野彰信弁護士は「一般論でいえば、法廷が被害者の応報感情に支配される心配がある。制度は慎重に運用すべきだ」と話し、今後、制度を検証していく考えを示した。

   ◇

《被害者参加制度》 殺人をはじめ「故意の犯罪行為で人を死傷させた事件」などの刑事裁判に、被害者や遺族らが参加する制度。08年12月以降に起訴された事件で始まった。これまで被害者は証人として尋問を受けたり、心情などを意見陳述する際に出廷することがあったが、今後は検察官の横に座り、被告に質問したり、量刑について意見を述べることなどができる。


札幌地裁.jpg1月の記事です。朝日新聞の記事は他紙よりまともに感じます。被害者参加制度に対して無批判な記事が多く、さらに検察・被害者側と一緒になって被告を攻撃するに至っては読むに耐えません。

被害者参加制度発足後のこうした記事を読むにつけ、最初から予想されたことではありますが、こういう裁判の展開になるのは目に見えています。遺族がストレートに被告人憎さの発言をぶつけたのでは様にならないので、「(償いという)言葉の持つ重みを真剣に考えてもらうため、刑務所で反省することを望みます」などという作文が出来ています。きっと検事との打ち合わせで作成されたものなのでしょう。

体裁を整えた発言の下には応報感情が燃えているのは明らかです。過失とは言え自分の家族を死傷させた者は絶対に許さない、そういう感情をくるんでいます。

検察と利害の一致した被害者・遺族の発言が裁判を狂わせることを懸念しています。
故意犯に対する裁判で始まったはずの制度が、こうした過失を裁く裁判に導入されていることにも疑問があります。過失はあくまでも民事で「償う」べき問題であり、刑事罰を科すのであれば、その過失の重さのみが問題にされるべきである、ということを繰り返し主張して来ました。

このニュース記事の事件では、子供を亡くした父親の心情は理解できるものの、検察がそれを利用して被告人の量刑を重くしようとしているのがこの上なく不愉快です。

繰り返し書きます。被害者参加制度は早々に廃止して欲しいと思います。

超法規的増刑 [生活/くらし]

asahi.com 受刑者に定額給付金、自治体に戸惑い 総務相も検討明言

鳩山邦夫.jpg 死刑囚や無期懲役の受刑者にも定額給付金を支給するのか――。こんな議論が、国会や総務省などで続いている。拘置所や刑務所がある自治体では、国民感情を気にして戸惑う担当者もおり、早く基準をつくるよう国に求める声が上がっている。

 「私も、はたと考え込んでいる部分がなくはない」。13日の衆院総務委員会で、鳩山総務相が悩ましげに答えた。定額給付金について、田嶋要議員(民主党)から「不法滞在者は受け取れず、日本人の受刑者が受け取れるという理由は」と問われた時だった。

 法相でもあった鳩山氏は「無期、死刑に若干ひっかかりを持つ。刑法犯で入所している人に対してどうかなという点は、少し検討させようと思う」と、死刑囚と無期懲役の受刑者への給付に慎重な姿勢も見せた。

 定額給付金は、住民基本台帳か外国人登録原票に記された人が支給対象だ。成人の場合、1人につき65歳未満が1万2千円、65歳以上が2万円を支給される。

 総務省によると、受刑者がどこに住民登録するかを特に定めた法令はないが、原則として収容先から出られない死刑や無期懲役の場合、拘置所や刑務所に住民票を置くのが基本的な考え方だという。

 法務省によると、死刑囚は全国7カ所の拘置所、無期懲役になると15カ所の刑務所に収容される。死刑囚は4日現在で99人、無期懲役受刑者は07年末現在で1670人いる。年金などの蓄えがあっても、施設内で買えるのは、洗面用具や文房具といった日用品などに限られる。代理人を通じ、被害者に弁済することは可能だ。

 「世論や国民感情を考えれば、死刑が確定した凶悪犯にも支給するというのは……」

 東京都葛飾区役所では、内部でこんな議論を繰り返してきた。区内には、オウム真理教元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚らが収容された東京拘置所がある。

 「支給すべきではない」という声がある一方、「葛飾区だけが支給しないと決めてしまったら、全国の受刑者の間で不公平が生じる」という悩みも。担当者は「自治体の判断にはなじまない問題だ」として、今月中旬、都に対して「取り扱いの基準を示すよう総務省に上申してほしい」と申し入れた。

 死刑囚でも、再審請求をしている場合は「冤罪」が認められる可能性もあり、線引きは難しそうだ。(向井貴之)

     ◇

諸澤英道.jpg 日本被害者学会理事を務める諸澤英道・常磐大大学院教授(刑事政策学)の話 定額給付金の目的が生活支援と景気刺激ならば、施設での生活が保障される代わりにお金を使うのが困難な死刑囚らに給付する意味は、ほとんどない。高額所得者には支給しないという議論があったように、法律で給付対象者を区別したとしても、憲法違反にはならないはず。被害者感情を無視して給付すれば、ばらまきだと批判されてもやむを得ない。


1月のニュース記事です。
つくづく日本人の国民性はリンチなのだろうと思います。どうして大多数の自分たちと異なる立場にある人たちを下に蹴落とし、非難を続けることを、国民挙げて行うのでしょうか。

このニュース記事の時点では定額給付金の額も支給対象もまだ確定していませんでした。高額所得者が受け取るべきか否かという議論ならわかりますが、受刑者に渡すなというこうした「声」には猛烈に反発します。

死刑でも無期懲役でも、受刑者は確定したペナルティを受け入れ、刑に服しあるいは執行を待っています。そこへ、なぜ「定額給付金を渡さない」というもう一つの「罰金刑」を追加されることに甘んじなければならないのでしょう。

松本千津雄.jpgここでも出てくるのが曖昧な言葉「国民感情」というものです。アンケートでも実施したのでしょうか、国民投票でもやったのでしょうか。
小学生が親に「○○を買ってよ、『みんな』持ってるんだよ~」と訴えるのと、何ら変わらないと思います。

死刑囚でも無期懲役囚でも、本人が使えない金であるのならば、死後法定相続人が受け取るべきものです。民事未解決であれば、負債・賠償額などに充当されるべきものです。なぜそれを奪うことばかりを考え、誰も異を唱えないのでしょうか。

こういう記事を読むと日本人の国民性の貧しさを感じずにはいられません。また、自分と違う者たちとの間に線を引いて差別しようというこの発想は、かつての(だと良いのですが)穢多・非人を作り出してきた歴史と通じるものを感じます。

警察のやることに絶対に間違いはありません [生活/くらし]

asahi.com 民事判決「他殺と推認」県警は「自殺」 愛媛の漁師死亡

愛媛いかり.jpg 愛媛県宇和島市沖で06年に遺体で見つかった漁師の男性(当時64)=同県愛南町=の妻(48)が、「夫の死は自殺ではない」として、えひめ南農協(同市)に生命保険の特約分の支払いを求めた訴訟で、松山地裁宇和島支部(小崎賢司裁判官)は15日、「他殺と推認できる」として、遺族側に2500万円を支払うよう農協に命じた。遺体発見当時、捜査に当たった愛媛県警は自殺と判断していた。

 判決などによると、男性の遺体は06年11月2日、宇和島市沖で、両足首にいかり(約10キロ)のついたロープが結ばれた状態で見つかった。死因は冷たい海水につかったことによる心原性ショックだった。捜査した県警は07年2月に「自殺の可能性が高い」と遺族に説明。農協は災害特約に基づく保険金の2500万円を支払わなかった。

 小崎裁判官は判決で、海流などから考えて遺体の発見場所が不自然で、足に結ばれていたいかりが本人のものではなく、海上で見つかった男性の船には魚が残されていた点などを指摘。「自殺と推認するのは合理性、相当性を欠く」と判断した。

えひめ南農協.jpg 同農協の上部団体のJA共済連愛媛は「判決を真摯(しんし)に受け止め、今後の対応を検討したい」としている。県警捜査1課は「必要な捜査はした」とコメントし、再捜査はしない方針だ。


色々な場面に出てきます。警察は無謬だ、警察のやることに間違いはない。彼らの発表するコメントは全てこれで貫かれています。
エラーを発生させない人間はいないし、その集団組織は企業であろうと医療機関であろうと、公的機関であろうとミスや誤った判断は必ずあります。どうして警察組織だけがこうも硬直した態度を取るのでしょうか。

今まで一番多く取り上げて来たのが、交通違反に対する、主に追尾による取締りでした。追尾された車両が逃走のために無理な運転を行い、時に無関係な車両や歩行者などを巻き込んだ事故を起こしてしまい、また被追尾車両運転者が死傷するケースも多くなっています。
愛媛県警察.jpgしかし、警察は一切自らの責任を認めようとしません。

今回の事件も、民事裁判とは言え、他殺の判断が示されています。三権の一翼を担う裁判所が他殺の可能性が高いと認めています。なぜ警察の態度はこうも頑ななのでしょうか。
もう一度捜査資料を見直してみる、もう一度現場検証をやり直す、それから結論を出しても遅くないでしょう。そうしたことを一切せずに、言下に再捜査をしないと述べています。

警察は無謬だ。この方針は地方県警に至るまできちんと貫かれています。不起訴処分を咎める検察審査会のようなシステムがなぜか警察の“再捜査不履行”に対しては設置されていないのが不思議です。
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