医療バッシングに乗って [その他(医療関連)]
愛知県豊明市の産婦人科医院「アキラレディスクリニック」の院長がNHKの報道で名誉を傷付けられたとして、5500万円の賠償を求めた訴訟は22日、東京地裁(鹿子木康裁判長)で和解が成立した。NHKが院長に謝罪し、和解金400万円を支払う。
訴えによると、NHKは05年1月、夕方の番組「ほっとイブニング」のローカルニュースなどで、同医院が助産師資格のない看護師らに内診をさせ県や保健所の行政指導を受けた、などと報じた。
これに対し院長側は「03年8月に保健所からアドバイスを受け、同10月に看護師による内診を廃止した。病院の対応は迅速で、放送時には改善していたのに、違法行為が続いているかのような印象を与えた」と主張。「風評被害で甚大な損害を被った」と訴えていた。
この報道を巡って、放送と人権等権利に関する委員会は05年7月、「名誉棄損をきたす恐れのある深刻な放送倫理違反がある」と認定し、放送倫理に一層配慮するようNHKに勧告した。
和解についてNHK広報局は「今回のことを教訓に、今後の取材・報道に生かしてまいります」とのコメントを出した。【銭場裕司】
社会背景、というと大げさかも知れませんが、その時点でのマスコミの流れのようなものがあったように思います。
今でこそ、福島県立大野病院産科の裁判の無罪判決も出され、医療崩壊が現実のものとなり、医療バッシングがどのような事態を招いたか、国民の間に浸透して来たように思います
しかし、この報道があった2005年は、医療バッシング進行中で、1999年の都立広尾病院消毒液注射事故、2003年の慈恵医大青戸病院泌尿器科医師逮捕などが続き、2006年の大淀病院事件で毎日新聞の報道暴走が医療崩壊を現実のものとするきっかけを作るまで続いて来ました。
こうした中でNHKのニュースも医療バッシングを基調とする報道をすることが視聴者に受けが良いと思ってか暴走したものと思われます。いやしくも報道機関たるもの、事実をねじ曲げてまでこうした報道をしてはなりません。
この産婦人科クリニックが被った被害を考えたらこの和解金は安すぎるように思います。放送で事実を伝え謝罪し、なおかつ風評被害に伴う被害をきちんと賠償すべきでしょう。
ついでに、この和解金400万円はどこから支払われるのでしょうか?受信料から差し引きたいものです。
続・がんの宣告 [その他(医療関連)]
神奈川新聞カナロコ 医療従事者ら、がん告知の在り方考える/横浜
医療現場で、がんの診断や再発などの「Bad News(悪い知らせ)」を患者にどう伝えるかを考える医療従事者向けのセミナー「がん医療におけるコミュニケーションスキル」が十九日、横浜市西区の市教育会館で開かれた。県立がんセンターと日本対がん協会の共催。看護師ら約二百三十人が参加した。
がん医療の現場では、患者本人への告知が増加傾向にある一方、その受け止め方は患者一人一人の死生観などにより大きく違いがある。よりよい「伝え方」が大きな課題となっているという。
県立がんセンター泌尿器科の三浦猛医師は講演で、「患者や家族との良好な信頼関係が告知の条件となる」と強調。「分かりやすい言葉で、本人の意思を確認して説明をする」「うそを言わず、時間をかけて情報を伝える」など、告知の際の基本的な姿勢を紹介した。
また、ホスピス医として約四千人の末期がん患者の医療に従事してきた栄光病院(福岡県)の下稲葉康之院長の特別講演も行われた。下稲葉院長は、余命を宣告された父親のために病院で結婚式を行った女性や、三十六歳でがん告知を受けた娘をみとる母親の姿などを写真を交えて紹介した。
その上で、「Bad Newsを伝えることは患者にとって、限られた余命を直視し、悔いのない人生の終結を模索するというQOL(生活の質)の向上につながる」と説明。「医療に携わる者にとっても、患者の生死を分かち合う役割を負うことが貴重ないやし、励みとなる」と意義を語っていた。
先の記事でも取り上げましたが、癌の告知、ことに治癒が望めない場合の宣告は昔からの大問題でした。しかし、何でも訴訟ばやりの今、癌宣告をしない或いは遅れるとそれを訴えられる事態が考えられます。あまり医師に悩んでいる時間はなさそうです。
現実にはまず家族に告知、家族に一任するケースもあるだろうし、家族の了解を得て本人に告知することもあるでしょう。
患者・家族との信頼関係が大切なのは言うまでもありませんが、モンスター家族や悪徳弁護士などにそれを壊されたくないと思います。
そして死因のトップになった癌に自分が冒された時のことを、時に考えておくのも一つの道と考えます。
障害者施設の管理責任 [その他(医療関連)]
毎日新聞 障害者施設 胃の中から手袋10枚、男性重体 香川
香川県坂出市府中町の重度心身障害者支援施設「瀬戸療護園」(横倉直登園長)で今年7月、入所する20歳代の重度障害の男性が吐血、搬送先の病院で胃の内部から排せつ介助用手袋(塩化ビニール製)10枚が見つかっていたことが5日、分かった。胃と十二指腸が傷つき摘出した男性は、現在も重体が続いている。県警も既に4日、業務上過失傷害容疑で同園を家宅捜索。施設関係者らによる虐待の可能性もあり、慎重に捜査を進める。【三上健太郎、矢島弓枝、松倉佑輔】
捜査1課の調べでは、同園で7月10日未明、男性が個室で吐血して苦しんでいるのを、巡回中の職員が発見。病院で手術を受けた際、胃と、その下部にあって小腸とをつなぐ十二指腸から使い捨ての介助用手袋が出てきた。胃には穴が開き、十二指腸は壊死(えし)していた。
男性は昨年7月入所。知的・身体障害があり、通常は個室内で生活。食べ物以外も口に入れる行動もあったが、つかまり立ちは困難。このため、自ら手袋を取りに行くことは難しく、施設関係者が個室に持ち込んだ後に置き忘れたか、飲ませて虐待した可能性もあると判断、家宅捜索に踏み切った。
同園の説明によると、手袋は、介護士が入所者の紙おむつを交換する際に使用。男性の個室内にあるタンス(高さ1.5メートル)の上の紙箱の中に入れてあったが、男性の手は届かないという。他に手袋が個室に持ち込まれるのは原則、介護士の巡回時に限られるという。
県警は今後、押収した資料や施設関係者からの事情聴取を進めて原因を特定、施設の管理責任も追及する方針。県警には7月中旬、施設関係者とみられる人物から通報があったが、施設側からの相談や届けはなかった。
一方、県は7月中旬から下旬にかけて施設職員や入所者らに聞き取り調査を実施。8月2日、同園に対し厳重注意し、再発防止を指示した。
5日午前、横倉園長らが会見。「男性が手袋を口に入れているところを目撃した職員はいない」としたうえで、「職員約50人に聞き取り調査をしたが、虐待はないと確信している。こうしたことが起こり、管理不足と言われても仕方がない」と謝罪した。
瀬戸療護園は、1990年4月開設。社会福祉法人「瀬戸福祉会」(横倉直登理事長)が運営しており、日中の利用者が約70人、うち入所者が約50人。
警察にも“想像力”というものがないのでしょうか。こうした障害者施設で入所者に対するケアがどれだけ大変で、職員の苦労や重労働を伴うものであるか。
だからそれが全ての免罪符になると言うことを書くのではありません。しつこいと言われようと繰り返し書いてきた業過致傷罪に関することです。
今回の事故が、事故でなく万が一誰か職員がこの男性に手袋を飲ませでもしたのであれば、それは虐待行為であり傷害罪となります。そうであれば当然刑事事件として裁かれるべきで、異論を挟む余地はありません。
しかしその後に出てくる「管理責任」がひっかかります。仮にこの手袋の箱が男性の手の届くところにあったとしても、職員の目の届かないうちにこの男性が口に入れて飲み込んでしまったとしたら、それを施設側の管理不行き届きによる業過致傷罪に問うつもりなのでしょうか。
本人及び家族・後見人に対して民事的な責任を負うことになる可能性はあるとして、そこで争議があれば民事裁判となるのは仕方ないでしょう。
しかしここでこの施設を管理責任の名の下で刑事訴追するつもりなら、こんな情けないことはありません。香川県警本部長や捜査一課課長は一日でいいからこの施設で働いてみなさい、と言いたいところです。
県警に誰かが通報したとのことです。故意犯罪があったのならいわゆる内部告発であり、正当と思われますが、そうでなければ施設管理者を貶めようとする悪意に満ちた行為です。
後者で、業過致傷罪で管理者を貶めようとする目的なら、そうした貧しい心を持ったたれ込み人間のつけいる隙を与えているのも、この「業過致傷罪」の存在だと思います。
ニセ科学・医療への幻想 [その他(医療関連)]
asahi.com ニセ科学に関心、東京のフォーラムで参加者倍増
マイナスイオン、ゲルマニウム、血液型性格判断などに根拠があるのか――。科学的なようで科学的ではないニセ科学(疑似科学)の実態や、それらがはびこる背景を語る「ニセ科学フォーラム」が7日、東京の学習院中・高等科であった。
家電製品の説明や観光地の滝の宣伝などで目にする「マイナスイオン」の「効用」について京都女子大の小波秀雄教授は「マイナスイオンは滝のしぶきから発見されたが、美しい自然と重ねて癒やしや体に良いと宣伝に使われているだけで、科学的根拠に基づく証明はない」と強調した。
ニセ科学がはびこる背景を、大阪大の菊池誠教授は「人を納得させるのにさも科学っぽい言葉を用い、万能であるかのように見せている」と指摘した。小波教授は「不確かな情報が一斉に流れるネット社会の影響も大きい」と述べた。
会場には昨年の倍の約230人が集まり、ほぼ満席の盛況。主催者の一人、同志社女子大の左巻健男教授は「『発掘!あるある大事典2』の捏造(ねつぞう)や『ナントカ還元水』が話題になり、関心が高まったのでは」と話した。
ニセ科学、という言葉ぴったりですね。以前からこうした眉唾ものの科学もどきが繰り返し現れては消えて行きます。あるある大事典はこれだけ問題になる以前からかなり怪しことを取り上げているとは思っていました。
しかし一番気になるのがやはり医学やその周辺です。やはりサプリブームはどう考えてもおかしいと思って欲しいと思います。よく県別に長寿の地域を取り上げたりしますが、そこでサプリが大量摂取されているというデータを寡聞にして知りません。きちんと食事をしていれば余計なものを買ってきて飲む必要などないハズです。
もっと本丸、医学そのものも、一般ニュースに新しい医療機器や手術方法など紹介されます。報道の仕方によっては、これが万能であり、そこの病院へ行けば100%病気が治るかのような幻想を視聴者に植え付けてしまいます。
たびたび取り上げる、「医療崩壊‥」の小松秀樹氏が訴えるように、医療は不確実であり、リスクを伴うものであることの方をきちんと知って頂かないと、治るはずだった病気が治らない、これは担当医がミスをしたんだ、などと医療者に不信感を持つ患者さんが増えてしまいます。これが医療崩壊を促進している大きな原因となっています。
人間はいつか必ず死ぬ、そして医療は少しでもそれを遅らせたり、症状を和らげたりしようと努力するが、同時に危険をはらむものでもある、ということを患者さん‥国民全体に知って欲しいと思うのです。
記憶と睡眠、睡眠薬 [その他(医療関連)]
asahi.com 寝た方が覚える 米ハーバード大、単語テストで実験
記憶は睡眠によって補強されることを米ハーバード大のチームが実験で確かめ、米神経学会の年次総会で発表する。徹夜でテストに臨むより、勉強した後に眠った方がテストの成績はよくなるかも――。
18~30歳の健康な男女48人に、20ペアの単語を記憶してもらい、12時間後にペアをどれだけ覚えていられたか調べた。
朝9時に記憶後ずっと起きたままでいて夜9時にテストする「覚醒(かくせい)組」と、夜9時に記憶後眠って朝9時にテストをする「睡眠組」に分けた。さらにそれぞれの組の半数の人には記憶後に、片方だけがテスト対象とは違う20ペアの単語を見せて、記憶を妨害した。
妨害のない場合で、睡眠組の成績は覚醒組より12%ほどよかった。妨害した場合では、睡眠組の成績は覚醒組を44%も上回っていたという。
同大のジェフリー・エレンボーゲン博士は「睡眠障害があると、認知症の記憶障害などを悪化させる恐れがある」と指摘している。
受験生の頃この記事を読んでいたら、もしかしたら入試などでもう少し良い点が取れていたかも?などと考えてしまいました。
どういうメカニズムで睡眠が、睡眠前の記憶を定着させるのか興味深いところですが、試験前の日中で勉強をやめ、当日は朝まで寝ましょう、ということですね。
睡眠障害が血圧などに与える影響は以前から指摘されており、また睡眠時無呼吸症候群は、その後の生存率まで有意に低下されるということは指摘されています。いずれにしても睡眠障害は解決しておくべき疾患、ということになるでしょうね。
OTC(処方箋なしで薬店で買える薬)で「ドリエル」がヒットしていると聞きます。これは抗ヒスタミン剤の副作用を逆手に取った薬のようで、同じ成分の薬を入手したければ、医師の処方箋により「レスタミンコーワ」または「ベナ」という薬を処方してもらえれば安く手に入ります。健康保険がなくてもこの薬の薬価は6円40銭/10mg錠ですから、ドリエル2錠(希望小売価格350円)相当(50mg)のものが32円でもらえます。健康保険があれば10円ということになります。もちろん診察料・処方料・調剤料などがかかるので単純には比較できませんが、特に現在どこかの医療機関にかかっている人は、まずそこで相談すべきで、こういうOTCを買うのはあまりに無駄な出費と言えます。
価格はともかく、入眠障害、中途覚醒などのある人は、やはり医療機関でよく話をして、自分に合う睡眠薬を処方してもらった方が良いと思います。
但し、睡眠薬を使って睡眠導入した場合、本当にその前の記憶が覚醒後定着しているかどうか、これはまだデータを見たことがありません。この点がちょっと気になります。