公的病院と採算 [医療制度/行政]
読売新聞 藤枝市立病院が保険不正請求、保険医療機関取り消しへ
静岡県藤枝市の藤枝市立総合病院(病床数654)が、保険診療が認められていない一部の歯科治療で不正に保険請求していたとして、厚生労働省と静岡社会保険事務局は、健康保険法に基づき、同病院の保険医療機関の指定を10月1日から取り消す方針を固めた。
今月28日に正式決定する。地域の中核公立病院が保険医療機関の指定取り消し処分を受けるのは、極めて異例。
不正請求額は5年間で約1億2200万円に上り、病院側は「(保険制度の)勉強不足だった」と不正請求を認めている。
取り消し期間は5年だが、影響が大きいため、厚労省などは処分後に改善計画を提出させたうえで、1か月での再指定も検討している。不正分の返還などは、市外や県外の患者分も含めて藤枝市が負担することになりかねないため、市民から批判が強まりそうだ。
8月のニュースで、実際にこの病院は保険医療機関を取り消されてしまいました。
普通に考えたら、営利を追求する必要のないはずの公的病院が不正請求をする理由は見えてきません。
個人の医院であれば、医療機関は建前上営利を目的としてはならないと言いながらも、設備投資や従業員の人件費など、医院を存続するためには収益も上がらなくてはなりませんから、中には不正請求が発生してしまうというのは、その動機から理解のできないことではありません。
一方、公的病院が不正請求をしてみたところで、院長や事務長、各診療科職員の懐にその診療報酬が入る訳ではありません。公務員ですから、給与が成果主義で上がろうはずもないし、本来不正請求の動機などは見当たらないように見えます。
やはり問題視すべきは、病院にまで収支の改善、場合によっては独立採算を要求する国や自治体の姿勢でしょう。
ある公立病院では、年頭の院長の挨拶は開口一番、病院のベッド稼働率を上げろ、ということでした。きっと本庁の方からうるさく言われていたことでしょう。
年金保険料を杜撰な運営でずたずたにしているような現実もありながら、一方で本来採算より市民・県民・国民の健康をあずかる大切な公的病院に採算性を求めるのはおかしいと思って来ました。医療保険も公的なものですから、公的病院の診療報酬を上げようとすることは、同じ役所の中の、あっちの財布からこっちの財布に金を少しでも移動させよう、という下らぬ茶番に見えます。
採算度外視、とまでは言いませんが、公的病院にこれ以上独立採算や経常利益?を要求するのはやめてもらいたいものです。
いわゆる「コムスン問題」でも指摘されていましたが、そもそも福祉や医療の分野に採算性を持ち込む事自体に問題があるような気がしてなりません。
本件については、私も営利を追求する必要の無い公的病院がなにゆえに不正請求を行ったのかが気になります。
by yokohamachuo (2007-10-27 00:33)