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よくわかる?医療崩壊 2 [医療事故]

asahi.com 少ない産科医、地域で争奪

 「どこで赤ちゃんを産んだらいいんだろう……」

 昨秋、宇都宮市内の主婦(32)は4人目を妊娠した。長女は00年に市内の開業医院、03年に長男、05年に次女を市内の総合病院で出産。だが、どちらも分娩(ぶんべん)の取り扱いをやめたと知って、途方に暮れた。信頼できる医師の元で産みたかった。

 「ママ友達」の間でも市内の産科医不足は最大の関心事。主婦は「産科選びは切実な悩み。産みたくても、産む場所がない」。結局、友人の勧めで、自宅から車で10分ほどの開業医を見つけた。

 県医事厚生課によると県全体で分娩を扱う病院は13カ所、診療所は32~33カ所。このうち宇都宮を含む県東央部に、4病院、13~14診療所が集中している。

 だが、宇都宮では産科の廃止が進む。県医師会によると、今年3月現在、宇都宮産婦人科医会の登録医療機関は30カ所あるが、実際に出産できるのはわずか9カ所だ。来年度以降の医師確保が白紙のため新規受け付けを制限した病院もある。

 県が06年12月に実施した産科のある医療機関110カ所へのアンケート(回答率73・6%)では、ほぼ半数が分娩の扱いをやめていた。

 なぜ、これほど産科が減っているのか。

 開業22年の山口産婦人科医院(宇都宮市陽東8丁目)はベッド9床を抱え、年間280件近いお産を扱う。山口順理事長(59)の勤務はほぼ毎日24時間態勢。休日は知人の医師に留守番を頼む月1日のみだ。山口理事長は「体力的に限界に近い。他の開業医には正直、先にやめられたなという感じだ」と漏らす。

 激務だけではない。山口理事長は7月中旬、医院で母親学級を開き、「正常なお産ばかりではありません」「分娩監視装置の使用を巡って裁判になっているケースもあります」などと出産に危険が伴うことを説いた。

 日本産婦人科医会県支部の野口忠男支部長は、産科医不足の最大の理由に訴訟リスクが高まったことに危機感を募らす。06年2月に福島県の県立病院の医師が帝王切開の手術を巡って逮捕、起訴された。野口支部長は「お産は百%安全だと思う傾向が強まっているという背景がある」と指摘する。

 ただ、政府は膨らむ医療費を抑制しようと医師増員に消極的だ。代わりに医師をプールし、医師不足の地域へ効率的に緊急派遣する方策を始めた。

 県も県内の専門研修医への奨学金制度を始めた。産科医志望者には月額20万円を貸与。貸与期間と同じ期間、県内に勤務すれば返還を免除する「破格の待遇」(担当者)だ。しかし、今年度の利用は3人だった。

 県の担当者は「産科医不足の問題は少ないパイの奪い合い。医師が増えても『産科医』が増えるとは限らない。どうしたら問題は解決するのか……」と頭を抱える。


以前に青森の病院が診療所になったニュースをもとに“創作童話「よくわかる医療ほうかい」”を書きました。今回は私などが創作しなくても、もっと現実の地域医療崩壊が報じられています。

ニュース記事中の山口医師が述べておられる、「正常なお産ばかりではありません」「分娩監視装置の使用を巡って裁判になっているケースもあります」がことの本質を一番ついています。
分娩に限りませんが、全ての医療は危険を伴います。病院にかけこめば何でも治るということは決してありません。

特に分娩は、正常に産まれて当たり前、何かあったら産科医師のせい、と思っていないでしょうか。今のように産婦人科学が発達し、殆どの分娩を産科病医院で診るようになってから、母子のリスクが下がって来たという事実を忘れていないでしょうか。

誰でも、何か自分や家族に災難がふりかかった時、それがどんな災難であっても、誰かのせいにしたくならないでしょうか。自分のせい、或いは純然たる天災であれば何とか納得して諦めもつけようとすることになりますが、誰か人間が多少でもかかわっていれば、その人に責任を転嫁して現状復帰や賠償、謝罪を求めようとしないでしょうか。
災難に陥った人の心理としてはわかります。しかしこれに歯止めをかけない限り、医療の場合はその崩壊は止まりません。

母子いずれかでも何か不具合のあった分娩では、まずは産科医を糾弾しようとする心理がわからない訳ではありません。本当に重大な誤った医療を施したのなら別です。しかし最善を尽くした場合でも不幸な結果は免れ得なかったのだ、ということはある、ということを最後には理解して欲しいのです。理解できないのなら自宅で自力で分娩して頂くしかなくなってしまいます。


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堀口舞

医療崩壊ー地域医療の崩壊は、今国民的な関心になっていると思いますが、わたしの知人の開業医の先生が最近、このテーマで執筆されています。
この本によると、その崩壊の主な責任は、医療行政の問題にあると指摘しています。つまり、医療費など年間2200億円削減のしわ寄せを、地域の医療現場に押しつけているとのことです。
このような、一開業の方々を含めて、現場の医療関係者から様々な議論が巻き起こってくることを期待したいところです。
『医は仁術か算術か―田舎医者モノ申す』(定塚甫著・社会批評社・1500円)
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/shakai/top/80-9.htm
by 堀口舞 (2008-10-04 15:14) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

ご指摘の通り、医療費削減が医療崩壊の大きな要因となっています。もう一方の医師の刑事訴追や医療裁判の増加の方を主に取り上げて来ていますが、医療費削減が病医院経営を圧迫したり、破綻に追い込んだりしていますね。昨今では銚子市立病院の休止などという事態もありました。

慶應大の権丈先生が言われるように、医療費削減はもうやめて、財源が必要なら税の引き上げ、医療保険料の引き上げを行ってでも医療費に充てるべきだと考えます。

ご紹介頂いた著書、何とか時間を見つけて読んで見たいと思います。目次を見ると興味深い項目が並んでいますね。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2008-10-04 16:01) 

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