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作用反作用の法則 2 [生活/くらし]

神奈川新聞カナロコ オートバイでスピード違反の市バス運転手を懲戒免職/横浜

 横浜市交通局は一日、今年六月、オートバイを運転中、スピード違反で県警に摘発された市営バス運転手の職員(40)を懲戒免職とした。職員は摘発前にも四月に二回、業務で市営バスを運転中、交通事故を起こしている。制限速度五十キロの道路を五十八キロオーバーしたことも合わせ、「運転手としてあるまじき行為が続き、極めて悪質」(交通局幹部)として、異例の厳しい処分となった。

 同局によると、職員は六月二十四日午前八時五十分ごろ、旭区若葉台の若葉台営業所から帰宅途中、瀬谷区南台の道路でスピード違反の疑いで摘発された。

 職員はこのほか四月一日、十日市場駅前でバスを運転中、雨でスリップして誤ってバス停の支柱にバスを接触させ、乗客三人に打撲などの軽傷を負わせている。四月二十三日には長津田駅付近でハンドル操作を誤り、商店の軒先にバスを接触させる物損事故も起こしている。

 職員は四月二十八日、自ら同局に申し入れてバス運転の勤務から外れ、バスが故障したときの代車交換などの担当になった。それにもかかわらず、業務外とはいえ、大事故にもつながる可能性の高いスピード違反を起こしたことで、同局は「市営バスの安全・安心を揺るがす重大な信用失墜行為に該当する」などとコメントしている。同職員は一連の違反で九月五日に運転免許取り消し処分となった。


以前、作用反作用の法則と題して、経産相が東電社長を呼びつけて柏崎刈羽原発事故について厳重注意をした行為について、疑問を差し挟んだ記事を書きました。それ以前に、「医療崩壊」の小松秀樹氏が、東武線踏切事故で、当事者を解雇して切り捨てることによって、電鉄会社自身を守ろうとする姿勢を「作用反作用の法則」として取り上げた文章を引用しました。

事故が発生した時に、その原因を当事者個人に負わせ、解雇処分等の重いペナルティを課し、以て組織が事故に対して誠実に対応したかのような顔を対外的に見せることを卑怯であり正義に反すると述べておられます。大いに賛成です。

このニュース記事で取り上げた横浜市交通局の、この職員に対する懲戒免職については大いに疑問です。この職員は自ら申し出てバス乗務から外れています。そして勤務中ではないところで速度違反を摘発されたのであって、バス乗務中に危険運転をしたり警察に検挙されたのではありません。

ここで地方公務員の懲戒免職に関する部分を引用します。

(降任、免職、休職等)
第28条 職員が、左の各号の一に該当する場合においては、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
1.勤務実績が良くない場合
2.心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
3.前2号に規定する場合の外、その職に必要な適格性を欠く場合
4.職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合

おそらくこの条文の3項を以て懲戒免職の根拠としたのでしょうけれど、既にバス乗務を外れているこの職員に対しては当たらないと思われます。

勤務中以外の交通違反を以て懲戒免職の根拠とするのは、それ自体大いに疑問です。さらに横浜市交通局が、この職員が今までに起こしたバス事故を対外的に謝罪するのに「再発防止」の錦の御旗のもと、職員自身を切ったとも考えられます。

そうだとしたら市交通局は卑怯です。誰が運転しても一定の確率で起きる事故に対して、当事者を切ることによって、局自体が安全運行に取り組んでいるかのような姿勢を見せることができる訳です。職員から仕事・収入、今後の生活を奪うことによって局自体のみそぎとする。正義に反した行為ではないでしょうか。

この職員は免許停止または取消と言った行政処分、罰金の納入という刑事処分を受けます。それで十分な制裁を受けています。勤務先である市交通局からこんな仕打ちを受けるいわれはないのではないでしょうか。


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yokohamachuo

私も市バスの問題については少々取り上げておりますが、現在の市バスは再編計画やら職員の不祥事(営業所所長らの売上金横領事件)やらでしっちゃかめっちゃかになっています。
そうした折にこういう事件が発生したので、市当局も敏感に反応したのでしょうが、確かにやり過ぎのような気もしないでもありません。

しかしながら、交通法規を守ろうとしない人間を交通局の職員として置いておく事は、やはり職場規律上問題があると言わざるを得ない、と私は考えます。
ただ、懲戒免職という処分が妥当であったかどうかについては、議論の余地があるとは言えます。
by yokohamachuo (2007-12-23 01:21) 

筍ENT

ご指摘の通り、交通局にそのまま在職させることの適否には問題があるかも知れませんね。多少降格人事があっても、また局間異動をさせてでも、市の職員という身分を奪う、懲戒免職処分は不適切ではないかと思います。

それにしても横浜市バスはそんなにひどい状態でしたか。ニュースをもう少し収集してみるべきでした。そうだとすると、なおのことこうした「トカゲの尻尾切り」の動機として今回の処分を行ったとも考えられますね。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2007-12-23 18:17) 

きゅんぱち

ワタクシの実家が横浜若葉台なもんですから、寄らせてもらいました。
一枚目の写真は十日市場駅前のバスロータリーでしょうかね?

ワタクシは貨物自動車限定の運行管理資格者の資格を持ってるんですが、横浜市交通局のくだんの処遇については報道上に出てこない事実関係もありますので不用意なことは申し上げられませんけれども、筍ENT 先生には恐縮ですが、処分は不適切ではないと考えます。
そうですねぇ、比較の対象としては、たとえば市立中学校の教諭が通勤途上の電車内で女子高生に痴漢行為を3ヶ月に3回はたらき懲戒免職処分となる、というのと同じですね。
痴漢行為そのものは勤務時間外ですが、迷惑行為であるとともに教育にかかわる者がやったら教育にかかわる資格はないという判断があるわけですよね。
情状酌量の余地はないと見るでしょうな。
yokohamachuo さんもおっしゃるように、裁量的に諭旨とするかは難しいところですが、あまりに悪質なんですよね、この事故内容自体が…。
まして、運転免許停止ではなく、運転免許取り消し処分ですからね。
他にも報道されていない軽微な違反をやっているから減点累計上こういう処分なワケで、明らかに運転者不適格です。
運転手の職として採用された公務員の品位ならびに信用失墜行為にあたると考えられます。
これと同レベルの事故をまったく同じペースで起こした場合、民間運輸業では、まず解雇でしょう。
懲戒になるかどうかは、企業の信用失墜の度合いによるでしょうね。
今回のようにマスコミにリークされれば企業名が出てしまうことが十分考えられるからです。
報道内容から、直近「3ヶ月」で5件、うち、人身事故3件(全件とも業務上過失傷害)という事故発生履歴となりますと、これは悪質というよりむしろ、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であると判断できます。
非行をはたらいていながら、乗務を降りたにせよ交通局職員として給与を支給されている事自体が税金の無駄遣いとの判断から

     この職員に係る人件費が市民税納税者に説明つかない

と判断し得るところでもありますよね。
物損事故だって復旧工事代や車体修繕費が税金から拠出されているわけですし。
教員の痴漢行為と同様、情状酌量の余地はないでしょうな。
このことから、記事で御指摘のような横浜市交通局の保身というよりは、地方公務員法に則った適正な処分だと認知できます。
市民感情としても、本来市民の安全を守るべき立場の市職員のこの体たらくは、懲戒免職なくして税金の無駄遣いをやめさせるにあらず、となるのではないでしょうか?

長文にて失礼いたします。
by きゅんぱち (2009-04-29 05:28) 

筍ENT

きゅんぱちさん、ご訪問ありがとうございます。

学校の教諭の痴漢行為による免職と、元バス運転手の交通違反反復との比較、興味深いところです。

私自身はやはり懲戒免職は行き過ぎと言う意見のままなのですが、痴漢と交通違反を比べてみたいと思います。

痴漢は「故意犯」です。一方の交通違反は、多くのドライバーが表示制限
速度を守って奏功していない事実もあり、必ずしも厳しい糾弾は当たらない行為であることもあります。ただ、もちろん58km/hオーバーはとても褒めたことではありませんが、これについては、行政処分という形で制裁を受けていることになります。そして起こした事故はあくまでも「過失」であり、故意ではありません。

痴漢は同様行為を学校で、あるいは生徒に対して為したら、と言う懸念が持たれますが、交通違反は免許取消しであればなおさら、バス乗務はなく、今後バス利用者に迷惑をかける心配はゼロということになります。

従って、教員の痴漢行為に対する処分と、元バス運転手の交通違反に対する処分は同じでなくて良いと思います。

そしてもう一点、「この職員に係る人件費が市民税納税者に説明つかkない」という点、バスを降りて、別業務をきちんとこなしてもらえれば良いのではないかと思います。国家も地方も、こんなヤツのために納税していると覆うと原が立つ、というケースは多く見られます。私などは、警察署の窓口の対応を見ると、本当にいつもむかむかし、税金泥棒と言いたくなります。

いかがでしょうか‥。

コメント有り難うございます。
by 筍ENT (2009-04-29 20:39) 

きゅんぱち

あぁ~、踏んじゃいけない地雷を踏んでしまいましたぁ(苦笑)。
おっしゃるとおりで、これでは比較の対象にはならないですね。
なので、「故意」vs「過失」の比較は取り下げます。

で、結果として懲戒免職となった背景に考えられるのは、報道に載っているわけではないので想定の話になりますけど、先生のおっしゃるように、いわゆる他セクションへの配置転換をくだんの運転手に通告したところ、よほど人事担当者に「手のかかること」をしでかした可能性があるのではないか、ということですね。
すなわち、先生のおっしゃるような背景を当の運転手が理解できていなかった可能性がある、と。
そこで、たとえばこれに輪をかけて暴言癖があって反発してしまったとかですね、こういう経緯で懲戒としたということは考えられると思います。
ま、しいて申せば、報道記者はもっと事実関係を掘り下げて取材して記事にしてほしいと思うところです。

で、ここからはよもやま談義なんですがね(苦笑)、
ワタクシも運行管理資格と配車を兼任していたころ、今回の記事に挙がっているような交通違反や生活素行が悪い運転手に限って、うっかり情状酌量として甘やかしていると、次から次へとプロとして考えられないトラブルを起こすという傾向をまざまざと見せ付けられた経験があるんですよね。
そこでワタクシの権限では、扱えないということで経営者へ裁定を預け、1ヶ月猶予を与えたところ、これまた裏切られて重大事故を起こし、免許取り消しとなってしまった、と。
結局、猶予を与えても裏切られてしまうんですな。
経営者も運転手としては扱えないということで、系列の自動車販売店員として洗車係へと配置転換させたところ、これまたトラブルを頻発させたために、懲戒解雇を言い渡したというケースがありました。

先生のおっしゃることは心情的によく理解できますし、間違ってはいないのですけども、こういうどうしようもないケースって実際に存在するもんなんですね。
今回の報道ならびにブログ記事の事実関係と実際の裁定結果を見るにつけ、自分の現場での経験から直感的に推察できたことを申し上げた次第です。

ともあれ、さらに勉強を積み重ねたいと思いました。

では、失礼します。
by きゅんぱち (2009-04-30 12:53) 

筍ENT

たびたびご訪問ありがとうございます。

私が書いたことは、ご指摘の通り、報道されたニュース記事のみを元に考えたことなので、きゅんぱちさんのように、現場でかなりひどい人たちを見て来られたのと当然違って来ますよね。

懲戒免職/解雇という一番重い処分を免れても、繰り返し不適切行為が見られるようでは確かに仕方ないでしょう。

報道されていない、もっとひどい面があったのかも知れませんね。
現場から見た貴重なご意見、本当にありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。
by 筍ENT (2009-04-30 23:06) 

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