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大野病院事件:起訴状を鵜呑みにするな [医療事故]

河北新報 遺族「責任とって」 大野病院事件3月求刑・福島地裁

 福島県立大野病院(大熊町)で2004年、帝王切開中に子宮に癒着した胎盤を剥離(はくり)した判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死に問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)の第12回公判が25日、福島地裁であった。女性の夫(34)が意見陳述し、「手術に間違いはないというが、なぜ妻は死んだのか。しっかり責任を取ってほしい」と述べた。

 夫は「手術前に万全の体制で行うと説明を受け、なんて力強い先生だとすべてを託した。天国から地獄へ、の心境だった」と振り返った。女性の父(57)も意見陳述し、「ちょうどクリスマスの前で、長男が『お母さん起きて、サンタさんが来ないよ』と泣いていたのを思い出す。再発防止に努めてほしい」と切々と語った。

 25日の公判で証拠調べが終わった。論告求刑公判は3月21日の予定。弁護側は5月16日に最終弁論を行う。判決は夏以降の見込み。

 起訴状によると、加藤被告は04年12月17日、女性の帝王切開手術で胎盤と子宮の癒着を確認し剥離を開始。継続すれば大量出血すると予見できる状況になっても剥離を続け、女性を失血死させた。

この事件をもう一度取り上げます。この一方的な記事が許せず、引用しました。起訴状によると、と断りながら一方的な見解を載せています。加藤医師が極悪人で予見義務を怠り、いい加減な手術で女性患者を死に至らしめたような書き方です。

既に3月21日に検察による論告求刑もなされましたが、今回は特にこの記事の書き方が許せず1月のこのニュース記事文面を取り上げました。

起訴状の言い分を載せたなら、被告人の言い分をきちんと掲載すべきです。子宮全摘を必要とするような胎盤癒着は到底予見困難であり、子宮保存しようとした医師の手技を糾弾するのは正義ではありません。その他を含めた被告側の主張を一切載せず、こうして医師を一方的に非難するような記事を繰り返し載せるべきではありません。こんな記事を書いた記者は新聞業界の風上にもおけません。

さらに、誤解を恐れず、角を立てて書かせて頂きます。
女性の夫「しっかり責任をとってほしい」、翻訳すれば、「お前を恨んでも恨みきれない。懲役刑を受けろ、許されるならオレがお前を殺してやる」ということでしょうか。
医療は不確実なものであることを繰り返し書いて来ました。うまく行って当たり前、不幸な結果はすべて医師・医療者の責任だ。牢屋へぶち込め。
そういうことを考える人は二度と病院に来ないで下さい。医療機関は魔法の施設ではありません。私が病院勤務だったら、そういう患者さんはお断りしたいと思います。

‥と言いたいところですが、法律で医師は患者の診察要請に対する応召義務が課せられています。医師は今や非常に弱い立場にあります。こんな刑事告発や民事訴訟を続けていたら、病院医師はやがていなくなり、新聞の言う「たらい回し」はもっと日常茶飯事になり、珍しく救急病院に入院できるとニュースになるような時代になります。

それで良いのでしょうか。
前にも書きました。自分の首を絞める愚はそろそろやめませんか。


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コメント 4

yokohamachuo

この夫は「医者を悪者にすれば、死亡した患者(妻)が救われる」とでも思っているのでしょう。しかし、冷静になって考えればそれが如何に愚かな発想であるか、という事に早く気付いてもらいたいものです。少なくとも、この医師を医療の世界から”排除”すれば再発防止につながる、と思ったら大間違いです。

確かに、この記事を読む限りでは、医師は「万全な体制で治療を行う」とは言ったようですが、「絶対に手術は成功する」とは言っていないようですので、医師の過失云々を論ずるのは難しいような気もします。
by yokohamachuo (2008-04-06 06:03) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

ご指摘の通り、親族を失った悲しみを怒りのエネルギーに変えて医師を攻撃するというのが、今の医療訴訟の根幹にあるような気がします。

そして、これもご指摘の通り、医師の業務は「準委任契約」とされ、結果を約束するものではないのですが、これが患者さんにはわかってもらえていません。

判例は結果責任主義を取り、医療行為の各ステップに一つでもベストでないものが見られると、それを過失と見なす風潮がありました。これを改めない限り医療崩壊は止まらないのですが、法曹の人たちにもこれを理解してもらわなければなりません。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2008-04-07 17:48) 

ベニラン

夫には申し訳ないけど子供のためにも再婚したほうがいいと思いますね。
by ベニラン (2010-03-15 08:55) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

新たな切り口でのコメントを頂戴しました。継母であっても、子供に母親がいた方が良いということでしょうか。
その女性の人間性をよく見極めないといけないでしょうけれどね。

確かに恨みを一生胸に抱えたまま一人で子育てをし、“お前のお母さんは医者に殺されたんだ”みたいなことを吹き込まれてその子が育つのは良いこととは思えませんしね。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2010-03-15 15:26) 

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