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業/運過致死傷罪の運用 [医療事故]

asahi.com 二審は実刑判決/玖珠5人死傷事故 /大分

居眠り大分.jpg 居眠り運転で5人を死傷させたとして業務上過失致死傷罪に問われ、一審・大分地裁日田支部で禁固3年執行猶予5年の判決を受けた福岡県行橋市北泉2丁目の元トラック運転手、仲村泰男被告(52)の控訴審で、福岡高裁は18日、一審判決を破棄し、禁固1年10カ月とする判決を言い渡した。正木勝彦裁判長は「実刑を回避するほどの事情はなく、一審判決は軽きに失した」と述べた。

 一審判決は「過労状態を強いた被告の勤務会社の責任も大きく、全責任を被告に負わせるのは酷だ」としたが、正木裁判長は「被告と会社の内部問題で、被害者に責任を転嫁するのは相当ではない」と指摘。検察側の量刑不当の主張を認めた。

 判決によると、仲村被告は昨年4月5日、玖珠町の国道210号で、大型トラックを居眠りして運転し、対向してきた軽乗用車と軽トラックに衝突。軽乗用車に乗っていた男児(当時4)を死亡させ、4人に重軽傷を負わせた。

 仲村被告の弁護人は上告について、「被告と相談して決めたい」と話している。

 ◆過労運転常態化責任は

福岡高裁.jpg 福岡高裁の判決で、実刑を言い渡された仲村泰男被告が引き起こした死傷事故は、規制緩和による競争激化などで、トラック運転手の長時間労働が常態化している実態も浮き彫りにした。

 一審判決などによると、仲村被告の休日は10日間に1日の割合で、1日の休憩時間も1~2時間が3回ほど。睡眠もこの休憩時間内に細切れにしか取れない過酷なものだった。事故を起こす直前の一カ月間の拘束時間は、681時間にも達していた。

 ふだんの睡眠が5時間未満のトラックの運転手の場合、運転中に居眠りや事故寸前の体験をする確率が通常の約3倍に上っているとする厚生労働省の調査結果もある。

 一方で、大分労働局のまとめでは、県内の五つの労働基準監督署が昨年1年間、県内のトラックやタクシーなど運輸業者を対象に出した28件の行政指導の多くが、過酷な長時間労働に関する違反だったという。

 こうしたトラック運転手の長時間労働が原因とされる死傷事故は、全国で相次いでいる。06年7月には、名古屋市内の東名高速道路上り車線で、トラックが乗用車などに追突して2台が炎上し、2人が死亡した。同年11月にも、東京都大田区内の国道トンネルで、トラックが追突事故を起こして5人が死傷している。これらの事故を巡っては、運送会社と会社幹部がそれぞれ労働基準法違反容疑で書類送検されている。

 玖珠町の事件でも、仲村被告が勤務していた中津市内の運送会社と同社幹部が、違法な長時間労働をさせたとする同法違反の罪などで、中津簡裁からそれぞれ罰金30万円の略式命令を受けた。

 県トラック協会(大分市)は18日、高裁判決を受けて、県内約650の加盟事業者に対して、安全運転の徹底を呼び掛ける文書を送った。大分市内の運送会社の経営者は「5人を死傷させた結果を考えれば、今回の運転手に対する厳しい判決はやむを得ない。ただ、運転手に過酷な労働をさせた会社側の責任も、もっと明確にするべきだ」と話した。


福岡県トラック協会.jpg繰り返しこうした事例は取り上げてきました。そもそも業/運過致死傷罪そのものが過失を咎めて個人の責任を追及しようとする不毛な法律であり、廃止すべきであると言うことを繰り返し書いてきました。

しかし業/運過致死傷罪が存在してしまう現実にあっては、その運用に慎重になって欲しいものと思います。この法の運用は裁判所の判断に委ねられているとも言え、この高裁の判断は、昨今の医療事故における医師の刑事訴追の問題点などを全く無視したものと言えると思います。

現行法下では、ニュース記事に取り上げている、トラック会社の過労運転常態化責任と、ドライバー個人の責任の比率をどう考えるかが問題になると思われますが、色々な事故においてシステムエラーの改善を最も重要な事項ととらえ、個人の責任追及は謙抑的にすべきという流れが少しずつ始まっているように思います。この流れに逆行する、過失の厳罰化しか考えない不毛な判決と思います。

最終的には業/運過致死傷罪は廃止すべきです。すぐにそれができないのなら、その運用は裁判所の判断に任されています。慎重に考えて欲しいと願っています。さらに過失を問う裁判に裁判員や被告/遺族が入るとしたら、馬鹿の一つ覚えの厳罰化が声高に唱えられ、判決はひどいものになりそうで、暗澹たる気持ちになります。
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