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これが医療過誤か [医療事故]

毎日新聞 医療過誤:亀岡市立病院で 患者に290万円支払い和解 /京都

亀岡市立病院.jpg 亀岡市は27日、亀岡市立病院(上田和茂院長)で行われた市内の女性(67)の胃の手術で医療過誤があり、290万円の損害賠償金を支払うことで和解したと発表した。
 市によると、女性は昨年10月1日と12月17日の2度、同病院で内視鏡により胃の一部を切除する手術を受けたが、2度目の手術中に胃に穴が開くなどし、同18日に外科手術で胃の約3分の2を摘出した。女性側の申し出で市が府保険医協会に判定を求めたところ、「最初から外科手術すべきだった」として病院側の判断に落ち度があったとされたという。【大西康裕】


内視鏡下に胃の腫瘍を摘出する技術は比較的新しいものであり、開腹せずに、患者負担をかなり軽減できる手技です。

しかし当然胃壁に穴を開けてしまうリスクもあり、開腹手術に移行しなければならない可能性も当然あると思われます。
医師側は、少しでも患者の受ける負担を軽くしようとして、内視鏡下手術を試み、たまたま胃壁に穴が開いてしまったために開腹手術に移行しなければならなかったというケースのようです。

内視鏡胃手術.jpg胃壁に穴が開き、開腹手術の用意ができず、時間の経過とともに腹膜炎が増悪し、不幸な結果となった、という事件ならまだわからないでもありません。しかしきちんと事後の手術を行い、本来そうなるであろうと思われた開腹・胃切手術が行われたことになります。

これを訴えるのでしょうか。医師を糾弾するのでしょうか。患者自身のことを思ってこういうステップを踏んだ医師にそんなに“落ち度”があるのでしょうか。
詳細がわかりませんが、これで訴える患者さんにはとても共感できないし、訴えられた医師の心労を思うと情けなくなります。

この患者さんも、医療崩壊に手を貸したことをきちんと自覚して欲しいと思います。開腹とは言え手術がうまく行って、その上に290万円受け取れておめでとうございます。あなたの主治医の気持ちを少しでも考えたことがありますか?
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コメント 6

鶴亀松五郎

おそらく患者さんにとっては、内視鏡手術(おそらく、胃癌の手術でしょうか)だけで済んだら、体の負担も医療費の負担も少なくて済んだはずなのに、新たに開腹手術になったことで金銭的にも体力的にも余分に負担がかかったと感じて、賠償請求したのでしょう。

周囲にお金にシビアな人がいると、それが患者本人であっても、家族であっても、第三者であっても、金で解決する方向に走ります。
公立病院でも、断固として戦うところと、簡単に和解するところと、二つに分かれますね。
私が以前に勤務していた東京の国立総合病院は、断固として戦うほうでした。

余分な負担が掛かったけれど、元気に退院できたなから(仮に、お亡くなりになられたとしても)、医療者に感謝してご破算にする、と考える人なら、賠償請求なんてしません。

もちろん、医療側、特に術者のスキルに問題があったのなら、こういう結果でも仕方がないかもしれませんが。
どういう基準で、保険医協会が判定したのか、知りたいものです。

新聞には裁判で争ったとは書かれていないので、恐らく和解交渉になったのでしょう。



by 鶴亀松五郎 (2008-08-23 21:11) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

確かに保険医協会裁定の和解のようですね。
私も保険医協会にも入っています。国が医療費を削ろうとすると、断固反対の姿勢を示し、国会議員にも直接会って抗議をしたり、医師会に比べると力はなさそうなものの、医師の考えを政治にもぶつける団体と思っていました。ただ今まで医療訴訟などに関してのスタンスが保険医新聞に示されることがあまりなく、紙面でもあまり読んだ記憶がありませんでした。

今回亀岡市・市立病院側に対してこうした和解勧告?を行ったのはどういうスタンスだったのでしょうか。早期解決のために、という、医療安全の教科書にあるような考えだったのなら、ある程度理解できますが、本当に医師の立場を社会全体に示すためには極めて不適切な対応だったと考えざるを得ません。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2008-08-24 10:43) 

なかま

まったくです!患者側のマナーの問題も公でしっかり取り上げて欲しいものです。医療機関側だって、バカじゃないだろうに。お金で解決しようとする患者は、お金として見られる危険性あるんじゃなかろか。人間性もみられるだろうし、いい医療サービスが受けれる気がしない。医療が機械的では困るのは患者側なのに。お金にシビアな自分勝手な人は、患者になったって、親身になってくれるドクターを見つけにくいのものだと思います。
by なかま (2009-10-02 00:59) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

ご指摘のように最初から全て金勘定、少しでも理想から外れた医療に対しては賠償をもらおうというスタンスの患者さんにはどうしても共感できません。
もちろん患者さん自身でなく、周囲の人間、時にそそのかす弁護士(そういう弁護士があまりいないことを望みますが)などに動かされた可能性もあるでしょうけれどね。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-10-02 08:34) 

ayu15

この場合はどうかわかりませんが、訴える患者が医療崩壊させてとhsとても思えません。患者も気の毒・医師も大変だなあとおもえます。

裁判おこすのはかなりお金も気力も根気もいります。知識もないしさらに大変です。
おかしい!と思いながら裁判のハードルたかく断念して泣き寝入りの人もいます。
一方日々がんばっているのに訴訟不安かかえている医療機関も。

どちらかが悪いとは、思えないんです。
by ayu15 (2009-10-12 12:53) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

色々な医療事故があります。思うような結果が得られない手術をはじめとした治療はいつでも起きています。
故意に患者に傷害を与えようとした医療者は当然糾弾されるべきです。しかし通常それは考えられないので、ベストを尽くしたつもりが、予想外の悪い結果を来すケースがあり、それが問題になります。

本件に関しては、胃腫瘍内視鏡下切除を試み、腫瘍の形や位置、粘膜への進展から、腫瘍完全摘出(安全域を考えて取り切る)を図ったところ、胃に穴が開いたというものです。
胃に穴が開けば、それは即腹膜炎を来すことになり、開腹手術は不可避のものとなります。しかもその可能性を予期していたからこそ、すぐに開腹手術に移行したと思われます。

このケースに関しては医療者を糾弾すべき要素が見あたりません。それに対して医師有責を認めた保険医協会の考え方が理解できないということです。

もちろん色々なケースがあり、今後もそれぞれについて検討を加えて行きたいと思っています。
コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-10-12 21:08) 

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