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病気のせいではなく、救急隊・警察のせいだ [医療制度/行政]

河北新報 「搬送時に猿ぐつわされ後遺症」宮城県を提訴

石巻地区広域行政事務組合消防本部.JPG 救急隊員と警察官がインフルエンザ脳炎による発作を精神的錯乱と誤って判断し、猿ぐつわをされたことで無酸素性脳症となり、重い障害が残ったとして、東松島市の男性(28)が11日、宮城県と石巻地区広域行政事務組合(理事長・土井喜美夫石巻市長)に計約2億4400万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。

 訴えによると、男性は2006年1月28日午後、突然意識を失い、口から舌を出すなどしたため家族が119番した。救急隊員は嘔吐(おうと)したり意味不明の言葉を発したりする男性の様子を見て「自傷行為で救急搬送できない」と言い、石巻署に連絡した。

宮城県警本部.JPG 署員らは「精神科病院に運ぶ」と風呂敷のような物で男性の口に猿ぐつわをして警察車両に運んだが、心肺停止状態となったため市内の総合病院に救急車で搬送。呼吸は回復したものの、後に「インフルエンザ脳炎の疑い」と診断された。

 男性側は「救急隊員は判断ミスで、すぐに救急搬送しなかった。警察官の不必要な猿ぐつわで窒息して心肺停止となり、無酸素性脳症になった」と主張している。男性は現在も意識不明の重体。

 男性の父親(59)は提訴後、仙台市で記者会見し「警察官や救急隊員に息子は病気だと説明しても、聞く耳を持たなかった。事実と異なる報告書を作成するなど責任逃れも図った」と憤った。
 宮城県警訟務室と石巻地区広域行政事務組合消防本部は「訴状を見ていないので、コメントは差し控える」としている。


猿ぐつわ.jpg最初にこの患者さんを見たのは医師や看護師でなく、救急隊員でした。仮にこれが医師だったとしても、今まで診察して来た主治医ということでない限り、すぐ診断がついたかどうかも疑問です。

意味不明な言葉を発するのを見て、身体的疾患か、精神疾患かを適格に見極めるのは、特に救急隊員には難しかったと思います。ただ、迷ったらまずは身体的疾患を考えてすぐ病院に搬送する方が良かったのかも知れません。しかしこれを判断ミスだとして糾弾されるのは適切ではないと思います。

次に警察の処置です。布で猿ぐつわという処置、舌を噛まないようにするには致し方なかったかも知れません。どのように処置したかはわかりませんが、鼻腔まで塞がない限り、それが原因で窒息という可能性はあまりないのではないかと思います。それとも舌を奥に押し込んでしまうような状態になってしまったでしょうか。これはニュース記事からはわかりませんが。

それより心肺停止となった後の処置が問題でしょう。救命救急士でないとしても、最低限の人工呼吸や心マッサージなどは行われたのかどうか。それが適切であったのなら、救急隊にも警察にも過失はなかったと言って良いと思います。

このニュース記事でも結論は結局同じです。この患者さんの脳にダメージを与えたのはインフルエンザウィルスであって、誰かによる傷害ではありません。誰かの過失を糾弾しようというのは賛成できません。

そして搬送がたまたま適格・迅速に行われて、病院での治療の結果同じことがおきていたら、訴えられていたのは病院や医師であったかと思うと、ぞっとします。
ともかくインフルエンザウィルスを訴えることはできないから、誰かを訴えてやろう、そういう意図が見えます。

判事は毅然とした判断を示して欲しいと思います。そしてその判断を、被告が警察・消防である場合と、被告が病院・医師である場合とで単純に使い分けないでもらいたいと思います。

ただ、もし警察が報告書に虚偽を記載したというのが本当であれば、そのこと自体は糾弾されるべきことと思います。
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yoccyann

うーとうなりたいような。
このところ、順序立てて考えたら何が理不尽で何がそうでないかわかるようなことが、変に捻じ曲げられて論争を生んでますね。

書類の書き換えと、現場の処置間違いは別件だし同列に考えるわけにはいきません。
以前の喫煙者も被害者のところでも思いましたが、社会的責任があることを個人の責任にすり替えることも頻発していますね。
目立って来たのは介護保険導入あたりからでしょうか。

でもね、こういう話をすると、「それはちがう」と、嵩にかかってつばを散らしてまで力説する類の人が増えてきました。話がねじれている。
そーゆーレベルの話?
話題の程度と、怒りや執着するレベルの明らかな差って何だろう。
「とっても」美味しいね、」などと用いれば済んだ程度の物事を、超すごい(やばい)などとエスカレートしてきた言葉の使い方とも無縁ではない気がします。わかりにくくてすみません。
by yoccyann (2008-09-04 16:57) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

医療事故でも、交通やその他の事故でも、結果責任主義に走ったり、過失を為した「加害者」に重い刑事罰を与えようとする人たち、それがyoccyann先生のご指摘の人たちなのかも知れないと思います。

福岡の飲酒追突事故で3人の児童を溺死させてしまった事件、あちこちのブログで、「絶対に許せない」「死刑だ」などと言葉を極めて非難する記事を見て、私は恐怖を覚えていました。こういう人たちは本当に怖いです。

そしてそういう人たちが実はモンスターペアレント・モンスターペイシェントの予備軍だったりするのでしょうか。

もしかして「反社会性パーソナリティ障碍」でしょうか?

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2008-09-04 23:53) 

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