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図書館の滅亡 [生活/くらし]

asahi.com 住基カード「一本化」決裁 説明は一切なし /岐阜

高山市役所.jpg 今月から図書利用機能を組み入れた住民基本台帳(住基)カードの発行を始めた高山市が、住基カードに「一本化」していくため、従来の図書館利用カードの新たな発行は行わない方針を、市の幹部会で決めていたことが17日わかった。図書館窓口でも市の方針に従った対応を始めており、住基カードの所持を事実上、強制するものだと反発する声も上がっている。

 方針を決めたのは、市長、2人の副市長、教育長らをメンバーに1月に開かれた「政策調整会議」と呼ばれる幹部会。この時の論議を踏まえ、「図書利用カードは原則、住基カードとする」と「一本化の促進」を明記した文書が4月21日に市長決裁を受け、市の方針として確定している。
 住基カードに図書利用機能を加える条例は6月議会で可決された。ところが、市側は一本化の方針を明らかにしておらず、条例に賛成した議員も「(従来のカードとの)選択はできると理解していた。住基カードに一本化されるとは聞いていない」と話す。
高山市立図書館.jpg 図書館窓口では、図書カードの新規発行や再発行を求める市民に住基カード取得を促し、「住基カードがない場合は、図書貸し出しのたびに申込書に書いて利用していただく」などと説明してきた。
 住基カードを持たない図書館利用者には「不便」を強いることになるが、国島芳明副市長は朝日新聞の取材に「あくまでも住基カードを持っていただきたいとお願いしている。強制ではない」と話す。
 この問題では、「図書カードが住基カードに替わる」と記載された町会向け回覧文書が明るみに出て、市の所管課長は「誤解を与える表現だった。切り替えは強制ではない」などとしていた。
 一本化の方針を議会などで示さなかったことについて、担当部長は「住基カードを普及したいという市の考えは説明してきたので、改めて説明する必要もないと判断した。説明不足の面もあり、今後は、住基カードが絶対に嫌だという人がいれば、従来のカードも発行できるように見直したい」などと話した。
高山住基カード.jpg 条例に賛成した議員は「賛成したのは(個々の市民が)便利だと思えば住基カードを選べばいいと考えたからだ。図書カードを選べないとなると話は別だ」と話している。
 県内では、大垣市が図書利用機能を住基カードに付加しているが、「住基カードの選択は自由」として併用制を続けている。住基カードの普及率は上がっていないが、同市の図書館職員は「たくさんの人に自由に利用してもらうのが図書館の役割。住基カードを持たない市民に制限があってはならないというのが考えの基本」と話している。

 《解説》市民の選択権や利便性を、高山市は真剣に考えてきただろうか。
 第1の疑問は、住基カードを持たない図書館利用者に対し、新たな図書カードを発行しない方針を4月に決めながら、6月議会の場で明らかにしなかったのはなぜなのか。
 住基カードしか選べなくなるということの重みを認識していないとしか考えられない。言い換えれば、何かを強制することへの慎重な配慮に欠けるということだ。
 第2の疑問は、住基カードを持つことの利便性を、市民の立場、図書館利用者の立場から考えようとした市の職員がいたかどうか。
 総務省の方針を受け、どの自治体も、住基カードを普及させたいという考えは持っている。一方で、今回話を聞いた併用選択制の大垣市などでは、図書館側から、利用者にとっての利便性に配慮してほしいという声があがり、そのうえで結論を出している。
 ところが、高山市では「住基カードの普及」が大前提になっており、図書館側、利用者側からの視点から是非を検討した経緯がまるでない。
 高山市の公立図書館は指定管理者制を取っており、ある関係者は「指定管理者は市の方針に従うしかない」などと話している。
 住基カードが普及しないことにはわけがある。持つ利便性がみえないことに加え、落とす不安もある。市はまず図書館を利用している人の声を聞くべきだ。その上で選択制か一本化か、市の方針を決めればいい。(中沢一議)


文京区図書館利用カード.jpg図書館が重大な危機にさらされていることを認識すべきです。
国立・各自治体立を問わず、全ての図書館では、「図書館の自由に関する宣言」を掲げ、図書館自身と利用者について守るべきことを挙げて来ました。
その中から、利用者のプライバシーに関する部分を引用します。

図書館の自由に関する宣言 日本図書館協会

第3 図書館は利用者の秘密を守る
1. 読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。
2. 図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない。
3. 利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。


こうした考え方に基づけば、図書館の貸出券と住基カードを一体化するなどということはとんでもない行為です。高山市の市民一人ひとりがどんな本を借りたか、どんなCDを借りたか、全ての情報が権力に握られることになってしまいます。
実に第二次大戦以前の世の中に戻ってしまったのかと思ってしまいます。
マルクス主義についての書籍を多く借りた人と、中曽根康弘や小沢一郎らの著書を読みあさった人に、将来どんな処遇の差が発生してくるか、考えただけでぞっとします。

大分を皮切りに教員採用に際しての不正問題が表沙汰になって来ました。こうして報道されるだけまだマシです。そのうち、図書館での借出し書籍、おさいふ携帯で書店で買った書籍のタイトルが全て国と自治体に情報として蓄積される日が来ます。そしてその本の種類によって、警察官はもとより、教員、そして全ての公務員の採用試験に大いにバイアスがかかることになることが予想されます。

さて、図書館もこの「‥自由に関する宣言」を根拠に、利用者のプライバシーを外に出さないようにしようと考えても、本ニュース記事にあるように、図書館の管理者が自治体に逆らえないようなシステムになっていれば、この宣言は骨抜きになってしまいます。都内の図書館のように、多くの館がアウトソーシングに踏み切っていたりしたら、どうしようもありません。

日本は権力に個人情報を握られることに対してあまりに寛容で無関心が過ぎます。
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