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司法解剖の問題点 [医療制度/行政]

時事通信 司法解剖「理解」2割弱=「説明なし」、怒りや悲しみ助長-遺族対応改善へ・東大

東大法医学教室.jpg 犯罪などで死亡した人の司法解剖について、内容や手続きを理解して臨んだ遺族は2割弱にとどまることが、東大法医学教室の遺族調査で分かった。解剖理由の説明がなかったとの声が多く、解剖で怒りや悲しみが強くなった人が4割に上った。
 都内で開かれた日本賠償科学会の研究会で6日、発表した。同教室は、司法解剖の意義や流れを説明するパンフレットを作成。希望する遺族には、捜査に差し支えない範囲で解剖した医師が結果を説明する方針を決めた。
 同教室は今年2月から11月にかけて、全国で司法解剖の対象となった人の遺族に調査票を送付、126人が回答した。解剖前の説明で「十分納得・理解できた」人は18.7%で、約7割は「よく分からない」「納得いかない」ままだった。
 解剖後、死因の説明は「警察官から」が最多の65.2%で、解剖した執刀医からは13.0%。8割以上の人が「執刀医から説明を受けたい」と考えていた。詳細な解剖結果は約6割がその後も知らされておらず、解剖を行ったことで怒りや悲しみが強くなった人は41.9%、和らいだ人は10.3%だった。
 自由記述では「説明じゃなく強制」「解剖する理由を説明してほしかった」と納得できない心情の記載が目立ち、「(解剖は)遺族に精神的にも経済的にもさらなる打撃を与え、被害回復を遅らせる」との記述もあった。
 一方、「原因を究明し加害者に責任を取ってもらえた」「死因を明確にできた」との声もあった。


法医解剖室.jpg学生の時に解剖学実習を経験し、また臨床医になっても、受持患者の病理解剖に立ち会ったりしていて、医師は病理学・法医学・解剖学教室所属でなくても、解剖に対する抵抗は特にないものと思われます。

一方で遺族側の解剖に対する心情がこのように調査された結果を知るのは初めてでした。貴重な聞き取り調査だと思います。
医療事故に限らず、警察が事件性を認めた場合には、遺族の同意を要しない司法解剖が行われることがありますが、やはり遺族に対する説明は必要だろうと思います。しかし司法解剖にあっては、捜査上の秘密ということで、解剖結果が十分に知らされないということが以前から言われています。

遺族・被害者を法廷に入れ、検察と一緒に加害者に尋問や求刑を行わせようとする制度を推進している一方で、解剖結果を遺族に知らせないというのは矛盾を感じます。
また一方で医療事故で刑事訴追を前提に司法解剖が行われた場合、その結果は医療者側にも知らされません。本来その解剖結果は事故の原因として重要な情報を持つのに、これが捜査上の秘密を理由に公開されないために、事故の再発に資するべき貴重な所見が、一番それを知りたい臨床医に知らされないことになってしまいます。

必要なら法改正を行ってでも、こうした矛盾を解消して欲しいものと考えています。
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コメント 4

ラジオネームFAM

拙ブログに関心を持っていただきありがとうございます。
今まで、司法解剖のあと遺族の方に説明などがあるのかと思っていましたが、現実はそうではないのですね。
死因を探るため、あちこちまさぐられた上で、説明などがないなんて合点がいかないですよね。それも、「死亡届」上の死亡であれば棺桶に入れてから、遺族(ご家族)側の好意で「(死に)顔を見てやってください」と言えるのではあるが、「死亡検案書」上の死亡であれば、死因を探求するため、顔など本人の象徴となるべきところを探っている可能性や、その他みにくい状態になっているため「見てやってください」とは言えないのですね。
今年から裁判員制度が始まりますが、被害者側・検察側と被告人・弁護人側の立場それぞれの言い分を聞いての裁定が一般人にもゆだねられる事態が出てきた以上、考えさせられますね。(乱筆・乱文スミマセン)
by ラジオネームFAM (2009-03-20 22:57) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

遺族の立場からも司法解剖にはかなり不満が残ると思います。

記事にはあまり取り上げませんでしたが、もう一つ不安な点があります。他の記事で取り上げたのですが、警察や刑務所などでの「異状死」が時々報道されます。また精神発達遅滞者を取り押さえて死亡した事例が佐賀でありました。
こうしたケースの司法解剖結果につき、警察の権限で隠蔽がなされる限り、警察による過失や犯罪は永遠に隠しおおされることになってしまいます。

司法解剖の結果を警察だけのものとすべきではありません。遺族はもとより公正に公開すべきと考えます。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-03-21 16:48) 

カケル

私のおじも司法解剖に回されました。最初は死因不詳とされていましたが火葬許可が降りず、訂正されましたが死後推定一年から二年位とされましたが実際のところは判りませんとの回答なのになぜなんだろう?警察に聞いたらおじは失踪しており、その直後も含みますとの回答なのに数ヵ月の部分は記載されない事態になり、それを基に死亡日が確定してしまい保険の手続ができない始末。警察に解剖医の話を聞いた上で矛盾があれば検案書の事後訂正手続をしてもらおうとしたのですが捜査上の機密と言うことで却下されました。遺族に口頭では言えるけど文章では言えないといわれました。やはりこんな制度はおかしいと言わざるを得ません確かに法改正すべきですね!
by カケル (2010-11-02 08:29) 

筍ENT

カケルさんご訪問ありがとうございます。

ご親族の貴重な一例をご紹介頂きました。そういう事例もあり得るんですね。
司法解剖そのものはすべきだったとして、その結果について遺族に十分な情報提供が行われるべきですよね。

一般的な遺族や医療者から見た問題点のみを取り上げていましたが、カケルさんのような事例もあるということを知りました。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2010-11-02 08:38) 

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