受刑者の人権~杜撰な健康管理 [医療制度/行政]
毎日新聞 <受刑者>がん発見できず70代男性死亡 山口刑務所
山口刑務所は21日、70代の男性受刑者が胃がんのため搬送先の病院で死亡したと発表した。男性は昨年12月から腹痛を訴え、外部の病院と所内の医師が2回診察したが、がんと診断されていなかった。刑務所側は「過失はなかったが、病気を早く見抜けなかったことについては問題点を検討したい」と釈明した。
刑務所によると、男性は19日朝から「何とかならんのか」などと大声を出し続け、保護室に移された。午後4時20分ごろ、刑務官の呼び掛けへの反応がないため病院に搬送。約4時間後に死亡した。司法解剖で、死因は胃がんによる貧血から引き起こされた急性心機能不全とされた。
男性は08年6月に入所。12月上旬、入浴中に立ち上がれなくなったため、県内の病院を受診したが「一過性の脳虚血発作」と診断された。男性は同月下旬に2回腹痛を訴えたが、所内の医師は「胃かいよう」と診断し、消化剤と鎮痛剤を出した。今月15日には外部の検査機関に血液検査を依頼したが、結果は「問題なし」だったという。同刑務所の北野正孝総務部長は「やれることはやった」と話している。【藤沢美由紀】
これまでも受刑者の人権について何回か取り上げて来ました。ひどかった例では大阪刑務所など、「予算がない」という理由で受刑者の居場所には空調がなく、夏は過酷な環境に置かれているというものもありました。
さて、胃癌の診断に至らなかった今回の不幸な事例。いくつかの要素が重なっていると思います。受刑者でなければもっと早期に発見されて、根治に至らなかったとしても、もっと天寿を全う出来た可能性があると思われます。
08年12月の「立ち上がれなくなった」という症状でせっかく所外の病院を受診するチャンスがありましたが、この症状だけでは普通脳神経外科や神経内科等の診察となり、胃癌を念頭におくことは通常考えられません。
その後の腹痛に対する措置が少し残念で、この時胃カメラを実施出来ていれば、当然胃癌の発見につながったはずです。その後血液検査を施行していますが、癌を積極的に疑っているのでない限り腫瘍マーカーなども調べていないでしょう。
本来何も消化器症状がなくても年2回受けろと推奨される胃カメラですが、受刑者にそのチャンスは与えられていないのではないかと思います。きっと刑務所内の診療室にも胃カメラはないでしょう。空調を整備する予算もない刑務所がファイバースコープシステムを購入しているとはとても思えません。
こう考えてくると、この不幸な事例の発生の最大の原因はやはり刑務所の「予算がない」ための、受刑者の健康管理の杜撰さです。刑務所の総務部長の「やれることはやった」という発言、この人のポストで出来たことは確かにやったでしょう。でも、受刑者の健康管理やそれ以外の処遇についてもかなりひどい状況であることの一例とも言える訳です。
誰かを業過致死罪で告発せよと言っているのではありません。いつも主張しているように誰かを有罪にしたててみても何もならないのはこの事例でも同じです。
受刑者の人権をもっときちんと守り、健康管理に予算を割くべきです。受刑者であるからそれをないがしろにしてよいという理屈はありません。刑は懲役や禁固そのものであり、さらに「健診不実施刑」や「劣悪環境刑」を勝手に付加してはならないと思います。
山口刑務所は21日、70代の男性受刑者が胃がんのため搬送先の病院で死亡したと発表した。男性は昨年12月から腹痛を訴え、外部の病院と所内の医師が2回診察したが、がんと診断されていなかった。刑務所側は「過失はなかったが、病気を早く見抜けなかったことについては問題点を検討したい」と釈明した。
刑務所によると、男性は19日朝から「何とかならんのか」などと大声を出し続け、保護室に移された。午後4時20分ごろ、刑務官の呼び掛けへの反応がないため病院に搬送。約4時間後に死亡した。司法解剖で、死因は胃がんによる貧血から引き起こされた急性心機能不全とされた。
男性は08年6月に入所。12月上旬、入浴中に立ち上がれなくなったため、県内の病院を受診したが「一過性の脳虚血発作」と診断された。男性は同月下旬に2回腹痛を訴えたが、所内の医師は「胃かいよう」と診断し、消化剤と鎮痛剤を出した。今月15日には外部の検査機関に血液検査を依頼したが、結果は「問題なし」だったという。同刑務所の北野正孝総務部長は「やれることはやった」と話している。【藤沢美由紀】
これまでも受刑者の人権について何回か取り上げて来ました。ひどかった例では大阪刑務所など、「予算がない」という理由で受刑者の居場所には空調がなく、夏は過酷な環境に置かれているというものもありました。
さて、胃癌の診断に至らなかった今回の不幸な事例。いくつかの要素が重なっていると思います。受刑者でなければもっと早期に発見されて、根治に至らなかったとしても、もっと天寿を全う出来た可能性があると思われます。
08年12月の「立ち上がれなくなった」という症状でせっかく所外の病院を受診するチャンスがありましたが、この症状だけでは普通脳神経外科や神経内科等の診察となり、胃癌を念頭におくことは通常考えられません。
その後の腹痛に対する措置が少し残念で、この時胃カメラを実施出来ていれば、当然胃癌の発見につながったはずです。その後血液検査を施行していますが、癌を積極的に疑っているのでない限り腫瘍マーカーなども調べていないでしょう。
本来何も消化器症状がなくても年2回受けろと推奨される胃カメラですが、受刑者にそのチャンスは与えられていないのではないかと思います。きっと刑務所内の診療室にも胃カメラはないでしょう。空調を整備する予算もない刑務所がファイバースコープシステムを購入しているとはとても思えません。
こう考えてくると、この不幸な事例の発生の最大の原因はやはり刑務所の「予算がない」ための、受刑者の健康管理の杜撰さです。刑務所の総務部長の「やれることはやった」という発言、この人のポストで出来たことは確かにやったでしょう。でも、受刑者の健康管理やそれ以外の処遇についてもかなりひどい状況であることの一例とも言える訳です。
誰かを業過致死罪で告発せよと言っているのではありません。いつも主張しているように誰かを有罪にしたててみても何もならないのはこの事例でも同じです。
受刑者の人権をもっときちんと守り、健康管理に予算を割くべきです。受刑者であるからそれをないがしろにしてよいという理屈はありません。刑は懲役や禁固そのものであり、さらに「健診不実施刑」や「劣悪環境刑」を勝手に付加してはならないと思います。
コメント 0