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新型インフルエンザ騒動~どちらが「悪質」だ [医療制度/行政]

共同通信 発熱の診察拒否、全国調査へ 厚労省、悪質なら指導も

新型インフルエンザウィルス.jpg 新型インフルエンザ発生国への渡航歴がないなど感染の恐れが少ないにもかかわらず、発熱などの症状で病院を訪れた人が診察を断られるケースが相次ぎ、厚生労働省は5日「単なる診察拒否なら重大な問題だ」として、全国の実態把握に乗り出すことを決めた。

 東京都はこれまでに92件を確認。厚労省は、悪質なケースで医療機関名が把握できれば、都道府県を通じた個別指導などを検討する方針。

 厚労省結核感染症課は「『感染の疑いがあれば発熱外来に誘導する』という国内発生後の対応を前倒ししているのか確認が必要」とする一方「現段階でのこうした対応は常識的に考えられない」と不快感を示している。

 東京都では、発熱相談センターに相談の電話が寄せられたことで判明。同様の例は今月2日から5日正午までで92件に上り大学病院が診察を断ったケースもあった。

 診察を拒否されたりセンターに相談するよう言われたりした人が大半だが、「成田空港に勤務」「友人が外国人」と話した途端、診察を拒まれた人も。センターの電話相談で一般病院に行くよう勧められたのに、実際に行くと、そこで拒否された例もあった。


厚労省結核感染症課.jpg厚労省の居丈高な姿勢に疑問を持ちます。
新型インフルエンザについては、情報が錯綜し、一定の情報は流れているものの、医療現場が慎重になるのは当然のことと思います。

かつてSARSが発生し恐れられていた時、一般の医療機関では、医師会等の配布したポスターを医療機関の外に掲示し、SARSを思わせる症状を持つ患者さんが医療機関に立ち入らないよう案内しました。これは、もしSARSの患者さんが院内に立ち入った時には、その後医師やスタッフ、そして待合室にいた他の患者さんも全て一定期間隔離されなければならなくなり、医療機関自体がストップしてしまうからでした。

今回はウィルス自体は弱毒とされており、また抗ウィルス剤も奏功するとされ、また海外からの流入は水際で防いでいるということになっているので、一般医療機関ではよほどの疑い症例でない限り診察せよ、ということのようですね。

それはそれで良いのですが、そうした的確な情報をきちんと医療機関に伝達し、ガイドラインを作成するなど、そちらが大切でしょう。それをなおざりにして、診察を拒否した医療機関に対して「不快感」を示したり、「悪質」な医療機関を個別指導するなどと言い出すのを見ると、それこそ厚労省に対して「不快感」を覚えます。きちんとした情報提供を行わない同省の方が「悪質」です。
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Oscar

国内で患者が発生したときわが病院では診察することになっているのですが、当初は病院の外で診察することになっています。肺炎チェックのためにレントゲン撮影が必要とのことです。ところが、

技師長が、「『災害』ってどこかが言ってくれないと、放射線管理区域外のテントでレントゲン撮りにくいんですけれど」、と。なるほど。地震ならともかく、こういう風にじわじわ始まるものは線引が大変。結局保健所から「良識にお任せします」みたいな玉虫色の返事をもらいました。

で、結局保健所と連絡をとればとるほど、「医療機関にお任せします。責任は全部そっちで。」みたいな対応が多くなり、院長は「今後保健所との電話に関しては録音しようか。」
全通話録音できる機械が無いので残念ながらできないのですが…。
by Oscar (2009-05-06 20:29) 

筍ENT

現場からの貴重なご報告、ありがとうございます。

厚労省のいい加減で、責任を医療機関に押しつけておいて、なおかつ非難しようという態度が見えて来ましたね。
もちろん保健所は各都道府県の管轄で厚労省の出先ではありませんが、厚労省の指示に従って都道府県は動いているはずで、お話のようないい加減な態度は、そのまま厚労省の姿勢を現していると言ってもよいですね。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-05-07 01:40) 

Quri

このニュースにある厚生省の姿勢はひどい、と私も感じていました。まさに先生のご指摘通りと思います。

 あまりにも単純な比喩なのでわざわざ言うのもはばかられますが、私はよくイソップ物語の北風と太陽の話をします。この話にあるように、能力に欠ける人がマネージメントすると何に対しても「禁止」「罰則」から入ってしまうものです。先生がよく指摘される飲酒運転撲滅に対する取り組みにしても、過失や事故の再発防止のための方策にしても、同じ図式と言えるでしょう。生き物としての人間の特性、すなわち人は何を恐れ、何のために頑張り、何を大切にするものか、権力ある立場の方はイソップ物語から勉強しなおして欲しいものです。

 ほとんどの医療機関はインフルエンザ対策と感染拡大防止に貢献的な立場であると思います。その医療機関に対して必要な情報を提供したり、いち早く対応マニュアルを策定したりせずに、まず指導や処罰に言及するようでは救いようがありません。社会的使命のためにリスクを採った医療機関で感染が確認され、その医療機関に営業的ダメージがあった時に手厚く救済する政策を発表するなど、たまには北風ではなく太陽へ発想転換する事。それだけで厚生行政はかなり良くなると考えます。

by Quri (2009-05-07 12:57) 

筍ENT

Quri先生、ご訪問ありがとうございます。

先生の視点、大いに参考になります。マネージメント能力欠如者による「禁止」「罰則」による締め付け、その通りの図式ですね。
まあ、役所に太陽になれと言っても難しそうですが、今回の北風ぶりはひどいものです。
今回のウィルスはまだ弱毒ということで良いのでしょうけれど、SARS時同様、医療機関の被った迷惑に手厚く、という行政を大いに期待したいですね。役人どもや石原を思い浮かべると、その実現には悲観的になってしまうのですが‥。
Quri先生のような方に厚生相をやって頂きたいものです。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-05-07 15:16) 

まー

確かに保健所から指定病院でもないのに発熱外来の設置を依頼されました。
相談センターからきちんした設備のない病院へ紹介するためにはマニュアルが必要だと思います。
そういったものの提示もなくただ、外来を設置するのは危険です。
新型の疑いがかなり低いひとが受診するのでしょうが、感染症に関する
設備、知識が低い場所での診療はいかがかとも思えます。
こんな状態では致死率が高い感染症の場合、パンデミックが起きたら
日本は大パニックではないでしょうか。
正しい情報伝達が大事だということを厚労省もしっかりと実践してほしいです。
by まー (2009-05-07 15:24) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

ご指摘の通り、何でもいいから発熱外来をやれ、というのは本当に乱暴な話ですね。

今回の新型インフルエンザでは、一定の条件に当てはまる人はまず保健所に電話するよう患者に案内するポスターが既に医師会から配布されています。

ヒステリックな文系大臣や役人に医療の現場をかき回されるのはたまりません。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-05-07 22:21) 

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