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航空機事故のヒヤリ・ハット [医療事故]

TBSラジオ「森本毅郎スタンバイ!ニュース・ズームアップ」 航空機トラブル半年で325件

去年10月から今年3月までの半年間に、事故にはならなかったものの安全に影響を与えかねない航空機のトラブルが325件あったことが国土交通省のまとめで分かった。こうしたトラブルの例を国土交通省が公表するのは初めてのこと。



このニュース記事はTBSラジオのこの番組のHPから引用しました。オンライン新聞各紙では取り上げられていないようでした。関心がないのでしょうか。新聞各紙はやはり、航空機事故はひたすら「あってはならないこと」事故が起きたらともかく操縦士と航空会社の業過致死傷を追及し、誰かを有罪に仕立て上げることにしか興味がないのでしょうか。

証拠隠滅罪と言う罪があります。他人の刑事被告事件に関する証拠を隠滅して捜査を妨害する犯罪行為のことです。自分が犯した事件についての証拠を隠滅することは、この罪には含まれません。何人も自分を不利な状況に置くことを自ら行うことが期待されないからです。

航空機事故のヒヤリ・ハットをこうしてオープンにしたことは大変意味があります。実際の事故に繋がっていなければ、さすがに業過致死傷罪には問われないものの、今の日本の風潮によれば、当然社内処分の可能性があった訳です。
これを報告者の不利にならないと約束の上、会社に報告させる。これは大変意義のあることです。

神戸電鉄、京王電鉄のそれぞれヒヤリハット/事故を先にも取り上げました。鉄道ではこうしたヒヤリハット報告=インシデントレポートはどのように取り扱われているか情報がないので、興味を持ちました。

医療機関も同様なことが行われています。患者さんに結果的に不利益を与えなかったもの、多少の不利益を与えたが、治療上問題にならないもの、不利益を与えて入院期間が延びたもの‥などに分けて病院の医療安全管理者に報告します。報告したことによってその人を問責し制裁を加えることはしません。
もし制裁があれば、殆どの病院職員はヒヤリ・ハットを隠蔽し、病院全体のリスクマネジメントは全く進歩しません。

これは本来患者さんに重大な不利益を与えた場合でも同様にすべきです。個人としての医療者を攻撃することは、同じ事故の再発予防に何の役にも立ちません。

たびたび引用する小松秀樹氏「医療の限界」に、航空機事故に関する話題が取り上げられています。

 97年、香港発名古屋行きの日本航空機が乱高下し、客室乗務員が1名死亡、他に13名が重軽傷を負いました。事故調査委員会はパイロットのマニュアル違反の可能性が高いと報告しました。検察はこの報告書をもとに、機長を起訴しました。名古屋地裁もこの報告書を証拠採用しました。ICAO(国際民間航空)条約は、十分な調査を行って将来に航空運輸の安全を図るために、航空機事故調査委員会の調査結果を、責任追及に用いないと規定しています(実は抜け道の規定もあります)。これは、将来の航空機の安全が、責任追及より重要だと判断しているからに他なりません。この裁判に対し、世界中のパイロットが抗議しました。日本国内で事故があっても、世界のパイロットは調査に協力せず、事故調査そのものが成立しなくなると危惧されました。
 (中略)この事件では一、二審で機長は無罪になりました。07年1月23日、名古屋高検は上告しないと発表しました。私は名古屋高検の判断を高く評価します。これは、日本の検察が、過失犯罪として処理されてきた事件の適切な扱いについて、本格的に考え始めたためだと思っています。システム事故を個人の罪として処理することは将来の安全を損ねます。また、正義から程遠いやり方です。

航空機・医療に限らず、個人の罪を追及することは、事故の再発防止に寄与しません。私は業過致死傷罪そのものの存在に引き続き疑問を持ち続けています。
業過致死傷罪の存在、またその厳罰化は事件の隠蔽を招きます。一方、刑事立件されると、経緯や情報は現場にフィードバックされることもなくなってしまいます。システム事故における個人の糾弾は事故の再発予防を妨げます。決してやってはいけないことです。


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