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「信頼の原則」 [医療事故]

河北新報 「カテーテルに欠陥」 遺族、岩手県と米メーカー提訴

 岩手県立北上病院(北上市)で2004年に狭心症治療手術を受けた同市の男性=当時(44)=が死亡したのは、医療機器カテーテルの欠陥と担当医師の過失が原因として、男性の遺族が4日までに、米国の医療機器メーカー「ボストン・サイエンティフィックコーポレーション」と県に、計約9000万円の損害賠償を求める訴えを盛岡地裁に起こした。

 訴えによると、男性は04年7月、北上病院でカテーテルを使った心臓手術を受けた。風船状のバルーンが左冠動脈近くの血管中で膨らんだままの状態になり、血流が妨げられ、男性は急性心筋梗塞(こうそく)で3日後に死亡した。

 遺族側は、ボストン社製のカテーテルでは、バルーンが膨らんだままになる同様の欠陥が原因で死亡事故などが起き、06年7月にはリコールの対象になった、と指摘。「カテーテルの欠陥が原因なのは明らか。医師は欠陥で起きた事態に適切な処置を執らなかった」と主張している。

 ボストン社の日本法人は4日、「手術で使われた製品はリコールの対象ではなかった。裁判で主張、立証を尽くす」との談話を発表した。県医療局は「訴状の内容を検討し、対応を考えたい」と話している。

信頼の原則という考え方があります。特に医療では、専門分化とともに、各医療職の業務分担が決まっています。
例えば手術室において、電気メスの接続方法が間違っていて、術野で漏電したり過電流のせいで熱傷が発生したりした時に、電気メスを使った医師ではなく、準備をした看護師の責任のみを問う、という事例があります。

この事件ではふくらませたバルーンを萎ませることができず、そのために患者さんに心筋梗塞を起こしてしまったという不幸な事故です。訴えの相手を県とカテーテルメーカーとしていますが、今回病院には不法行為はないと思います。

上記の信頼の原則を考えると、膨らませたカテーテルのバルーンが萎まないという事態は、医療者からすると想定外です。医師は適切な処置を執らなかったとありますが、どうすることもできなかったと思います。
バルーンを膨らませたままカテーテルを引き抜こうとすれば、カテーテルがちぎれるか、バルーンが血管を破裂させていたことが予想されます。

遺族や弁護士の人に医学的な考察を求めるのは難しいとは思いますが、今回の訴訟の相手はあくまでもカテーテルメーカーとすべきだったのではないかと考えます。

医療機器の想定外の故障で、医療者が対処しきれないものまで過失と考えないで頂きたいと思うのです。


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コメント 4

majubijou

こんばんはあ

やはり根本的なところを捜査してほしいと
CBさんの記事を読むたびにそう思い、
願います。
身近にかかわった人に非があると
決め付けることがないよう、
普通のわたしが考えることができるのに、
難しい問題になってしまうんですね・・・悲
by majubijou (2007-11-17 00:50) 

筍ENT

コメントありがとうございます。
「信頼の原則」というのは、医療事故関係リスクマネジメントの教科書でも読まないと出て来ない言葉なので、ちょっとわかりにくかったかも知れませんね。

例えば医師が処方箋を書いて、薬剤部から薬が病棟に上がって来て、それを患者に飲ませたところ、処方箋と違う薬であったために患者に健康被害が発生したとします。
この時、処方箋に誤りがあれば、これは医師の責任、処方箋は正しかったのに、違う薬を払い出したらその薬剤師の責任であり、医師は責任を問われない、という考え方です。
他にも手術室で正しい使い方をした電気メスがショートして発火、事故に到ったケースで、手術を行う医師の責任は問わず、電気メスを誤接続した看護師の責任を問うたというケースもあります。

これが「信頼の原則」と呼ばれるものですが、患者さんから見れば、病院全体の責任には変わりない訳です。

一方取り上げたニュース記事の過失はあくまでもカテーテルメーカーにあり、病院の中には責任を問われるべき人はいないのではないか、いうのが私の意見です。

わかりにくかったらすみません。
by 筍ENT (2007-11-17 16:42) 

正義

今年になってボストン社の製品が、リコールでも無いのに、多数販売中止しており、しかもリコールのように市場にある製品を回収しています。
何か製品に問題があるからでは?
by 正義 (2007-11-30 01:31) 

筍ENT

ボストン社製品販売中止や回収は知りませんでした。情報有り難うございます。

やはり問題があるからこそでしょうね。
これ以上事故を起こしていると、薬害同様訴訟を起こされるケースが増えるでしょうし。

コメントありがとうございました。
by 筍ENT (2007-11-30 22:05) 

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