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マイナー科も医療崩壊 [医療事故]

河北新報 あご手術後過失認定 東北大に賠償命令 秋田地裁

 東北大病院(仙台市)で下あごの手術を受けた際、医師が適切な処置を行わなかったために首の動きが制限される後遺症が出たとして、大館市の男子中学生(13)が東北大に約4370万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、秋田地裁は14日、東北大に約2300万円の支払いを命じた。

 金子直史裁判長は「異常が生じた場合、早期に適切な治療を施すか、専門医に紹介するなどして原因を診断する義務があるのに怠った」と手術後の医師の過失を認定。手術の際、首の損傷の発生を防止すべき配慮を欠く過失があったとする男性側の主張は退けた。

 判決によると、男性は2002年3月、左小顔面症治療のため、東北大病院で下あごの骨を切るなどの手術を受けた。退院後、秋田県内の病院で首の痛みと可動域の低下を診断され、手術を受けて痛みは軽減したが、可動域の低下は改善されずに残った。

さきがけ onTheWeb 東北大に賠償命令、運動障害訴訟 秋田地裁

東北大学病院.jpg  手術後に首の痛みを訴えていたのに適切な治療が行われず運動障害が残ったとして、大館市の男子生徒(13)と両親が、手術を行った東北大病院を運営する東北大(井上明久総長)に慰謝料など約4370万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、秋田地裁であった。金子直史裁判長は担当医の過失を認め、同大に約2306万円の支払いを命じた。

 判決では、男子生徒の訴えた痛みについて「手術に過失があったとは言えないが、術後に適切な診断や治療をする義務を怠った」と担当医らの過失を認定した。


HM3DCT.JPG片側性小顔面症は先天性の疾患であり、人体の発生の途中でのエラーによって、片側の下顎を中心とした部位の形成不全や、小耳症や外耳道の閉鎖を見ることがあります。また重症例では頭蓋や頸椎、胸郭にまで障害が及ぶことがあり、症例ごとに異なるとされています。

よく言われるように医療は工場で同じ型から同じ形の工業製品を作る作業とは異なります。患者さん一人ひとりが違った身体を持ち、違った病態を抱えている訳で、診断・治療過程は一人ひとり異なります。まして本ニュース記事における片側性小顔面症などは、骨ばかりでなく筋肉も含む軟部組織にまで形成不全などの病的状態が存在することも考えられ、決して教科書に書いてある型通りの治療を実践すればよい、という疾患ではありません。

HM顔面写真.JPGそれでも本ニュース記事においても、医療者は術前の検査を十分に行い、下顎に対する手術処置を適切に行ったと思われ、それ自体は裁判所も認定しています。
術後に起きたという運動障害に、手術との因果関係があったのか、また何らかの処置を施せば防げたのかどうかもよくわかりません。それでも結果の良くないことを根拠に本事案では医療者を有責にしてしまったのです。

これまで医療者に対して結果責任主義を以て断罪する裁判が続いて来たために、医療崩壊が進行して来ました。

下顎の手術を行うのは医科であれば形成外科・耳鼻咽喉科の一部の医師、歯科のうち口腔外科を専門とする歯科医師と思われます。こうしたマイナー科にも医療崩壊を引き起こしたいのでしょうか。

後輩の泌尿器科医に聞きました。産婦人科のようにマスコミに取り上げられないけれど、泌尿器科医の医師不足も深刻で、かなり病院の医師はハードワークを強いられているとのことでした。

必ずしもこうした訴訟のためではないでしょうけれど、全ての科の医療が崩壊しつつあります。
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堀口舞

医療崩壊ー地域医療の崩壊は、今国民的な関心になっていると思いますが、わたしの知人の開業医の先生が最近、このテーマで執筆されています。
この本によると、その崩壊の主な責任は、医療行政の問題にあると指摘しています。つまり、医療費など年間2200億円削減のしわ寄せを、地域の医療現場に押しつけているとのことです。
このような、一開業の方々を含めて、現場の医療関係者から様々な議論が巻き起こってくることを期待したいところです。
『医は仁術か算術か―田舎医者モノ申す』(定塚甫著・社会批評社・1500円)
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/shakai/top/80-9.htm
by 堀口舞 (2008-10-04 16:12) 

筍ENT

ご紹介の本も一度ぜひ見てみたいと思っています。
by 筍ENT (2008-10-05 03:37) 

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