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医療事故と業過致死傷 [医療事故]

毎日新聞 静岡厚生病院:妊婦と胎児が死亡 遺族は「医療ミス」 /静岡

静岡厚生病院.jpg 静岡厚生病院(静岡市葵区、玉内登志雄院長、265床)は2日、帝王切開の手術を受けた同市の24歳の妊婦と10カ月の胎児が死亡したと発表した。遺族は「病院がすぐに入院させなかったため措置が遅れた」などとして、静岡中央署に医療ミスがあったと届け出た。病院側も異状死として届け出ており、同署は司法解剖を行って詳しい死因を調べている。
 病院側の説明によると、妊婦は出産予定日を3日過ぎた4月27日午前0時ごろに「(26日午後)10時ごろから陣痛が始まった」と病院に連絡した。症状を聞いた助産師が自宅待機を指示。27日午前7時ごろ入院したが、検査で、胎盤が分べん前に子宮からはがれ、酸素などの供給が止まる「胎盤早期はく離」と診断され、担当医が緊急に帝王切開手術を行った。
 胎児を取り出して死亡を確認し、妊婦の縫合を終えた直後に、今度は妊婦の血圧が降下し、けいれんなどが起きた。輸血して手術を終えたが、午後1時40分に死亡した。妊婦の死因は不明という。
 胎盤早期はく離は、200~300人に1人の割合で起きる疾患で、病院側は「事前予測は不可能」と説明。玉内院長は会見で、「自宅待機は本人が納得していた。妊婦への輸血量も十分で、死因に直結する医療過誤はなかったと考えている」と述べた。
 一方、遺族は「妊婦と胎児が亡くなった原因と経緯を明らかにして、きちんと説明してもらいたい」と話している。
 同病院は、1933年設立。妊婦と胎児双方が死亡する事故は最近20年では発生していないという。【松久英子、望月和美】


静岡中央警察署.jpgまず感じることは、医療の結果が不幸にして死亡などの最悪の結果をたどった時に、それは医療者の責任であり、「正しい」医療が行われたら必ずそれは避けられたはずである、という思い込みです。

仮定法で「最良の」医療が行われていたら救命され、剰え健康な状態で母子が退院できたであろうという幻想がそこにはあります。医師がその時点で最善と思われる処置を行っても、その善意や努力はすべて否定され、刑事裁判などでは極悪非道の犯罪者のように扱われて来ました。その結果が現在の医療崩壊であることは繰り返し書いて来ました。

さて、そうは言っても不幸な結果となった患者の遺族にしてみれば、何が起きたか、どうして死に至ったかは知りたいと思うのが当然と思います。現在医療事故調が立ち上げられようとしています。患者のことだけを考えてベストを尽くした医師に対して、業過致死傷罪を振りかざして捜査を行おうとする警察の前に医師は真実を語れなくなります。誰しも自らを守る権利があります。
故意による殺人、傷害でもないのに、刑法がそれを罰しようとすることが間違っているのです。先進国では存在しない業過致死傷罪による捜査は個人を罰することに全てのエネルギーを注ぎ、医療の発展に資するところが全くありません。

これは航空機事故でもかねてから指摘され、日本でのパイロットの刑事訴追に海外から非難が集まったという話も聞くところです。

医療事故調の厚労省試案は、医療者の刑事訴追を行わない、謙抑的に考えるなどと述べます。しかし、警察は患者側の訴えがあれば、事故調と関係なく捜査を開始するとしています。

結局業過致死傷罪を廃止しない限り、医療も航空機も他の事故調査も、事後の事故防止に資することはできないと考えます。日本はこの点でもっとも立ち後れていると言えるのではないでしょうか。

この記事を書いておいたのは実は5月頃でした。この度拙ブログをご訪問頂いたおかだ先生が、m3.comで、非常にわかりやすく現代版魔女狩りにも例えるべき医師糾弾の現状を書かれています。続編ともに大変面白い記事で、ここにリンクを張らせて頂きます。
http://blog.m3.com/ishi-atama/20080727/1
http://blog.m3.com/ishi-atama/20080728/1
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コメント 2

NO NAME

http://www.geocities.jp/to_kai123/medicalerror.htm
こちらもご覧下さい。
by NO NAME (2009-11-22 16:16) 

筍ENT

ご訪問、記事紹介ありがとうございます。

新人助産師がひたすら妊婦の腹部を押し続けたことが早剥を招いた、ということと、輸血をしなかったから妊婦が死亡したという趣旨のようですね。
こうした医療の内容は外部からはこうした情報以外に知る術はありませんね。

ただ、輸血については、極力避けるべき治療行為であり、結果的に判断が遅くなったとしても、それを過失として医療者を罰するのはいかがなものかと思います。また助産師の行為が不適切であったかどうかはわかりません。

さらに子癇や脳血管障害を疑って検査をしたことを糾弾していますが、検査をせずに輸血するべきだったという主張でしょうか。逆に輸血だけして脳血管障害を見逃したとしたら、全く同じ論調で非難を浴びせていたのではないですか。

これこそが医療に対して結果責任を負わせようとする、大変危険な考え方です。この記事はやはり医療者は悪者であるという結論ありきの悪意に満ちたものと考えます。

貴重な情報をありがとうございます。反論のチャンスがあれば、この記事に対しても反論してみたいと思います。
by 筍ENT (2009-11-22 16:44) 

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