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業過致死罪礼賛 [医療事故]

時事通信 差し戻し判決に涙=「娘に伝えたい」と父-明石砂浜陥没事故

明石陥没一周忌.jpg 「やっと娘に報告できると思った」。兵庫県明石市の砂浜陥没事故で、事故は予見できたとし、元国土交通省職員らの無罪判決を破棄した10日の大阪高裁判決。亡くなった金月美帆ちゃん=事故当時(4)=の父一彦さん(41)は法廷で思わず目頭を押さえた。
 主文言い渡しの瞬間、傍聴していた一彦さんは涙をこらえ切れない様子。拳を握り締める。急いで法廷を出た。東京の自宅で待つ妻に電話で報告したという。
 判決後の記者会見では「ずっと主張してきたことが認められた」「(美帆ちゃんに)苦しい思いをさせた人の責任が追及できるようになったと伝えたい」と声を弾ませた。
 一審段階から、裁判の節目に入院中の美帆ちゃんの写真を見て自らを奮い立たせてきたという。
 事故から6年半。一彦さんは「また無罪判決が出たらと思うと怖かった。裁判長にありがとうと言いたい」と話した。
 一方、被告に関しては「(差し戻し審で)有罪判決を下してほしい」と語気を強めた。国や明石市には「専門的なことが分かる、分からないは関係なく、普通の人が分かることを普通にやるのが管理者だと裁判が認めたことを知ってほしい」と注文を付けた。


金月一彦.jpgこういう記事作りをしないで欲しかったと思います。深く考えずに読むと、うんうんそうだ、国交省職員らが有罪になって良かった、これで亡くなった子供の父親として救われたんだろう。そんな風に読んで、業過致死傷罪による罰を当たり前のように国民に刷り込んでしまう記事です。

この父親の無念な気持ちを考えると、個人攻撃をするつもりは毛頭ありません。しかし、暴漢が愛娘を殺したなどというのではありません。誘拐殺人事件だった訳でもありません。誰も故意で殺害した事件ではないのです。たまたま事故に巻き込まれてしまった。そしてその事故に関連した役所の職員だったということです。

ここまでそうした人に対して恨みの気持ちを持ち続けるというのは、私は同意しかねます。他の記事でも、事故再発防止のために、自分の悲しみのエネルギーを向けて建設的な運動をしている例も取り上げました。

ちなみにこの明石の砂浜陥没事故では、国と明石市が05年8月謝罪し、約8800万円の賠償金支払いなどで示談が成立しています。それに飽きたらず、こうして個人の刑事有罪を望むというのは如何なものかと思います。
最初から業過致死傷罪などがなければ、むしろこうした遺族の怒り・悲しみの矛先を個人に向けることが起きないのではないかと考えます。
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鶴亀松五郎

軽井沢の産科裁判も検察がベテランの男性産科医を2回目の不起訴処分にしましたし、岩手県のタバコ誤嚥事件の女性小児科医も同じように2回目も不起訴処分となりました。
軽井沢のほうも、民事で8500万円の賠償金がでましたが、それでも家族はしつこく刑事事件を希望、だが跳ね返されました。

こういうことをする人って、なんていうか、もともとの性格的なものというか、気質なんじゃないのですか。
もって生まれた気質なのか、育った環境による気質なのか、どっちなのか判りませんが。
ある程度のところで運命を受け入れるか、あくまで他者を責め続けるか、性格の違いなんでしょうね。
患者家族と言っても、人それぞれですが、エネルギーの使い方と方向性が、異なるのでしょう。

私も長年、臨床をやっていて、家族のメンバーにも個々で受け取り方の違いがあることを感じています。
騒ぐ人、運命として受け止める人、感謝の言葉を述べてくださる人、捨て台詞を残す人、患者と患者家族もさまざまです。




by 鶴亀松五郎 (2008-10-03 16:30) 

筍ENT

いつもご訪問ありがとうございます。

鶴亀先生の書かれたように、医療事故における患者さんや遺族の人たちが、怨恨を持って医師を刑事裁判上有罪にさせようという動きが多く見られます。
彼ら自身の性格によるものも大いにあり得ると思いますが、福島県大野病院事件で指摘されているように、警察が遺族や患者に医師を極悪非道の加害者であるように刷り込んでいるふしもあると言われていますね。
それが事実ならこんなひどいことはありません。

また一方、検察審査会に関する法改悪もなされ、検察審査会がせっかくこうした不毛な刑事裁判をはねつけても、今度は必ず刑事訴追が出来てしまうシステムが始動します。もはや医療事故における医師、その他の事故における関係者は、ひとたび被害者や遺族に負のイメージを持たれると、刑事訴追されることを覚悟しなければならないことになってしまいました。

応報主義に傾く日本の刑法を見直すべき時ではないかと考えています。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2008-10-04 02:12) 

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