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周産期医療再生を妨げるな [医療事故]

asahi.com 産科医増やせ!千葉大でPRツアー /千葉

千葉市立海浜病院.jpg 千葉大医学部と同付属病院の周産期医療グループが、医師の卵たちに産科・新生児科の魅力を知らせ、後継者になってもらうことに取り組んでいる。この夏休みには医学部学生や研修医向けに、県内お産現場探訪ツアーや産婦人科体験セミナーなどを開いた。(福島五夫)

 8月16日。NPO法人千葉医師研修支援ネットワークなどの支援で全国から医学部の5、6年生16人と研修医の1、2年生7人が1泊2日のツアーに集まった。

 スタートは千葉市立海浜病院。産婦人科と新生児科の両科を有する市内で唯一の病院だ。見学者たちは白衣を着て新生児病棟に入り、赤ちゃんたちの愛らしい笑顔やスヤスヤ眠る姿に見とれていた。

東女医大八千代医療センター.jpg 次に訪ねた東京女子医科大八千代医療センターは一昨年12月に開院したばかり。県北では唯一の総合周産期医療センターに認定されている。国保旭中央病院では病院の建物7棟やそれを囲むように建つ職員住宅を見学した。医住一体になっていて救急車などで重篤患者が運び込まれると、当直者以外の携帯電話に連絡が入る。深夜でも10分以内にスタッフが駆けつける、という説明にうなずいていた。

 この日訪ねたどの病院も、近い将来、戦力として期待できる「金のたまご」たちを歓迎し、幹部医師が付きっきりで案内した。

国保旭中央病院.jpg 夜の研修は、宿泊先の木更津市かずさアカデミアパークのホテルで開かれた。館山市のファミール産院の杉本正樹院長(36)は講演で、大半が勤務医志望という参加者たちに「産科有床診療所開設という選択肢があることを伝えたい」と意気込んだ。「なり手がいない産科の分野は、株価に例えれば今が底値で買い時だ」などと参加者を何度も爆笑させた。

 2日目は国保君津中央病院経由で医療法人鉄蕉会亀田総合病院へ。参加者たちは高級ホテルと見まごうばかりのKタワーの外観と内部にまずびっくり。個室の病室はすべてトイレとシャワー付きで応接セットもある。昼食はKタワー13階の太平洋を見晴らせるVIPルームで、産婦人科医でもある亀田省吾・亀田クリニック院長らを囲んで食べた。

ファミール産院杉本雅樹.JPG 帰りの車中で参加者のアンケートをとった。「それぞれの病院に特徴があり、興味深かった。現場の医師たちはみな熱心で、産婦人科の将来は明るいと思った」「軽い気持ちで参加したが、ツアーを終えた今、産婦人科に進みたいと考えるようになった」など。「周産期・新生児医療に興味を持ったか」の質問には21人が、「将来の進路に産婦人科・新生児科を考えるか」には18人が「はい」などと答えていた。

 8月9、10日には千葉大医学部周産期医療グループが主催した「産婦人科体験セミナー」が開かれた。初日の新生児蘇生実技講習には、助産師、看護師合わせて16人も加わった。翌日は、生水真紀夫教授をはじめとする両科の指導スタッフに加え、旭中央病院新生児科などからも医師が応援に駆けつけ、九州や県内の大学医学部生や研修医21人を迎えた。

国保君津中央病院.JPG 「若手医師確保のための取り組み」を担当している、同部付属病院周産期母性科の長田久夫・准教授によると、このような全国の医学部学生や研修医を対象にした公開セミナーを毎年夏、春休みの期間中に開催している。

 学内向けには5、6年生と初期研修医対象の「周産期モーニングセミナー」と4年生対象の「同ランチョンセミナー」が随時企画され、教授らが少人数の参加者を相手にアットホームな雰囲気で話す。いずれも食事付きで至れり尽くせりだ。

 長田久夫・准教授は「われわれのプロジェクトを通じて、一人でも多くの医学生や研修医が産科・新生児科を将来の選択肢に加えてくれればうれしい」と話している。


大変興味深いPRツアーです。本来産科・新生児科の周産期医療はやり甲斐のある仕事で、科を選ぶ時に、魅力的なものであるはずです。

こうして実際に最新の設備の充実した産科・新生児科を見学に連れて行けば、尚更こうした科に進もうという医師が増えるかも知れません。
特に分娩は初めてみる時は、学生や研修医も人間、誕生の瞬間を感動を以て見るはずです。

亀田総合病院K棟.jpgしかしここで繰り返すまでもありませんが、何が彼らを周産期医療から遠ざけているか。言うまでもありませんね。うまく行って当たり前、何か不都合なことが起こったらそれは全て医療の責任、そういう誤った考えが蔓延し、剰えその医師たちに刑事罰まで与えようとする。
そして周産期医療から医師がいなくなる。

以前にも書きました。国民が自分の首を絞めていることに、そろそろ気付いて欲しいと思います。

大野病院事件一審無罪判決後のフジテレビの番組で視聴者テレゴングアンケートがありました。この期に及んで、医療事故に警察が関与すべき66%、すべきでない33%という結果が紹介されました。
医療者はいつでも懸命に手を尽くします。でもそして結果が悪ければ警察の捜査ですか。

ニュース記事のようなPRツアーで如何に産科志望の研修医が増えても、こうした現実に直面すれば、他の科に行ってしまいます。

医療崩壊を招いたのは何なのかを、医療を受ける立場の人たちも今一度考えて頂ければ、と思います。
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Quri

こんにちは。
仏作ってなんとやら、ではありませんが医師を増やせばそれだけで解決するという流れが目につきます。
 要はバランスの問題でしょう。以前にもコメントさせてもらいましたが世の中には決して誰のせいでもない不運が存在します。しかしそれを強調しすぎると、実は人為的な災害や事故も、言い換えれば誰かの注意義務の怠慢も、不運のせいにする風潮が生じます。
 一方現在のように、どんな不運も必ず誰かのせいにしないと気がすまない、マスコミが先頭に立ってそれを煽る、となると非常に消極的で退廃的な風潮が蔓延します。先生も私も、現代の日本は少し後者に傾き過ぎて危険なバランスですよ、と言っているわけでしょうね。

by Quri (2008-11-28 16:58) 

筍ENT

Quri先生ご訪問ありがとうございます。

ご指摘の、事故は「誰のせいでもない不運」という解釈と、「必ず誰かのせいにする」風潮の間で、バランスを取るべきである、という捉え方、わかりやすくて大変参考になります。

後者に傾き過ぎている現状を憂うあまり、つい私も業過致死傷罪廃止など、全ての過失による事故の刑事罰を否定しようとしてしまいます。そうするとそれに対する反論・批判のコメントを頂戴したりしています。

医療事故だけを免責させようとするのは理解を得にくいし、全ての事故における「誰か」の刑事訴追を全て廃止させるのも難しいし、いつも悩んでおります。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2008-11-28 21:06) 

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