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事故再発防止情報より“容疑者”血祭り [医療事故]

毎日新聞 <エレベーター事故>東京の高2死亡、点検員を書類送検へ

SEC.JPG 東京都港区のマンションで06年、都立高校2年、市川大輔(ひろすけ)さん(当時16歳)がエレベーターに挟まれ死亡した事故で、警視庁捜査1課は近く、保守管理会社「エス・イー・シーエレベーター」(台東区)の点検担当作業員(28)を業務上過失致死容疑で書類送検する方針を固めた。技術部門の最高責任者の専務(49)についても立件の可否を最終判断する。製造元「シンドラーエレベータ」(江東区)の関係者については、製品に問題がないとして立件を見送る。

 市川さんは06年6月3日午後7時20分ごろ、港区芝1の自宅マンション12階で、降りようとしたエレベーターが開扉のまま突然急上昇し、建物の天井とエレベーターの床との間に挟まれて死亡した。

 調べでは、作業員は同年4月から保守点検を担当。事故9日前の5月25日に事故機を点検した際、ブレーキパッドの摩耗で出た黒い粉の堆積(たいせき)などの異常を見逃し、事故で市川さんを死なせた疑い。

 捜査1課が再現実験した結果、事故機は制御盤からブレーキ解除を伝える役割の電磁コイルがショートし、ブレーキが完全に解除されないまま運転していた。このためパッドが摩耗し、今度はブレーキが機能しなくなり、止まっていたかごが急上昇したとみられる。

シンドラー1.jpg シ社については、▽設計・構造自体に問題がない▽事故時の保守点検を担当していない--などの点から予見は難しかったと判断した。【佐々木洋、古関俊樹、神澤龍二】


いつも取り上げる、業過致死罪での警察の立件のニュース記事です。
業過致死罪の存在そのものについてかねてから疑問視して来ましたが、現実的にはこの法に基づく警察の「捜査」がどういう結果を招くか、それを端的に表すものと思い、取り上げました。

何やら再現実験まで行っています。ここまで色々調べたら、本来各エレベーター製造会社や保守管理会社に通達して、同様事故の再発防止に資するべきところと思われるのですが、警察の目標はおよそそれとかけ離れた、個人の血祭りに向くのです。

シンドラー2.jpg保守点検会社の作業員を刑事立件し、有罪を目指します。この作業員が見落とした異常がエレベーターの異常上昇を来たし、被害者の死亡に繋がったという、大変わかりやすいストーリーをそのまま検察に渡し、刑事罰を科させることを目指します。警察の仕事はこれでもう終わり、そして検察も全エネルギーをこの個人の糾弾に注ぎます。

ここで事故調査委などが関与していないために、同じ事故を防ぐための細かい情報がエレベーター保守点検会社に示されることもありません。知りたければ法廷に傍聴に来いとでも言うのでしょうか。

被害にあった人数で事故調査委が動くか否かを決めている現状では、事故原因調査は、個人糾弾が目的の警察に委ねられてしまいます。不毛なだけでなく、事故情報がきちんと同様会社に共有されることもありません。

もっと事故を巡る法的環境を見直すべきではないでしょうか。
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コメント 8

藤沢一郎

国土交通省”昇降機等事故対策委員会”は9/08/2009、「ブレーキ異常が直接の原因。設計や品質にも問題があった」とする事故調査報告書をまとめたとの新聞報道があります。

「ブレーキ異常が直接の原因」としていて、主原因はエレベータ機器側にあったとなります、、、保守点検云々ではなくて。

by 藤沢一郎 (2009-09-14 05:00) 

CB

ご訪問ありがとうございます。

国交省も事故の総括に一応関与しましたか。少し安心しました。この事故が個人の糾弾に終わってしまうようではどうしようもない、と思っていましたが、その懸念が少し払拭されました。

その事故調査報告書を見ておりませんが、他メーカーなどにも有用な情報提供となっていることを期待したいと思います。

コメントありがとうございます。
by CB (2009-09-14 08:31) 

藤沢一郎

<続き>
 次の二つの文書から、”基本機器デザイン”に最も重要な”最後のフェイルセーフ機能”が不足しているため”安全装置の追加”となったことが読み解けます、、「政令改正」にて今になって追加あり。

■”建築基準法施行令の一部を改正する政令”(平成20年政令第290号)
 --->主要機能の故障で自動的に”かご”を制止する安全装置の設置の義務付けあり。

■国交省報告書”シティハイツ竹芝エレベーター事故調査報告書 平成21年9月8日”
 --->”6.3 再発防止対策の検証”で「フェイルセーフ機能」が強化されることに言及。
    (例)ブレーキを二重化、”補助ブレーキ+安全制御プログラム”を別に設ける。
       (→ 自転車でさえ前後にブレーキ合計2組あり、暴走は避けられる)

<”安全装置の設置”に注意点あり>
▲”新規工場出荷分”(9/28/2009以降):自動的にかごを制止する”安全装置の設置”の義務付けあり。
  ○”最後のフェイルセーフあり”---> 主要機能の故障で”かご”が自動停止 

▲既設分(稼動中):”安全装置の設置”は義務付けされてない。
  X ”最後のフェイルセーフなし”---> 主要機能の故障で”かご”が暴走

  ---->ユーザー(側)は”安全装置の設置用「アップグレイドKIT」(例)を求めて行動を起こす”必要があります、、安全装置を追加しない限り”かご”の暴走は避けられず。

 {重要}⇒ 「シ-社」に限らず「国産メーカー」の”既設分”にも必要となってます、、それらの文書からも分かりますが。     

http://blogs.yahoo.co.jp/nipponsaisei_lab/29783581.html

  

by 藤沢一郎 (2009-09-24 13:15) 

CB

ご訪問ありがとうございます。そして貴重な情報ありがとうございます。

事故調査が、後の事故を防ぐために役だっていることがわかりました。これがなくて、個人の糾弾に終始しているようなことがあれば、何と情けないことと思っていましたが、被害者の犠牲が無駄になっていないのなら、何よりと思います。
改めてよく読ませて頂きます。

コメント本当にありがとうございます。
by CB (2009-09-24 14:43) 

藤沢一郎

<続き>
既設エレベーターへの”補助ブレーキ取り付け”は数年後には義務付けられるようです。  (Web産経9/28/2009)

大手国産メーカーの中には既設分(稼動中)への”補助ブレーキ”(=最後のフェイルセーフ機能)の追加が今でも可能のところがあるようです。
 注)その安全装置を追加しない限り”かご”の暴走(挙動不審も)リスクは避けられません。

⇒ 企業の社会的責任を果たすという観点からも、”補助ブレーキ”限定の「リコール」(無償設置)が必須と思われます。 (シ-社は”ソレノイドの状態を監視する装置”を無償設置)

*国交省の”安全”に対する甘い基準(大臣認定のお墨付きあり)が”本件”を引起した一つの大きな要因と言われても止むを得ないところとなってます。

http://blogs.yahoo.co.jp/nipponsaisei_lab/29912886.html

by 藤沢一郎 (2009-10-04 03:56) 

筍ENT

たびたび情報を寄せて頂いてありがとうございます。

ご指摘のように、国の甘い基準が事故の要因である可能性は重大ですね。
ちょっと例が違いますが、各電機会社が拡販を目指すキッチンIHの電磁波に関する規制も、日本と欧米とは全く異なると聞きます。
現在のところ電磁波の人体に対する影響は不明と言うことになっていますが、欧米では転ばぬ先の杖の発想か、かなり厳しいものになっています。これに対して本邦では各電機メーカーの圧力があってか、かなり甘いものになっているようです。

官民癒着が国民の安全を脅かしているとしたら由々しき問題ですね。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-10-04 21:05) 

藤沢一郎

<「事故調査報告書」vs新聞記事>

9/14/2009にありますコメント「、、設計や品質にも問題があった」とする新聞記事について;

新聞記事では新聞読者に誤解を与える実に危ない表現となっています。

■「事故調査報告書」では、
 ”、、設計上の問題があったと考えられる”--->"可能性が高い"旨の表現

■新聞記事では、
 ”「設計上の問題があった」”-->断定語調

▲新聞では、技術的な重要ポイントで{ 可能性 → 断定 }へと”技術的な判断”を加えてしまっていて越権行為となってます、、断定できるのは製造メーカーの開発技術部門だけです。

詳しくは次を参照願います。
エレベーター事故_起訴中_⑰「事故調査報告書」_新聞記事に危ない表現あり_過去分 11/09/2009
http://blogs.yahoo.co.jp/nipponsaisei_lab/30355528.html
by 藤沢一郎 (2009-11-16 05:21) 

CB

たびたび続報をありがとうございます。
新しい問題として、新聞報道を取り上げて頂きました。

事故調報告書を、いわばねじ曲げて報道する姿勢は大変問題と思います。
実は一番関心を寄せている医療事故にあっても、新聞各紙によって違いますが、医療者にかなり悪意を持った書き方をするものがあります。

報道各社にも監視の目を光らせる必要がありますね。

情報、コメントありがとうございます。
by CB (2009-11-16 08:45) 

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