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地域医療とくも膜下出血診断 [医療事故]

河北新報 「誤診が原因」くも膜下出血なのに「急性アル中」

公立黒川病院.jpg 宮城県大和町の公立黒川病院がくも膜下出血を急性アルコール中毒と誤診したため夫=当時(47)=が死亡したと、仙台市泉区の妻ら遺族3人が19日、病院を運営する社団法人地域医療振興協会(東京)に計約8550万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。

 訴えによると、夫は今年1月31日夜、宮城県富谷町の飲食店で、妻や会社の同僚らとジョッキ2杯のビールと焼酎1杯を飲み、店で急に意識を失って公立黒川病院に運ばれた。毎晩の飲酒量とほぼ同じだったが、同病院の医師は急性アルコール中毒と診断した。

 ふだんと様子が違うことを不審に思った同僚らの求めで、医師はコンピューター断層撮影(CT)で検査したが、画像から別の病因を判読しなかった。翌2月1日未明、夫の呼吸が停止し、転院搬送された宮城野区の病院でのCT検査でくも膜下出血と診断された。夫は6日後に死亡した。

 遺族側は「くも膜下出血が疑われる状況だったのに、医師は急性アルコール中毒と誤診し、CT検査でも見落とした過失がある」と主張。黒川病院は「訴状を見ておらず、現段階ではコメントできない」と話している。


地域医療振興協会.jpgまたも結果責任をかざした訴訟です。夜間の急患でくも膜下出血の診断に至らず死亡した事案で、死亡の責任は全て初診の医師と病院であるという趣旨の提訴です。

今までも繰り返し書いて来たように、病気の原因は患者さんに内在したもの、または外因によるものです。医師が患者につかみかかって傷害事件をおこした訳ではありません。
このくも膜下出血では、おそらく患者さんがかねてから持っていた、脳動脈瘤か、脳動静脈奇形が破裂して出血したものです。その引き金になったのが飲酒と考えられますが、それを救命出来なかった医師になんと8,550万円支払えというものです。

これを正義として良いのでしょうか。

さらに、地域医療振興協会は、自治医大卒業生など僻地医療システムを改善して行こうという医師たちによって設立されたもので、医療に恵まれない山間僻地を中心に病院運営を行って行こうという組織です。
都市にいる医師をプールし、交代で派遣させるなど、僻地医療を振興して行こうという活動を行っています。

もしこうした協会がなければ、そもそもCTを備えた病院は運営できておらず、もっと患者さん達の診断には時間がかかった可能性があります。

ともかく病院にかかったら100%助かる、そして病院はそこに当然のようにある。医療を受ける側の当然の権利である。‥そう思われているのではないでしょうか。こうした医療体制を構築するのに汗をかいた医師達に、ちょっとでいいから思いを馳せて欲しいと思うのです。
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コメント 2

おかだ

 CTでも非常にわかりにくいくも膜下出血がありますが、「完璧な診断能力と完璧な読影能力しか認めない人」には「わかりにくい」は認められない日本語なんでしょう。さらに「くも膜下出血の死亡率が30%」というのも認められないのでしょう。(ついでですが、くも膜下出血の場合(特に意識障害がきたような重症の場合)手術をすれば助かる、というものではありません。あれは中等症以下の再破裂(再出血)の予防で、脳へらで脳が傷ついたりクリップの時にすぐそばの別の血管をつまんでしまって脳梗塞を発症、なんてことも一定の確率で覚悟していただく必要があります)。

by おかだ (2009-04-05 22:52) 

筍ENT

おかだ先生、ご訪問ありがとうございます。

くも膜下出血について、具体的な数字、事例を挙げて頂き、有り難うございます。日頃脳血管障害の臨床から遠ざかっているので、改めて私もストロークの取り扱いの難しさを感じます。

ご指摘のように、くも膜下出血を起こして病院に運ばれて、いったいどれだけの人が何の後遺症もなく、元気で退院できるか、それを100%でなければならない、と思っていることに最大の問題がありそうですね。

コメントありがとうございます。
by 筍ENT (2009-04-06 00:47) 

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