SSブログ

司法が精神医学を書き換えた? 2 [医療事故]

共同通信 人格否定でPTSD再発 精神科医発言に賠償命令

関東中央病院.jpg 関東中央病院(東京)の精神科で人格を否定されるなどして、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったとして、東京都の女性が病院を開設する「公立学校共済組合」に約700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は14日、請求棄却の1審判決を変更し、約200万円の賠償を命じた。

 富越和厚裁判長は「女性はストーカー被害に遭ったことがあり、PTSD再発の可能性があった。医師は人格障害と短絡的に診断し、人格を否定する発言で再外傷体験を与えた」と判断した。

 判決によると、同病院精神科の男性医師は2004年1月、女性の診察で一方的に「あなたは普通じゃない」などと拒絶的に激しい発言をして「境界性人格障害」と病名を告知。女性は診察後、PTSDを発症した。

 5月の1審東京地裁判決は「医師の人格障害という判断に誤りはなく、発言が違法と言えるほど威圧的で人格を否定するものだったか明らかではない」としていた。


境界性人格障害.jpg以前、「司法が精神医学を書き換えた?」と題して、いじめが統合失調症を引き起こしたという判決を取り上げました。

精神医学は身体医学と異なり、目に見えない精神疾患に色々なアプローチを行い、疾患の解明に挑み、また精神療法・薬物療法などで患者と向かい合って行く領域の医学と言って良いでしょう。

先の記事では、医学書にも書いてない、いじめと統合失調症の関係を判決が認めたことに驚いて取り上げました。そして今回の記事では、高裁の判決は、最初から医療者の有責ありき、の姿勢で、「境界性人格障害」の病名告知とPTSD発症の因果関係を認めてしまいました。もっと言えば、判決が患者の症状をPTSDと「診断」してしまったように見えます。

身体医学ではさすがにその「プロ」をさしおいて医療内容に口出しすることは控えている司直が、精神医学領域ではかなり大胆な判断を打ち出して来ています。
このニュース記事の症例で、記事では明らかにされていませんが、女性のPTSDとされる症状は本当にそう診断されて良いのでしょうか。そもそも対人関係の異常・未熟が言われている境界性人格障害の症状そのものとも考えられないでしょうか。
私は精神医学に詳しくありませんが、この対人関係異常は主治医との間にも現れるとされます。例えば精神科外来で通院を重ねて、人間関係としての距離が縮まって来ると、ある日突然患者が主治医に向かって暴言を吐いたりものを投げつけたりすることがあると聞きます。相手の評価が両極端に入れ替わるのが特徴とされます。

そもそも提訴したこと事態が境界性人格障害の一症状と考えられなくもないと思います。訴訟を持ち込まれた裁判所も困るとは思いますが、精神医学の教科書を書き換えかねない判決を安易に出して欲しくないと考えます。
nice!(1)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 1

コメント 6

おかだ

 PTSD(きちんと定義がある)はちょっと安易に一般で使われすぎていると思いますが……その裁判官は「診断」ができるのですからきっと「治療」もできるんじゃないです? これからは全部そういった両方ができる人にお任せしたいですね。「診断をする」ことは「その後に自分が責任を持つ」ということも意味するのですから。「診断はしたがあとは知らん。誰かに治療してもらえ」なんて無責任な主張は、まさかしないですよね。
by おかだ (2009-04-25 07:12) 

筍ENT

ご訪問ありがとうございます。

そうですね、その裁判官には治療することの自信がおありと見えますね。薬物治療があまり有効とは言えない、人格障害に対して、これからカウンセリング、面接でぜひ治して頂きましょう。
あ、もっともこの治療行為で患者さん(原告)からお金を頂戴すると医師法に触れますから、ぜひ無料でお願いしないといけませんね。このあたりは判事の先生に対してあまりに釈迦に説法でしょうけれど。

というわけで、こまった問題ですね。ご訪問ありがとうございます。
by 筍ENT (2009-04-25 08:48) 

Quri

お久しぶりです。が、いつも読ませてもらっています。前回の精神科的新学説を裁判所が堂々と発表された記事の時は私も驚いて、自分でも調べてコメントさせていただきました。今日の記事も当然のご指摘で、ゲストのおかだ様のご意見もそのとおりと感じました。
 
 ところで、今日投稿させてもらったのは全く別の件です。昨日来、某有名人が飲酒の上全裸になって云々というニュースが流れています。このことの反社会性度、警察の対応の適否はさておき、昨日の早い段階で総務大臣がかなり辛口の発言をTVでしていました。
 私は当初から、この発言は先生がよく書かれている「作用反作用の法則」の観点から大変おもしろそうだぞ、と思ってみていました。結果的に、今回の失点はあっても国民的に清潔度と誠実感の高いアイドルを相手に反作用をかまそうとされたのが失敗でした。ご自身の本来の印象や好感度がどの程度かという判断を誤ったため大変な逆効果であった様子で、この発言に抗議の電話が殺到しているとの事です。これは力学的に言うなら、反作用をもらう以前に両者の位置エネルギーの差がありすぎたため潰されてしまった図、とでも言うのでしょうね。
 先生のいつものコメントを思いだして、なかなかユーモラスと感じたので関係ないところに書いてしまい、失礼しました。

 毎日格調のある意見を発信されるためにはやむを得ないのかもしれませんが、たまにはその日のフレッシュなニュースを取り挙げてもらうと嬉しい・・・というのが「筍ファン」の勝手なリクエストではあります。

by Quri (2009-04-25 13:21) 

筍ENT

Quri先生、ご訪問ありがとうございます。

実はおかだ先生が大変興味深いブログを書かれています。
「転がるイシあたま」http://blog.m3.com/ishi-atama よろしかったらご覧下さい。

草○剛の全裸事件、鳩山総務相の発言は、ご指摘の通り、作用反作用の法則に則っていますね。私自身そういう目でニュースを見ておらず、ご指摘頂いて、その通りだと思いました。鳩山氏があまりにおかしな発言を繰り返すこともあり、深く考えていなかったのもありましたが‥。
そして判断を誤って、今日のニュースではヘンな検察批判を繰り広げていますね。まあそもそもたかが公園で、あまり陳列すべきものでないモノを出して泥酔して寝ていたというだけで、それほど誰かに迷惑をかけた訳でもありません。同じ行為でも、例えば満場の観客の前でそういうことに及んだ、という江○2:50とは訳が違いますし。

鋭い指摘にたじたじとなっております。ブログ毎日更新という強迫観念?の結果、ご賢察の通り、記事は書きためてあります。このため、どうしても新規にアップする記事は実は数ヶ月前に作成したもの、ということが殆どです。
こうした中で、すぐアップすべきものがあればそのようにしたいと思います。

今後ともよろしくお願い致します m(_ _)m
by 筍ENT (2009-04-25 15:56) 

峰村健司

お久しぶりです。例によって裁判記録の閲覧などをしてきましたので,宜しければ是非ご覧ください。
かなり無茶な判決だと思います。
by 峰村健司 (2009-09-21 00:59) 

CB

ご訪問ありがとうございます。
早速見せて頂きます。
いつもありがとうございます。
by CB (2009-09-23 01:00) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。