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東京の多摩・島嶼・救急・周産期医療 [医療制度/行政]

東京新聞 都が『支援ドクター』 多摩・島しょ部に10人程度

多摩南部地域病院.jpg 都は二十七日、医師不足が深刻な多摩や島しょ部の公立病院を支援するため、都が即戦力となる医師を直接採用して派遣する「地域医療支援ドクター事業」を来年度から始める、と発表した。来月二十六日まで支援ドクターを募集し、十人程度を採用する考え。

 都福祉保健局によると、派遣先は、島しょや奥多摩にあるへき地の公立医療機関や、多摩地区の公立病院を想定。募集対象は医師歴五年以上の人で、周産期医療(産科・新生児科)や小児医療、へき地医療、救急診療のいずれかに従事してもらう。

 支援ドクターとしての勤務は原則六年間。このうち二年間は多摩・島しょに派遣される「支援勤務」に充て、残り四年間は「キャリアアップ勤務」と位置付け、希望に応じて都立や民間の病院で腕を磨けるようにする。

 支援ドクターには都立病院医師と同等の給与のほか、一日当たり一万円を上限に派遣手当も支払われる。

檜原診療所.jpg 同局は、新規事業費として来年度予算に三千三百万円を要求している。担当者は「医師の必要なところに、都が直接派遣するシステム。医師不足の解消に向けた一歩になれば」と話している。

 問い合わせは、都救急災害医療課医療振興係=(電)03(5320)4428=へ。


私の予想です。この「支援事業」に応募する医師は皆無、または数名にとどまるのではないかと考えています。
そもそも23区内の病院でさえ、産科・小児科医師は不足し周産期医療は危機に瀕しています。そうした状況で、多摩地区や檜原村、伊豆諸島・小笠原諸島などの医療機関に進んで手を挙げて赴任する医師がどのくらいいるか。

既に自治医大卒業生が一名檜原診療所に就職、その他島嶼の診療所には交代で派遣されています。6年間の授業料免除+αの条件でやっと僻地勤務を担ってもらっています。
大島医療センター.jpgそれに引き替え都立病院の給与に日当を乗せたくらいで進んで僻地や厳しい勤務が予想される救急、周産期医療に携わろうとする医師がどのくらいいるでしょうか。

もちろん医師の仕事選びは給与だけではありません。やり甲斐、喜び自体がインセンティブになり得るとは思います。しかし医師にも生活があります。
私の情報は古いのですが、国立病院に次いで低いとされ、地方自治体病院の中ではもっとも低い給与と言われる都立病院の給与に一日1万円程度上乗せした程度の報酬では、待遇に問題があるのではないかと思います。

給与もさることながら、もっとも医療紛争に巻き込まれる可能性の高い周産期医療、救急医療に携わる医師に対して、一切の民事賠償義務を東京都が負う、刑事訴追を極力謙抑的にすべく当局に働きかけるなど、採用した場合に大事に扱うという姿勢を見せることも大切ではないかと思います。以前より東京都立病院での医療事故賠償は、文科省管轄の国立大学病院と違って、全額都が負担するとは聞いていますが、それが今でも変わっていないか、なども明示してもらいたいと思います。

いずれにせよ、ことほど左様に医師不足解消策、多摩・島嶼医療環境の改善が簡単に進むとはとても思えません。
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乱暴な後発品推奨洗脳会 [医療制度/行政]

河北新報 後発医薬品PR 仙台・高森市民センターで講習

ゾロ講演会.jpg 後発医薬品の利点を紹介する講習会が21日、仙台市泉区の市高森市民センターで開かれ、仙台逓信病院(仙台市)の薬剤部副部長高橋則男さん(54)が「後発医薬品は先発医薬品と作り方も成分も同じ。偏見を持たずに使ってほしい」と安全性を強調した。

 センターの主催で、30―70代の市民54人が参加した。高橋さんは「後発医薬品を先発医薬品と同じように服用すれば1年間で約7600円安上がりになる」とメリットを説明して利用を呼び掛けた。

 青葉区の主婦羽田圭子さん(62)は「先発医薬品と変わらないと聞き、安心した。今までは後発医薬品を避けたが、使ってみたいと思った」と話した。


アムロジン.jpgひどい“講習会”もあったものです。薬剤についてよく知らない一般市民を集めて、先発品と作り方・成分が同じ、という、ウソに近い講義を行い、根拠のない安全性を説き、薬代低減のメリットだけを強調しているのは、患者さんたちを騙すにも近い行為です。

私自身後発品すべてを否定している訳ではありません。おそるおそる使ってみたところ、先発品と効果に差異を認めなかったもの、また製造会社に信頼のおけるものは使い始めています。
しかし一方で、以前にも書いたことがありますが、大腸カメラで、大腸の壁にそのまま貼り付いていた後発品の錠剤が発見された事例もあります。要するに吸収も利用もされずそのまま排泄されるばかりになっていた現場が目撃されたというものです。

例えば抗アレルギー剤などでは、後発品の効果が劣ったとしても、大きな影響はありません。患者さんの命に関わるような事態が起きにくいからです。一方降圧剤や血糖降下剤では重大な結果をもたらす可能性があります。また精神科領域でも効果に大きな違いを生じた事例を耳にします。
医療費抑制しか念頭にない厚労省は、一時生活保護患者には後発品を、という乱暴な通達を出して撤回したこともあります。ともかく薬を安くということしか考えておらず、安全性や先発品との比較はなおざりのままと言っても過言ではないでしょう。

アムロジピン沢井.jpgこうした状況にあって、こんな乱暴な“講習会”を開いたというのはいったいなぜなのでしょうか。ここから先は私の邪推ですが、後発品メーカーがこの病院の薬剤部に「鼻薬を嗅がせた」(ベクロメタゾン点鼻液を渡したという意味ではありません、念のため)、厚労省や県の役人が指示した、などが疑われます。

私が将来ガンになったら、信頼できない後発品メーカーの抗癌剤など決して使って欲しくありません。
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OTC [医療制度/行政]

共同通信 ネットで購入の薬で肝障害 女性入院、厚労省調査

カシュウツルドクダミ.jpg インターネットで買った一般用医薬品(大衆薬)を服用した30代の女性が昨年8月、肝障害を起こして入院していたことが21日、厚生労働省の調査で分かった。

 ネット販売の大衆薬による副作用被害が確認されたのは初めて。前原誠司衆院議員(民主)の質問主意書への答弁書で、同省が明らかにした。

 医薬品のネット販売をめぐっては、厚労省が来年6月の改正薬事法施行に伴い、規制する方針を明らかにしているのに対し、政府の規制改革会議や業者は容認すべきだと主張している。副作用の確認は、今後の議論に影響する可能性もある。

 厚労省によると女性が服用したのは、植物から抽出された「カシュウ」と呼ばれる物質が主成分の滋養強壮薬。女性は肝障害で2-3週間入院し、回復した。


カシュウウチダ.jpg医療関係者以外の方のために、OTCとは、over the counter の頭文字で、処方箋なしで薬店で購入できる薬を言います。もちろん医療保険は使えません。薬代は100%自己負担で、国保や社会保険の保険者たちの懐が痛まないようになっています。

さて、カシュウ自体の副作用=肝機能障害は今回の事件より前からわかっていたことです。肝障害が発生した場合には速やかに摂取を中止するよう注意が喚起されています。

医療機関で処方される薬の中では、漢方薬の中に含まれています。こうした医薬では副作用情報がきちんと収集され、メーカーを通じて処方医にきちんと通知されます。
一方、処方なしで購入できるOTC薬は、その分副作用発現には慎重になっており、また所定の服用量における成分量は本来少なくなっているようです。

ネット販売で買った患者に副作用が出たことを鬼の首を取ったように記事は書き立てていますが、疑問が残ります。カシュウリバコールド.jpgネットで買おうと薬店で買おうと、大差はないように思います。カシュウ含有薬にもかなり多くの成分が含まれており、一つひとつの成分について副作用を述べて、買いに来た客に説明することは、薬店の薬剤師にとって現実的とは言えません。

全ての薬には副作用があると言っても過言ではありません。今回の事件を以てネット販売を規制してみても始まりません。そうではなくて、医療費削減ばかりを念頭において、極力多くの薬を処方箋なしで買える=自費で薬を購入させる制度を拡大しようとすること自体が間違っているのです。

スイッチと称して、処方箋でないともらえなかった医薬が、薬店で買えるOTCに解禁される動きが続いています。CMではいつも「医師・薬剤師にご相談下さい」と言うセリフがついてきます。

残念ながら私は相談されると、OTCはおやめなさい、と必ず答えています。
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使いやすい病院 [医療制度/行政]

河北新報 医療現場の声反映 大崎市民病院建て替え

大崎市立病院討論.jpg 宮城県大崎市は、建て替えを控える市民病院本院(古川)の機能や構造について、医師や看護師ら医療スタッフからのヒアリングを始めた。病院建設に伴い、個別に現場の意見や要望を聴く取り組みは珍しい。「スタッフの働きやすさこそ、患者にとっての安心・安全な医療につながる」との考えに基づき、年度内に策定する建設基本計画に反映させる。

 10月に新設した病院建設整備局が、外科や内科など全診療科の科長クラスの医師や看護師、薬剤師、検査技師と面談。病院副院長でもある並木健二局長らが今月末までに計約50人の意見を聴く。

 7日のヒアリングには、小児救急科長の工藤充哉医師が出席。現在は大人の患者と一緒の混合病棟になっていることから「子どもの患者のケアにはとても手間がかかる。ミスや事故を防ぐためにも、独立した看護体制をつくってほしい」と要望した。

 長期入院児を対象にした院内学級の必要性にも触れたほか、「重度心身障害児のリカバリー(回復)のための病床を設けるよう求める声もあり、応えてあげたい」と患者家族の願いを代弁した。

大崎市民病院旧.jpg 現在の本院は老朽化が進む本館など3棟を渡り廊下で結んだ構造で、現場から「緊急時の移動に時間がかかる」などと不満が出ている。新病院は現在地を拡張して1棟に機能を集約し、2013年度の開院を目指す。総事業費は160億円を見込んでいる。

 通常、自治体病院の建設過程に医療スタッフがかかわる機会は少なく、行政担当者や設計・建設業者が主体となる。その結果、立派でデザイン性は高いが、肝心の医療機能が低く、使い勝手の悪い構造になってしまう例も少なくない。

 並木局長は「いい病院をつくるには知恵を絞るしかない。現場の意見をできるだけ取り入れ、患者が安心できる態勢を整えたい」と話している。


評価すべき取り組みだと思います。医療者から見ても、患者側から見ても「使い勝手の良い病院施設」を目指して欲しいと思います。
個人開業医院では、開業しようとする医師が、他の医院を見て回ったり、開業サポート業者がノウハウを提供したりします。それでも必ずしも理想のクリニックが完成するとは限りません。

大崎市民病院新病等.jpg記事の大崎市民病院はその完成が楽しみです。これが他の自治体病院などの参考になることも期待されます。今までこうした動きがなかったことが逆に残念なくらいです。

以下は蛇足です。東京都立病院が人気のある就職先病院だった頃、東京都は頻繁に各病院を建て替えていました。ところが、大崎市のように、機能的で患者にも医療者にも利便性の高い病院を作るという趣旨ではありません。
この頃の都立病院は各病院各科ごとに、色々な大学の病院の医局からの医師派遣を決めていました。何年か経つとこれを見直そうということで、物理的に病院を壊してしまいます。工事中に“入札”させ、新病院での各科の派遣元医局を全部入れ替えようと言うものでした。

こんなことをしているうちに医師不足が指摘されるようになり、また都立病院はその待遇などから人気就職先病院の地位から滑り落ちて来ていると聞きます。

ある意味対照的なものも感じます。
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警察・刑務所の医療「拒否」過誤 [医療制度/行政]

asahi.com 不適切治療でまひと 国家賠償を求め提訴 /愛媛

 ◇松山刑務所服役の男性

松山刑務所.jpg 松山刑務所で服役中の男性(34)が髄膜炎の適切な治療やリハビリを受けられず、両足にまひが残ったなどとして、国に500万円の国家賠償を求めて高松地裁に提訴した。

 訴状によると、男性は05年5月、逮捕、勾留(こうりゅう)中の松山東署で痛みを訴え、病院から髄膜炎の疑いで手術が必要と指摘された。移送先の松山刑務所で頭や目の痛みを訴えたが適切な治療を受けられず、05年10月に手術し左足に障害が残ったと主張。さらに控訴審のため移った高松刑務所でも適切なリハビリを受けられなかったなどとしている。男性は07年9月に最高裁で上告を棄却され、強制わいせつ致傷罪で懲役3年の実刑が確定。先月10日に提訴し、現在車いすを利用している。

松山東警察署.jpg 松山刑務所の高橋広志総務部長は「裁判の中で事実関係を争っていくため、コメントは差し控えたい」 としている。


詳しい症状の病歴がないとわからないのですが、髄膜炎で手術が必要とされたとすると、髄膜内にとどまらず硬膜下水腫か膿瘍が発生し、排液や排膿が必要であった状態と考えられます。水腫が脳を圧迫するような状態が続くと、後遺症を残す危険が上がるものと思われます。

病院の医師がそうした治療が必要であると判断したにもかかわらず、警察や刑務所がそれを拒否したとすれば、由々しき事態であると考えます。
入院治療を阻止し、身柄拘束を続けたために、後遺症を残したとすれば、500万円の損賠請求は少なすぎるのではないでしょうか。

高松刑務所.JPGもし被疑者・受刑者でない人が、髄膜炎に対する処置に問題があり後遺症を残したとしたらどうでしょうか。病院を相手取って、一桁は違う損害賠諸を求めて提訴したであろうことは想像に難くありません。
裁判所は、「適切な治療が行われていれば後遺症を残さなかった高度の蓋然性が認められる」として、生涯の介護にかかる費用などを算入し、恐らく数千万~億単位の損害賠償を認めるのではないかと思われます。

一方被疑者・受刑者が適切な医療を受けることを拒み、こうした後遺症を負わされた者に対して、仮に全面勝訴しても500万円というのは、あまりにバランスを欠くと思います。

警察・刑務所の、被疑者・受刑者の健康管理についての「注意義務違反」はこんなに軽いのでしょうか。医療機関はこんな警察に医療過誤の疑いのかどで捜査されるいわれはありません。
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僻地医療の実際 2 [医療制度/行政]

河北新報 「無医村」回避で住民ひと安心 秋田・上小阿仁

上小阿仁村役場.jpg 「無医村」となる危機に陥っていた秋田県上小阿仁村に、京都府の医師有沢幸子さん(63)が村国保診療所の常勤医として赴任することが6日までに内定した。村は昨年5月、いったん無医村状態となり、公募に応じた栃木県の男性医師が同11月から診療所長として勤務。その医師も退職を申し出たため、村は再度、全国から医師を募集していた。

 村によると、有沢さんは兵庫県出身。内科と小児科が専門で、北海道利尻島の病院勤務や、タイでの医療支援に従事した経歴を持つ。秋田にゆかりはないが、へき地医療に深い関心があり、夫とともに村内に引っ越して来年1月から診察を始める予定という。

 村は、男性医師が本年度内の退職を申し出た3月、村ホームページ(HP)のほか、医療雑誌に広告を出して医師の募集を開始。9月にHPを見た有沢さんから連絡があり、村幹部との面接を経て診療所の常勤医に内定した。

 退職を申し出た男性医師も村HPの医師募集ページを見て赴任してきた経緯がある。男性医師の早期退職という「誤算」はあったが、村のインターネットを使った作戦が再び奏功した格好だ。

 上小阿仁村の人口は県内最少の約3000で、村内には開業医もなく、診療所の医師確保は深刻な課題となっている。昨年5月に1人しかいなかった常勤医が退職し、無医村状態となった同10月までは、村の要請を受けた周辺市町の医師3人が非常勤で診察していた。

 小林宏晨村長は「無医村になる危険性が大いにあった。全国的な医師不足の中、本当に幸運なことだ。できるだけ長く勤務してもらいたい」と、有沢さんの赴任を待ち望んでいる。


上小阿仁村上大内沢地区山村広場.jpgこのニュース記事を読んで少しがっかりしました。なぜ前任の男性医師が早く辞職を願い出たかが明らかにされていませんが、本当はこれを知りたかったと思います。

前任の医師とは松沢俊郎先生と言う方で、着任時のニュースを取り上げました。 《こちら》 をご覧下さい。
http://takenoko-ent.blog.so-net.ne.jp/2008-02-07
松沢先生が、「この村が、医師として最後の勤務地。人への愛情、興味が尽きない限り、診療を続けたい」と言っておられたのに、わずか数ヵ月で退職を決めた原因はどこにあったのでしょうか。私が上記記事で書いたように、村民が松沢先生にどのように接したかが気になります。

やはりこうした医療過疎地は、排他的な雰囲気のある村であることが多いような気がします。村長が苦労して確保した医師であっても、医師の側が地域医療に熱意を持って着任しても、村民は最終的によそ者として扱い、平気で前任医師と比較して悪口を言い、そしてそれは通常面と向かっては言われないために、「陰口」となり、それが耳に入った医師にとってはかなりつらいものになります。

せっかく来てくれた「お医者様」をみんなで大事に敬って下さい、とは言いません。そうではなくて、村のために、村民のために着任した特殊な技術者を持つ人に対して、村のモノサシで評価の上異分子として外にはじき出そうとしないで欲しいのです。おそらく医師でなくても同じ憂き目に遭うのではないかと想像します。

結局は、世界一人種差別の激しい国民性と言われる日本人の特性が、小さな村の中で顕出してしまうと考えるしかないのでしょうか。
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小笠原からの急患自衛隊員搬送 [医療制度/行政]

asahi.com 内規違反の飲酒し海自隊員けが、P3Cで搬送 硫黄島

P-3C.jpg 東京の都心から南に約1200キロ離れた海上自衛隊硫黄島航空基地隊(東京都小笠原村)の隊員が、部隊の規則で禁じられている隊舎自室での飲酒の末にけがを負い、海自厚木航空基地(神奈川県綾瀬市)から出動したP3C哨戒機で厚木基地まで搬送されていたことが分かった。

 P3Cは潜水艦の探知・追尾、船舶の航行状況などの監視にあたるのが任務。海自は「服務違反は厳正に対処するが、負傷者の搬送は緊急性があり、やむを得なかった」と説明している。規則違反をきっかけにP3Cの利用まで至ったことに、内部からは批判の声も上がっている。

 海自によると、事故が起きたのは10月16日夜。新しく着任した隊員の歓迎会に参加した1曹(46)ら4人の隊員が、「日本酒なら2合程度、過度にわたらない量」という規則に違反し、それ以上の量の酒を会で飲んだ。午後8時半ごろからは、1曹ら3人が隊舎の自室内でも飲酒を続けたという。その際、1曹が過って左目付近を骨折するけがを負ったという。

 翌17日朝、部隊は1曹を自衛隊中央病院(東京都世田谷区)で精密検査を受けさせる必要があると判断し、航続距離約4千キロで距離的に空輸可能な厚木基地のP3Cの派遣を要請。厚木基地に1曹を空輸し、同中央病院に搬送した。1曹は手術が必要な状態で、現在も入院中という。

 離島に住む一般住民の搬送の場合は災害派遣要請に基づくが、隊員については緊急性があると部隊が判断した場合にP3Cやヘリコプターなどで搬送するという。

 1曹の搬送では往復の飛行で約11キロリットルの燃料がかかった。海自は一般的にこうした代金を隊員に請求しておらず、今回も求めない方針。海自はイージス艦の事故など不祥事が続き、抜本的に組織の見直しを進めている。「燃料高騰で訓練も減らしている時期で、考えられない出来事」と話す関係者もいる。

 硫黄島には長さ約2.7キロの滑走路があり、米軍と共同で使用。海自は周辺海域での救難などにあたっている。島は68年に米国から返還されたが、住民は住んでいない。


US-1A.jpg東京都の離島は伊豆諸島と小笠原諸島に分けられます。伊豆諸島は比較的近いため、島民の救急搬送には東京消防庁のヘリや、自衛隊でもヘリが使われます。
一方小笠原諸島は、日本中で東京から一番遠い自治体と言われ、ヘリでは到達することができません。このため飛行艇US-1が用いられます。小笠原の父島も母島も空港を持たないため、飛行機が使えません。海面に着水、海面から離水できる飛行艇が患者を迎えに行きます。

さてこのニュース記事の海自隊員の外傷については「吹き抜け骨折」でしょうか。致命的な事態に陥る可能性は高くないとしても、やはり急いで眼科・耳鼻咽喉科の診察を受ける必要があると思われます。

こうした事態に立ち至った時、その海自隊員が規則違反で飲酒していたとか、そうした周辺事由を云々している場合ではありません。小笠原村村民と同様、すぐに医療を受ける権利があり、それを国がサポートする義務があると考えます。

従ってこの海自隊員をP3Cが搬送したことを咎めるべきではないと思います。咎めるのなら、後で、規則に違反して飲酒をしていたことについて叱責なり注意なりすれば良いことであって、例えどれだけの燃料代等を費やして東京まで搬送したとしても、それ自体を非難してはならないと考えます。

小笠原村父島・母島においても、島の診療所で経過をみて良いものか、内地(主に東京)の病院に搬送すべきか迷う患者さんの発生が予想されます。
この時に、US-1の燃料代を考えて、患者さんを搬送しないことによるリスクを取るべきではありません。例え軽症者を搬送してしまい、後で笑い話になったとしても、患者さんの疾病・外傷に関して、最悪の事態を考えて最善を尽くすべきであると考えます。

同様に、この海自隊員を搬送したこと自体を責めてはならないと考えます。隊員も国民の一人です。
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被疑者、被告、受刑者の人権 [医療制度/行政]

時事通信 拘置所で凍死、遺族提訴=「看守らが注意義務違反」-神戸

神戸拘置所.jpg 神戸拘置所にいた男性=当時(29)=が凍死状態で死亡したのは、医師や看守らの注意義務違反が原因だとして、神戸市内に住む男性の母親(62)らが29日までに、国に約5500万円の損害賠償を求める訴えを神戸地裁に起こした。
 訴状によると、男性は2004年11月に逮捕された後、05年4月から神戸拘置所で拘置され、06年1月7日に死亡した。死亡数日前から体調不良や寒さを訴え、手などに凍傷があったにもかかわらず、拘置所側は暖房のある部屋や病舎へ移すなどの措置を取らなかった。
 男性は当時、児童福祉法違反などの罪で公判中だったが、死亡により公訴は棄却された。


この裁判には注目したいと思います。マスコミも必ず続報を載せて頂きたいと願っています。
神戸地裁.jpgこうした拘置所での容疑者や被告、刑務所での受刑者の健康被害や死亡については全くと言って良いほど真実が明らかにされてきませんでした。
時には虐待なども行われていたとの報道も一部あります。

そして刑務所では予算がないという、全く以て正当化には程遠い言い訳をしながら受刑者の居室には空調を設置していないという、人権を蹂躙した事態が放置されています。

さてこのニュース記事での凍死にかかる提訴は、こうした民事の他に刑事告発を行っても良いのではないでしょうか。この記事に沿うと業過致死罪の疑いがあります。私は法律の素人ではありますが、遺棄の罪に相当するのではないかと思います。

(遺棄)
第217条 老年、幼年、身体障害又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄した者は、1年以下の懲役に処する。
(遺棄等致死傷)
第219条 前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。


民事と同時に検察に訴え出てはどうでしょうか。こういう時にマスコミを引き連れて、検察がこれをうやむやにしないかどうかきちんと見張るべきだろうと思います。
そしてもし検察が不起訴にした時に、そう言う時こそ、浪花節の過失糾弾事案を訴えていないで、検察審査会が怒りの声を上げるべきだろうと思います。

国家権力による密室の罪を許してはなりません。
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まだ医療崩壊促進&弱者いじめ促進 [医療制度/行政]

中日新聞 消費税率4%引き上げ必要 社会保障国民会議が試算

社会保障国民会議医療介護福祉分科会.jpg 政府は23日、高齢化のピークを迎える2025年の医療・介護費用について、必要なサービスを確保した上で一般病床を機能分化するなどの改革を実施した場合、総費用は現状の41兆円が90兆円超の規模になるとの推計をまとめ、社会保障国民会議(座長・吉川洋東大大学院教授)のサービス保障分科会に示した。

 これを賄うためには、消費税率は4%程度引き上げることが必要だと結論づけている。また、全国健康保険協会(協会けんぽ=旧政府管掌健康保険)に加入する中小企業の従業員や家族の保険料率は月収の8・2%(労使折半)から10%程度に、介護保険料は現在の約1・8倍に引き上げなければならないとしている。

 費用が急膨張する医療・介護について、改革の方向性と費用の「上限」、消費税を含めた負担の関係などを明確化。国民不安がいたずらに大きくなることを防ぎ、改革に弾みをつけたい考えだが、その道筋を具体化する作業はこれからとなる。

 政府は▽穏やかな改革(改革案1)▽大胆な改革(同2)▽最も進んだ改革(同3)-の3段階の改革に沿って、総費用を推計。症状が重く緊急治療が必要な「急性期医療」の重点化を図るとともに、在宅医療や介護体制を強化していく方針を打ち出した。

 改革案1では、同医療の平均入院日数を現在の20・3日から12日に短縮。改革案2は欧州並みの10日、改革案3では、急性期の上にさらに「高度急性期」の病床を設けて26万床に絞る。

 改革案1から3までの25年の総費用は91兆-92兆円で、どの改革を実施してもほとんど変わらないとの結果が出た。現状の体制、サービスを維持した場合は85兆円で、改革を実施すると6兆-7兆円、うち公費は消費税で約1%分膨らむ計算だ。


吉川洋.jpgまだ医療費を節約することしか考えていないようです。入院できる日数を削り、まだ治療途中でも病院から追い出す。本来まだ手がかかる状態の患者でも家に追い返し、家族にそのケアを負担させる。

こうした考え方のもとでは、当然診療報酬を手厚く、などはとんでもなく、ひたすら削り続けるのでしょう。病院は立ち行かなくなり次々破綻する、医療者の過酷な労働条件は何ら改善されず、医療訴訟や刑事訴追が今のままであれば、ますます病院から医師は立ち去って行きます。

そしてさらにもう一つの問題が、何の疑問も差し挟まずに書かれている消費税アップです。医療や介護費用を賄うのに税が必要なのはもちろんです。しかしそれがどうして消費税なのでしょう。

そもそも税というものは富の再分配という側面をもち、収入を得たものから徴収し、それを国民全体の社会保障はじめ、行政サービスに充てるものだと思っていました。
慶應大・権丈教授が言われるように、確かに消費税アップで支出が増えてもその分社会保障として自分のところに戻って来れば国民の理解を得やすいのではないか、という考え方は成り立ちます。しかし現実には所得の増大も見込めない状況で、逆進課税システムである消費税率を上げることは、強きを助け弱気をくじく悪政と考えます。

弱者に対するセーフティネットの充実のためには富の再分配が必要です。なぜ所得税のアップが一切議論されないのか、甚だ疑問です。
何も所得税の累進性を強化せよと主張するつもりはありません。消費税導入の際に「広くうすく」と言う言葉で国民をダマしたこのセリフをそのまま所得税に当てはめれば良いのではないでしょうか。所得税の累進課税を強化せずとも、広く薄く全ての階層の所得税率をアップすることによって医療・介護等の社会保障費に充てることがなぜ検討されないのか、理解に苦しみます。

ここから私のシンプル政治・経済学です。
俺たち金持ち(政治家、大企業の偉い人など)は貧乏人の医療など面倒を見てやる気はさらさらない。自分たちでやりくりしろ。ビタ一文協力してやる気はないからな。お前らから搾取を続けることが即ち好景気、それに逆行するようなことをするつもりは毛頭ない。誰が所得税なぞ余計に払ってやるか。お前らが消費税を余計払って国家財政再建に励むんだ、ま、頑張るんだな。

学校時代から社会科科目には自信のない私ですが、これが消費税率アップの根幹にある発想だと思っています。間違っているでしょうか。
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犯罪者、厚労省 [医療制度/行政]

東京新聞 命削られる無保険者 受診二の足昨年30人死亡

 二〇〇〇年から国民健康保険料の滞納者に保険証の返還を義務付けたことにより、無保険の状態になる人が急増している。昨年は三十四万世帯と一九九九年の四倍以上に。無保険が原因で、診療を受けずに死亡した人が昨年は三十人に上ったという調査結果もある。成長過程の子どもが医療を受けられないという深刻な問題もあり、厚生労働省で実態調査を進めている。 (橋本誠)

福島生協病院_広島.jpg 二〇〇六年十二月、広島市の福島生協病院に乳房の痛みを訴える五十代後半の女性が来た。女性は重い乳がんにかかり、乳房から出血もあった。がんは肺や肝臓にまで転移、痛み止めも効かない状態だった。

 女性は次女と二人暮らし。一緒にスーパーでパートとして働き、月収は合わせて約十八万円。一年以上保険料を滞納したために、保険証更新の際「被保険者資格証明書」(資格証)が市から送られ、全額負担になった。

 女性は「治療費が払えるか心配で、病院にかかるのを我慢していた。パートなので休むと生活にかかわり、休めなかった」と病院の医療相談員にこぼした。相談員のアドバイスを受けて、「すぐに治療が必要」という理由で、短期保険証(短期証)の交付を申請。三割負担に戻った。市の減免制度も適用され、負担はゼロになったが、手遅れの状態で、約半年後に亡くなった。

 相談員は「女性は〇六年の春から胸にしこりがあり、夏から痛みが出てきたと言っていた。がんを告知しても驚いた様子もなく、覚悟の上だったのでは」と言う。全日本民主医療機関連合会(民医連)が加盟医療施設を対象に行った調査では、こうした死亡例は昨年約三十件あった。

今井町診療所.jpg 「資格証なんですけど…」。今年七月、千葉市の今井町診療所。とびひの男児(4つ)を連れた祖母が取り出したのは、保険証ではなく、「負担金10割」と大きく印刷された資格証だった。男児は二年以上無保険で、過去四回の医療費計約一万六千円は、すべて自己負担だった。

 「男児の一家は月収約二十万円でアパート暮らし。二歳の弟もいて生活は苦しいはず」と病院職員。市は本年度から乳幼児の保険証返還を中止しており、職員が区役所に同行して、男児は短期証の交付を受けた。

 「社会保障の構造改革が行きすぎ、命を削るところまできている」と全国保険医団体連合会(保団連)の滝本博史事務局次長。保団連の〇六年度の調査では、資格証患者の受診率は、保険証患者の2%に激減していた。


この問題は以前にも何回か取り上げて来ました。「医療保険保険料を払えない者は死ね」というのが厚労省の打ち出した方針です。国保保険料を滞納すると最終的には保険証を取り上げ、医療は全額自費で受けなければならない。
そもそも国保保険料を支払うことも困難である家庭が全国にたくさんある筈です。千葉市資格証.jpg厚労省が実態調査を進めている、などと書いてあります。実態調査を行うまでもなく、経済的弱者からさらに医療保険の給付を奪う措置をとれば、受診控え、ひいては手遅れ、死亡などという事態を招くのは、調査などというポーズを取って見せなくてもあまりに当たり前のことです。

医療事故やその他の事故で出て来た「業過致死傷罪」の要件を思い出しました。事故が「予見出来たこと」、事故を「回避」できたこと、それを怠ったこと。これが業過致死傷罪の成立要件になるということです。
さて、厚労省がこうして全国の自治体等に対して国保被保険者資格証を発行させ、医療保険給付を取り上げる行為が、罹患患者の受診抑制→手遅れによる死亡を招くことは、間違いなく「予見可能」です。そしてこんな方針を取らなければ犠牲者が出なかった訳で、「回避」すべきであったことは明らかです。それを回避どころか、反対意見を押し切ってごり押しし、国民に犠牲者を発生させた事実が厳然としてあります。

厚労省は業過致死罪で刑事訴追を受けるに値し、しかも過失でなく故意である可能性もあるので、未必の故意による殺人罪に該当するかも知れません。

財政のみを念頭に置いて、経済的弱者の死亡には何とも思わない、血も涙もない行政機関・厚労省はどうして裁かれないのでしょうか。

最低限のセーフティネットである医療を、決して国民から取り上げてはなりません。
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