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弘南鉄道事故-再発防止よりまず刑事訴追 [医療事故]

河北新報 駅員らを書類送検 弘南鉄道脱線事故

弘南平賀事故.jpg 青森県平川市の弘南鉄道弘南線平賀駅構内で2007年6月に起きた列車脱線事故で、黒石署は5日までに、業務上過失往来危険の疑いで、いずれも当時の駅員男性(35)=青森県大鰐町=と営業課長男性(60)=黒石市=を書類送検した。

 調べでは、駅員は07年6月12日午前8時35分ごろ、平賀駅に進入してきた黒石発弘前行き普通列車(2両編成)の進路確認を怠り、誤ってポイントを切り替えて脱線させ、列車の台車などを損壊した疑い。営業課長は駅員に必要な教育訓練をしなかった疑い。

 列車には当時、運転士1人と乗客30人が乗っていたが、けが人はいなかった。

 弘南鉄道の下山敏則総務部長は「社員の書類送検を重く受け止め、引き続き安全対策に万全を期す」と語った。


黒石警察署.jpgニュース記事を見て、またか、という思いです。ひとたび事故が起きた時に、どうしても個人の責任追及をしなければ気が済まないのは日本人の気質なのか、またそれを刑法上定めてしまったからか。

業/運過致死傷罪の他に、業務上過失往来危険などという罪が刑法で定められているのは、このニュース記事を見るまで知りませんでした。司法関連の方、詳しい方には常識だったのかも知れませんが、私は初めてこれを知り、そしてやはり違和感を覚えました。

(過失往来危険)
第129条 過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、30万円以下の罰金に処する。
2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。


業過致死傷罪の方は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」となっていますから、それよりは軽いように見えますが、業務上過失往来危険(129条2項)の方は、ひとりも死傷者がいなくても適用される罪ですから、逆に厳しいと言えるかも知れません。

いずれにせよ、かつての東武線踏切事故同様、個人を罰しても事故の再発に資することもなく、システムエラーとして事故を捉え再発防止策を講じるべきところ、不毛な送検と思います。
またニュース記事の「当時の」駅員男性・営業課長男性を書類送検、というのが気になります。既に会社として彼らを懲戒解雇してしまったりしていないでしょうか。

ミスを犯したものを単純に切り捨て、以て会社としてはみそぎが済んだ、というポーズを取ったとしたら、それは卑劣です。そうした処分が行われていないことを望みます。

事故が起きた時、日本では応報主義が再発防止に優先するように見えます。きわめて情けない社会だと思います。
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自動車と自転車の事故 [車/バイク]

東京新聞 信号無視 自転車の96歳被告 『事故を誘発』禁固求刑/茨城

水戸地裁土浦支部.jpg 取手市で昨年四月、赤信号を無視して横断中の自転車を避けようとして民家に突っ込んだトラックの運転手が死亡した事故で、重過失致死罪に問われた自転車の無職男性被告(96)=取手市=の初公判が三日、水戸地裁土浦支部であった。被告は起訴事実を認め、検察側は「赤信号を看過し無謀かつ危険な運転が事故を誘発した」として禁固二年六月を求刑した。 (塙幸雄)

 弁護側は最終弁論で「状況から見て重大な過失とはいえず過失致死罪の適用が相当」と述べ、執行猶予付きの判決を求めた。判決は三月三日の予定。

 自転車と自動車の絡んだ事故で自転車側が重過失致死の罪を問われた異例の裁判で、水戸地検は「事案の重大性にかんがみて公判請求が相当」として在宅起訴していた。

 論告で検察側は、「自転車といえども道路交通法上では車両」と指摘した上で、「交通量の多い交差点で赤信号に変わった後に進入した。重過失が認められる」と述べた。

 弁護側は「交差点の信号が誤認しやすい構造にあり、事故当時、視認状況も悪かった。運転手も危険の予見可能性はあった」と述べた。

 起訴内容では、被告は二〇〇八年四月七日午前六時ごろ、自転車に乗って取手市新町の国道6号交差点で赤信号を無視して進入、自転車を避けようとしたトラックが道路脇の民家に激突し、運転していた千葉県柏市の男性会社員=当時(53)=が死亡したとされる。

被害者遺族が初参加 新制度適用
 この日の公判には、被害者や遺族が刑事裁判に参加して被告人に質問したり、意見を述べることができる「被害者参加制度」に基づき、死亡した男性運転手=当時(53)=の妻(44)が参加した。同制度を適用した公判は水戸地裁管内で初めて。

 妻は検察官の隣に着席して険しい表情で審理に聞き入っていた。証人、被告人に質問する検察官が時折、妻に言葉をかけ、その内容を確認し合う場面も見られた。妻は直接、被告人への質問はせず、「高齢者とはいえ、被告人の罪を見逃すことはできません。場合によっては自動車の方が悪くないこともあるとわかってもらいたい」と陳述。そして「もし執行猶予であれば最も長い期間を望みます」と訴えた。同制度の初適用を受け、水戸地検の山下輝年次席検事は「裁判手続きに血が通ったのではないか。検察官は参加人と意思疎通をはかることが大前提。今回はそれができていたと思う」と述べた。

<被害者参加制度> 昨年12月1日から施行。対象事件は、同日以降に起訴されたもので、殺人、傷害致死などの重大事件のほか、交通事故の一部など。被害者が死亡した場合は配偶者、親子ら直系の親族、兄弟姉妹が参加できる。被害者や遺族は「被害者参加人」と呼ばれ、法廷内では検察官の横に座る。被告に直接質問したり、証人尋問をすることができ、検察官が求刑をした後、起訴内容の法定刑の範囲で求刑意見を述べることができる。


取手市新町交差点.JPG2月のニュース記事です。実際の判決は禁固1年4月、執行猶予3年という結果になったようです。
自動車対自転車または歩行者の事故となると、従前過失相殺などはどこへやら、一方的に自動車側が悪いという風潮があったように思えます。私の記憶では、歩行者が赤信号無視、自動車が青信号で通過しようとした時に起きた事故でも、過失配分は自動車対歩行者で50:50と言う判例がありました。

こうした、何でも自動車のドライバー側に責任を負わせようという風潮から脱却するという意味では有意義な裁判であると思います。もしトラックが自転車と衝突して、自転車ライダーの方が死傷していたら、全く今までと変わらぬ、一方的にトラックドライバーを糾弾する裁判が行われていたことでしょう。

しかし例によって結果責任を重視する考え方で、この事故の自転車ライダーに少しでも重い刑事罰を与えようということにエネルギーを惜しまない検察にはため息が出ます。被害者参加制度を十二分に活用して、実刑は取れないものの、せめて執行猶予を最大限にしようなどと、被害者遺族を利用しています。

そもそも道交法において、自転車の信号無視は第7条により「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金」となっています。重過失致死罪を持ち出してそれを超える刑事罰を与えることにどれほどの意味があるのでしょうか。
それよりも民事でトラックドライバーに対して自転車ライダーからきちんと賠償をさせることに意味があるでしょう。おそらく保険などのない自転車のこと、支払い能力なしということになってしまうでしょうから、国家などによる救済制度があってしかるべきであろうと思います。

この裁判でも被害者参加制度は、検察側の求刑を少しでも重いものにするように利用されているだけに思えてなりません。この浪花節制度、私はどうしても賛成できません。
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交通事故の責任と道路構造 [車/バイク]

東京新聞 溝口陸橋下り車線で事故多発 渋滞情報で追突防げ/神奈川

溝口陸橋1.jpg 国道246号の溝口陸橋と呼ばれる高津区の高架橋に、わずか三百メートル先の渋滞を伝えるシステムが導入される。山なりの陸橋の下り坂で事故が多発しているため、高津署などが開発した。短い区間の「渋滞情報」は珍しく、県内では初めての試み。四月からの運用を目指し、二月中にセンサーや電光掲示板などが設置される。 (酒井博章)

 東京から国道246号を進み、多摩川を越えると間もなく溝口陸橋に差しかかる。この下り車線が高津区内有数の事故多発ポイントだ。二〇〇七年十二月には、大型トラックに追突した軽トラックの運転手が死亡する事故もあり、この年には四十三件の人身事故が発生。昨年も、七月に車両五台による玉突き事故が起こるなど、事故が頻発した。

 その七割以上が渋滞が原因の追突事故という。陸橋の傾斜角度は約五度で見通しが悪く、頂上から下りに転じてすぐに追突する車両が後をたたない。陸橋を下ってすぐ「切通し交差点」があり、信号待ち渋滞が起こりやすいのに上り坂からは気づきにくいためだ。交差点には国道の両脇にある側道も合流するため、さらに渋滞を加速している。

 同署は昨年三月に国土交通省横浜国道事務所と協力し、陸橋の渋滞情報を知らせるシステムの開発に着手。

溝口陸橋2.JPG 「切通し交差点」から手前約五十メートルの中央分離帯にセンサーを設置し、さらに三百メートル後方の陸橋の上り坂付近に電光掲示板を設け、渋滞時に「渋滞注意」「追突注意」などと表示して注意を促すことにした。恒常的な看板より、最新の情報を反映した電光掲示板が注意喚起に効果があるためという。

 高速道路などで活用されている渋滞情報システムは二-五キロ先の情報を伝えるが、今回考案されたのは、全長約五百メートルの陸橋で、終点の渋滞を頂上付近に知らせる“陸橋限定”の異例の情報システム。二月上旬から設置工事を始める予定で、同署などでは「陸橋での事故が半減するのでは」と期待している。


この陸橋を利用したことがあるのでわかります。勾配がきついので、オーバーパスの頂上の先が見通せるところで、突然自分の前に、停車している車列の最後尾が現れることがあります。追突事故の温床になる可能性は高いと思われます。

溝口陸橋3.JPGさてここで考えてしまいます。こうしてこの溝の口陸橋には電光掲示板が設置されることになりました。これで事故が減ることを期待できると思われます。
逆に考えると、今まで事故が起きていた責任の一端は道路構造にある訳で、警察もこれを認めた形になります。

追突事故を起こした車が、被追突車両に民事上賠償を行います。多くの場合対人・対物保険から支払うことになります。しかし事故が人身事故となった場合、行政処分や刑事訴追が待っています。
これまでここの陸橋でこうした処分を受けて来たドライバーの立場はどうなるのでしょうか。事故の全ての責任を追わされ、厳しい刑事処分を受け、免停~免消処分を受けて来たかも知れません。しかし警察が後から道路構造について欠陥を認めた形になった訳です。

この陸橋に限りません。全ての交通事故において、責任を全てドライバーに負わせることは正しくないと考えます。
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被害者参加制度廃止を [生活/くらし]

asahi.com 遺族「償いの意味は」 被害者参加裁判

札幌被害者参加男.jpg■被害者参加裁判 道内初
■乗船者死亡 誠意感じず実刑望む

 犯罪被害者や遺族が法廷で被告人に質問などができる「刑事裁判への被害者参加制度」が30日、道内で初めて札幌地裁(石井伸興裁判官)で実現した。プレジャーボートに乗った3人が死傷した事件で、当時27歳だった息子を失った父親(59)と兄が出廷。父親は「一生償うと言った言葉の意味を知りたい」と被告に尋ね、検察官の禁固2年の求刑について「実刑を望みます」と意見を述べた。

   ◇

 遺族が参加したのは、神奈川県平塚市の相模川河口付近で07年4月、波の状況を確認せずにプレジャーボートを出して運転し、知人1人を死亡、2人にけがをさせたとして業務上過失致死傷の罪に問われた男性(42)=札幌市=の初公判。

 法廷で、父親と兄は検察官の横に座り、「間違いありません」と起訴事実を認める被告人を真っすぐ見つめた。検察官と弁護人が被告に質問した後、父親が「今までと重複するところもありますが、親として質問させて頂きます」と切り出した。

 「一生償うと言いながら、何の連絡もない。どう償うつもりなんですか」「葬儀費用500万円を払うと約束したが、どう弁済して下さるのですか」と、落ち着いた声で被告人に問いかけた。

 被告は、左側に座った父親の方を時折向きながら、「家族の方に満足してもらえるよう償っていこうと、本当に思っている」「今は無職だが裁判が終わってから働く予定です」と答えた。2人のやりとりは約7分だった。

 公判は即日結審した。検察官は「現場は事故が多発する場所でありながら、海釣りがしたいとの思いで、海の様子を確認しないまま出航したのは身勝手だ」と指摘し、被告に禁固2年を求刑した。

 続いて、証言台に立った父親は量刑について、「償うという被告の言葉はその場限り。態度に誠意が感じられない。言葉の持つ重みを真剣に考えてもらうため、刑務所で反省することを望みます」と述べた。

 札幌地検によると、今回の事故は神奈川県で起き、父親も同県に住むが、被告が札幌に住んでいるため、札幌地裁で公判が開かれた。判決は2月10日に言い渡される予定。

   ◇

■「質問機会に感謝」 遠方裁判で不便も

 父親は公判後に札幌市で記者会見し、「被告に直接質問する機会を設けて頂いたことは非常にありがたかった」と被害者が裁判に参加した意義を語った。被告は事件後に引っ越して連絡がとれない状態が続いていたといい、父親は「私個人の力では被告の居場所を見つけ、事件のことを質問することはできなかった」と話した。

 父親はこの日午前5時10分に起きて飛行機で札幌まで来た。「神奈川で起きた事故なのに、こうして裁判所に来るのは大変だった。検察官との打ち合わせも、遠方だと不便だった」との感想も述べた。

 札幌地検の米村俊郎次席検事は公判後、「参加した父親と兄の2人は、気持ちを裁判所に伝えることができたのではないか。今後も被害参加人と意思疎通をはかり、制度の趣旨に従って、その権利を行使できるよう努力したい」と話した。

 一方、傍聴した刑事弁護センター運営委員会副委員長の見野彰信弁護士は「一般論でいえば、法廷が被害者の応報感情に支配される心配がある。制度は慎重に運用すべきだ」と話し、今後、制度を検証していく考えを示した。

   ◇

《被害者参加制度》 殺人をはじめ「故意の犯罪行為で人を死傷させた事件」などの刑事裁判に、被害者や遺族らが参加する制度。08年12月以降に起訴された事件で始まった。これまで被害者は証人として尋問を受けたり、心情などを意見陳述する際に出廷することがあったが、今後は検察官の横に座り、被告に質問したり、量刑について意見を述べることなどができる。


札幌地裁.jpg1月の記事です。朝日新聞の記事は他紙よりまともに感じます。被害者参加制度に対して無批判な記事が多く、さらに検察・被害者側と一緒になって被告を攻撃するに至っては読むに耐えません。

被害者参加制度発足後のこうした記事を読むにつけ、最初から予想されたことではありますが、こういう裁判の展開になるのは目に見えています。遺族がストレートに被告人憎さの発言をぶつけたのでは様にならないので、「(償いという)言葉の持つ重みを真剣に考えてもらうため、刑務所で反省することを望みます」などという作文が出来ています。きっと検事との打ち合わせで作成されたものなのでしょう。

体裁を整えた発言の下には応報感情が燃えているのは明らかです。過失とは言え自分の家族を死傷させた者は絶対に許さない、そういう感情をくるんでいます。

検察と利害の一致した被害者・遺族の発言が裁判を狂わせることを懸念しています。
故意犯に対する裁判で始まったはずの制度が、こうした過失を裁く裁判に導入されていることにも疑問があります。過失はあくまでも民事で「償う」べき問題であり、刑事罰を科すのであれば、その過失の重さのみが問題にされるべきである、ということを繰り返し主張して来ました。

このニュース記事の事件では、子供を亡くした父親の心情は理解できるものの、検察がそれを利用して被告人の量刑を重くしようとしているのがこの上なく不愉快です。

繰り返し書きます。被害者参加制度は早々に廃止して欲しいと思います。
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救急車とカーナビ [医療制度/行政]

読売新聞 カーナビ頼り救急車、高速出口間違え到着遅れ…患者は死亡

救急車.jpg 東京消防庁は29日、今月19日に急病の女性を搬送した救急車が、カーナビの指示に従って首都高を運転した結果、出口を間違え、病院到着が17分遅れたと発表した。

 女性は病院で死亡が確認されたが、救急医らで作る検証委員会は「到着遅れが死亡につながった可能性は低い」としている。

 発表によると、19日早朝、119番で東京都北区の女性を中央区内の病院に搬送することになったが、運転手が病院の場所を知らず、カーナビに目的地を入力して出発。案内通り首都高を走ったが、病院の手前の出口で降りる指示がなく、首都高の脇にある病院近くの首都高上で案内が終了したという。同庁によると、このカーナビ付き救急車は2004年の導入。同庁は「事前に病院の場所を確認すべきだった。今後は指導を徹底したい」としている。


私の見ているカーナビは古いせいもあるのか、あるいはどのカーナビにも限界があるのか、時々首を傾げるような道案内をすることがあります。
また、案内自体は間違っていなくても、○○メートル先、左方向です、などと言われた時の距離感が難しかったり、○○メートル先までの別の交差点を左折してしまったりすることもあります。

カーナビ.jpg救急車の運転も大変と思います。特に病院所在地もさることながら、要請のあった地点に正しく到達するのは、なかなか至難の業ではないかと想像します。
地元のタクシードライバーの方でも大変なところもあろうと思われ、また住居表示がきちんとしていない地域では郵便配達同様、どうやって当該地点に到達するのだろうと、逆に感心してしまいます。

確かに要請地点から収容病院までは最短時間での到着が望ましいのですが、最短時間でなかったことをことさらに非難したりしたら、それはあまりに酷に過ぎるようにも思っています。

それよりも、必要ならカーナビシステムの改善、住居表示の見直しなども検討されるべきではないかと考えます。
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まだまだ続くバカの一つ覚え [車/バイク]

読売新聞 「酒気帯び」でも一発取り消し…道交法改正案を閣議決定

酒気帯び厳罰化.JPG
 政府は27日、飲酒運転など悪質運転への行政処分を厳格化することを柱とした道路交通法施行令の改正案を閣議決定した。今年6月1日から施行される。

 酒気帯び運転のうち、呼気1リットル中のアルコール濃度が0・25ミリ・グラム以上の場合、違反点数が13点から25点に引き上げられ、過去に違反歴がなくても一発で免許取り消しになる。同0・15ミリ・グラム以上0・25ミリ・グラム未満の場合は6点から13点に引き上げ、免許停止期間が現行の30日から90日に。飲酒によって正常な運転ができない「酒酔い運転」も25点から35点に引き上げられる。

 悪質な事故などで免許取り消しになった後、運転免許証の再取得が禁じられる欠格期間の上限も5年から10年に延長され、危険運転致死罪は8年、同致傷罪は被害者の負傷程度に応じて最長で7年になる。酒酔い運転による事故も、2~5年から3~7年に引き上げる。いずれもひき逃げが加われば最長の10年になる。


麻生太郎.jpg1月、麻生政権下でのニュース記事です。
同じような記事を繰り返し書くのは気が引けるのですが、相も変わらぬバカの一つ覚え=厳罰化が止まらないようなので、私も反論を重ねたいと思います。

飲酒運転撲滅を掲げて、危険運転致死傷罪の創設や、飲酒運転に対する厳罰化ばかりが行われています。時々各新聞が取り上げることもあるのですが、つい飲酒してハンドルを握ってしまう人たちにアルコール依存症がかなり多いことが指摘されています。また、酒気を検知してエンジンを始動させない装置は既に存在します。

飲酒検問.jpgしかし、こうした事実は一切勘案しないようです。特にこの政権の長であるこの首相は。
これらを考え合わせれば、本当の飲酒運転撲滅はどうするべきか、は自ずと答えが出てくるはずです。

以前にコメントを頂戴したことがあるのですが、車のスピードリミッター、シートベルト非装着アラームなどは、ドライバーにとっては負の装備です。しかし安全運転のために車に取り付けられていると考えるべきでしょう。

いったいいつになったら酒気検知・エンジン不始動装置を検討するのでしょうか。引き起こされる事故の重大さを想定したら、シートベルトなどよりもっと先に全車に装着すべきものでしょう。

飲酒運転防止装置.jpg一向にこの発想が取り入れられず、ドライバーだけを取り締まることしか考えていないのは、自動車メーカーに対する忖度、あるいはメーカーからの圧力、そして行政処分のみならず、罰金刑などの刑事罰も引き上げて、国庫への集金を増やそうとする意志が働いているのではないかと考えてしまいます。

本気で飲酒運転を「撲滅」しようという気があるとはとても思えません。
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新型インフルエンザ騒動~どちらが「悪質」だ [医療制度/行政]

共同通信 発熱の診察拒否、全国調査へ 厚労省、悪質なら指導も

新型インフルエンザウィルス.jpg 新型インフルエンザ発生国への渡航歴がないなど感染の恐れが少ないにもかかわらず、発熱などの症状で病院を訪れた人が診察を断られるケースが相次ぎ、厚生労働省は5日「単なる診察拒否なら重大な問題だ」として、全国の実態把握に乗り出すことを決めた。

 東京都はこれまでに92件を確認。厚労省は、悪質なケースで医療機関名が把握できれば、都道府県を通じた個別指導などを検討する方針。

 厚労省結核感染症課は「『感染の疑いがあれば発熱外来に誘導する』という国内発生後の対応を前倒ししているのか確認が必要」とする一方「現段階でのこうした対応は常識的に考えられない」と不快感を示している。

 東京都では、発熱相談センターに相談の電話が寄せられたことで判明。同様の例は今月2日から5日正午までで92件に上り大学病院が診察を断ったケースもあった。

 診察を拒否されたりセンターに相談するよう言われたりした人が大半だが、「成田空港に勤務」「友人が外国人」と話した途端、診察を拒まれた人も。センターの電話相談で一般病院に行くよう勧められたのに、実際に行くと、そこで拒否された例もあった。


厚労省結核感染症課.jpg厚労省の居丈高な姿勢に疑問を持ちます。
新型インフルエンザについては、情報が錯綜し、一定の情報は流れているものの、医療現場が慎重になるのは当然のことと思います。

かつてSARSが発生し恐れられていた時、一般の医療機関では、医師会等の配布したポスターを医療機関の外に掲示し、SARSを思わせる症状を持つ患者さんが医療機関に立ち入らないよう案内しました。これは、もしSARSの患者さんが院内に立ち入った時には、その後医師やスタッフ、そして待合室にいた他の患者さんも全て一定期間隔離されなければならなくなり、医療機関自体がストップしてしまうからでした。

今回はウィルス自体は弱毒とされており、また抗ウィルス剤も奏功するとされ、また海外からの流入は水際で防いでいるということになっているので、一般医療機関ではよほどの疑い症例でない限り診察せよ、ということのようですね。

それはそれで良いのですが、そうした的確な情報をきちんと医療機関に伝達し、ガイドラインを作成するなど、そちらが大切でしょう。それをなおざりにして、診察を拒否した医療機関に対して「不快感」を示したり、「悪質」な医療機関を個別指導するなどと言い出すのを見ると、それこそ厚労省に対して「不快感」を覚えます。きちんとした情報提供を行わない同省の方が「悪質」です。
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業過致死傷罪、再び [医療制度/行政]

読売新聞 ニアミスで管制官有罪の高裁判決、柳田邦男さんら見直し要請

柳田邦男.jpg 静岡県焼津市上空で2001年、日本航空機同士が異常接近(ニアミス)した事故で、業務上過失傷害罪に問われた管制官2人が東京高裁で有罪判決を受けた裁判(上告中)について、ノンフィクション作家の柳田邦男さんら5人が27日、高裁判決の見直しを求める要請書を最高裁に提出した。

 昨年4月の東京高裁判決は1審の無罪判決を破棄し、執行猶予付きの有罪とした。2人はこれを不服として最高裁に上告している。

 柳田さんらは、ニアミス事故について、複合的な要因によって起きる「組織事故」であり、個人の責任追及は再発防止につながらないと指摘。

 高裁判決について「航空界のみならず広く産業界などの安全への取り組みをゆがめる恐れがある」として、見直しを求めた。


私が一番繰り返し取り上げて来た問題と言えるかも知れません。柳田邦男氏らの訴える通り、個人の責任を追及することに汲々としている現行法では、真の事故再発防止は実現できません。
医療事故を一番取り上げて来ましたが、航空機、その他交通システム、そして全ての危険を伴う業務において、事故を未然に防ぐためには、ヒューマンエラーの入り込む余地を少しでもなくすこと。エラーが発生した時はシステム全体から検討、再発防止に資することが一番重要であることは間違いないでしょう。

ニアミス.jpgしかし現行法の業過致死傷罪は、個人に注意深く業務を執行させるために存在するのだ、と教わると、弁護士の先生からも聞きました。要するに「ミスをしたらお前は罰せられる、職も失うかも知れない」という脅し・圧力をいつも感じながら仕事をすることになります。果たして人間はこれでミスを根絶できるのでしょうか。
かなり前に書きました。細くて長い平均台を渡りきるために、片方は落下してもケガをしないようにマットレスを下に敷き詰めておく。もう片方は剣山よろしく刃を上に向けてぎっしり並べておく。後者で平均台通過成功率が上がったというエビデンスがあるのならわかります。

繰り返し書いて来た業過致死傷罪廃止、書くたびたいてい反論を頂戴して来ました。単純に廃止するのではなく、被害者の立場からのみ作られていると思われるこの法をもう一度考え直しても良いのではないかと思っています。
即ち、何人の人が死亡・受傷したか、その程度はどのようなものか。現行法ではこれが業過致死傷罪被告人の量刑を一番左右しています。そうではなく、被害者は民事やその他の救済で対応し、刑事罰を与えるというのなら、どのような安全義務違反を為したか、を刑事罰の根拠とすべきだと思うのです。

管制官.jpg結果のみに目をとらわれて過失を為した者を厳罰に陥れても誰も幸福になりません。せいぜい被害者・遺族の一時の応報感情を満たしてみせる程度です。

そして真の事故再発防止に対して個人の責任追及は何ら役に立たないばかりか、当然の権利である保身のために当事者(「容疑者」、「被告人」)が口をつぐむことによって、原因解明は阻止されます。これで良いのでしょうか。

最高裁判事達の賢察に期待してみたいと思います。
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医療事故?警察の暴走 [医療事故]

共同通信 眼科医を書類送検 福井・敦賀の男性死亡

敦賀市立敦賀病院.jpg 福井県警は23日までに、2004年に同県敦賀市の市立敦賀病院に搬送された男性患者に適切な治療をせず、この患者が死亡したとして、業務上過失致死容疑で病院の当直だった眼科の男性医師(35)を書類送検した。

 調べでは04年6月5日、敦賀市内の暴行事件で負傷した無職石橋勉(いしばし・つとむ)さん=当時(61)=が病院に運ばれた際、骨折した肋骨(ろっこつ)が肺に突き刺さっていたにもかかわらず、男性医師は、エックス線撮影で確認できず、適切な治療をしなかった疑い。石橋さんは2日後に肺挫傷で死亡した。

 敦賀病院によると、医師は04年4月から05年6月まで眼科医として勤務。現在は金沢市内の病院に移ったという。


信じがたいニュース記事です。
そもそもなぜ眼科医が胸部の外傷を診る羽目になったのかよくわかりません。ただ、都内の病院でもあるのですが、第二外科とか混合系などという当直系列を作り、その中に眼科・耳鼻科・皮膚科・形成外科・泌尿器科・放射線科などのいわゆるマイナー科が参加していることがあります。
肋骨骨折.jpg原則として自分の科の領域の救急患者を診るのですが、とりあえず診てくれ、ということで専門外の患者を診ることになるケースもない訳ではないのかも知れません。

そして眼科医が胸部X線上の肋骨骨折を診断できず、その後患者が不幸な転帰をたどってしまったと言うことです。結果責任を問うのであれば、誤診による業過致死罪の容疑ということになるのでしょう。
しかし警察には常識というものがないのでしょうか。おそらく専門外でも可能な限り、担ぎ込まれた急患に対応してやろうと考えた眼科医を書類送検、です。福島県立大野病院事件以後、こうした警察の態度がいかに医療崩壊を促進して来たか、未だに反省がないようです。

まさかとは思いますが、検察がこの眼科医を起訴するような愚行に走らぬことを祈るばかりです。
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超法規的増刑 [生活/くらし]

asahi.com 受刑者に定額給付金、自治体に戸惑い 総務相も検討明言

鳩山邦夫.jpg 死刑囚や無期懲役の受刑者にも定額給付金を支給するのか――。こんな議論が、国会や総務省などで続いている。拘置所や刑務所がある自治体では、国民感情を気にして戸惑う担当者もおり、早く基準をつくるよう国に求める声が上がっている。

 「私も、はたと考え込んでいる部分がなくはない」。13日の衆院総務委員会で、鳩山総務相が悩ましげに答えた。定額給付金について、田嶋要議員(民主党)から「不法滞在者は受け取れず、日本人の受刑者が受け取れるという理由は」と問われた時だった。

 法相でもあった鳩山氏は「無期、死刑に若干ひっかかりを持つ。刑法犯で入所している人に対してどうかなという点は、少し検討させようと思う」と、死刑囚と無期懲役の受刑者への給付に慎重な姿勢も見せた。

 定額給付金は、住民基本台帳か外国人登録原票に記された人が支給対象だ。成人の場合、1人につき65歳未満が1万2千円、65歳以上が2万円を支給される。

 総務省によると、受刑者がどこに住民登録するかを特に定めた法令はないが、原則として収容先から出られない死刑や無期懲役の場合、拘置所や刑務所に住民票を置くのが基本的な考え方だという。

 法務省によると、死刑囚は全国7カ所の拘置所、無期懲役になると15カ所の刑務所に収容される。死刑囚は4日現在で99人、無期懲役受刑者は07年末現在で1670人いる。年金などの蓄えがあっても、施設内で買えるのは、洗面用具や文房具といった日用品などに限られる。代理人を通じ、被害者に弁済することは可能だ。

 「世論や国民感情を考えれば、死刑が確定した凶悪犯にも支給するというのは……」

 東京都葛飾区役所では、内部でこんな議論を繰り返してきた。区内には、オウム真理教元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚らが収容された東京拘置所がある。

 「支給すべきではない」という声がある一方、「葛飾区だけが支給しないと決めてしまったら、全国の受刑者の間で不公平が生じる」という悩みも。担当者は「自治体の判断にはなじまない問題だ」として、今月中旬、都に対して「取り扱いの基準を示すよう総務省に上申してほしい」と申し入れた。

 死刑囚でも、再審請求をしている場合は「冤罪」が認められる可能性もあり、線引きは難しそうだ。(向井貴之)

     ◇

諸澤英道.jpg 日本被害者学会理事を務める諸澤英道・常磐大大学院教授(刑事政策学)の話 定額給付金の目的が生活支援と景気刺激ならば、施設での生活が保障される代わりにお金を使うのが困難な死刑囚らに給付する意味は、ほとんどない。高額所得者には支給しないという議論があったように、法律で給付対象者を区別したとしても、憲法違反にはならないはず。被害者感情を無視して給付すれば、ばらまきだと批判されてもやむを得ない。


1月のニュース記事です。
つくづく日本人の国民性はリンチなのだろうと思います。どうして大多数の自分たちと異なる立場にある人たちを下に蹴落とし、非難を続けることを、国民挙げて行うのでしょうか。

このニュース記事の時点では定額給付金の額も支給対象もまだ確定していませんでした。高額所得者が受け取るべきか否かという議論ならわかりますが、受刑者に渡すなというこうした「声」には猛烈に反発します。

死刑でも無期懲役でも、受刑者は確定したペナルティを受け入れ、刑に服しあるいは執行を待っています。そこへ、なぜ「定額給付金を渡さない」というもう一つの「罰金刑」を追加されることに甘んじなければならないのでしょう。

松本千津雄.jpgここでも出てくるのが曖昧な言葉「国民感情」というものです。アンケートでも実施したのでしょうか、国民投票でもやったのでしょうか。
小学生が親に「○○を買ってよ、『みんな』持ってるんだよ~」と訴えるのと、何ら変わらないと思います。

死刑囚でも無期懲役囚でも、本人が使えない金であるのならば、死後法定相続人が受け取るべきものです。民事未解決であれば、負債・賠償額などに充当されるべきものです。なぜそれを奪うことばかりを考え、誰も異を唱えないのでしょうか。

こういう記事を読むと日本人の国民性の貧しさを感じずにはいられません。また、自分と違う者たちとの間に線を引いて差別しようというこの発想は、かつての(だと良いのですが)穢多・非人を作り出してきた歴史と通じるものを感じます。
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